そろそろ本格的な雪のシーズンに入っていきそう。スキーにスノーボード、雪を見ながらの温泉など、楽しみな冬のレジャーは数多くあるが、心配なのは雪道でのクルマの運転。
坂道が登れない、雪だまりに突っ込んで出られないなど、スタックや立ち往生が増える雪道で、脱出を助けてくれる魔法のボタンがあるのだ。レッカーを呼ぶのもいいが、まずは自力で脱出するのが先決。そのための覚えておきたいワザを紹介しよう。
文:佐々木 亘/画像:Adobestock(トップ写真=Fototocam@Adobestock)
安全装備と雪は相性が悪い
ここ10年の間に販売されたクルマの大半には、あらゆる電子制御が搭載されている。アンチロックブレーキシステム(ABS)やタイヤの空転を防止するトラクションコントロール(TCS・TRC等)、横滑り防止機能(VSC等)が主なものだ。
ここに、先進安全装備(衝突被害軽減ブレーキなど)が加わって、これらの電子制御は統合制御されている。
今のクルマは、ラフにアクセル・ブレーキペダルを踏んでも、タイヤは空転しにくいしロックもしない。電子制御により、タイヤがグリップする場所をみつけながら回転を続けるのだ。だから、緊急回避でステアリングを急激に切り込んでもクルマが簡単にスピンすることは無い。
普段の運転では、電子制御の恩恵にあずかれるよう、全ての機能が作動している状態で走行することが望ましいと筆者も思う。
しかし、ぬかるみやアイスバーン・積雪路など、滑りやすい路面での動き出しでは、優秀な電子制御がクルマの脱出を妨げる可能性がある。こうした時に知っておきたいのが、電子制御を意図的に止める方法だ。
トラコンが脱出の邪魔をしていることも
多くのクルマに搭載されているトラクションコントロールは、アクセルONでタイヤが空転すると、空転を抑えるためにエンジン出力を絞り、車体を安定させる機能だ。乾燥路面やウェット路面では、知らぬ間に機能に助けられていることもあるだろう。
しかし、このトラクションコントロールが、特に滑りやすい雪の路面での発進時に悪さをすることがある。タイヤが勢いよく回転してくれないため、雪道やぬかるんだ路面で軽くスタックしたときに、アクセルを踏んで脱出しようにも、出られなくなることが多いのだ。
トラクションコントロールが効いていると、スタックした際に、思い切りアクセルを踏み込んで、タイヤを空転させながらも脱出したいと考えていても、タイヤが空転した瞬間にエンジン出力が絞られ、脱出できるほどの空回りが起きない。この時、トラクションコントロールOFFスイッチが役に立つ。
一度押しと長押しを覚えて雪から脱出せよ
車内のどこかに、「TRC OFF」と書かれたスイッチや、クルマのイラストの下に波線が2本程度書かれているスイッチがある。シフト近辺やインパネ付近にあると思うので、スイッチの在り処は冬になる前に探しておこう。
雪道やぬかるんだ道でクルマが動けなくなったら、まずはこれらのスイッチを押し、トラクションコントロールを切ってほしい。
そしてスイッチを一度押しする。メーター内でトラクションコントロールOFFを確認した上で、再びアクセルをゆっくり踏み足していき、タイヤを空転させながらもスタックから脱出できそうならこれでOK。
しかし、これでも脱出できない場合は、ブレーキを踏んだ状態でトラクションコントロールOFFスイッチを長押ししよう。
すると、メーター内に黄色くクルマのイラストが点ると思う(車種によって表示方法は変わります)。1度押しよりも長押しの方が電子制御のカット率が高くなるので、これで脱出できることもある。
普段は押すことのないトラクションコントロールスイッチだが、その機能を知っておけば、いざというとき役に立つ。スノーレジャーを楽しむドライバーには、ぜひ覚えておいて欲しい。




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