仕事、災害……。苦しい時にくじけない心をつくるたった一つの心がけ

仕事、災害……。苦しい時にくじけない心をつくるたった一つの心がけ

 近年、災害訓練や職場の人材育成などで、「自衛隊式」が注目を集めている。人によっては、自衛隊というと根性とか、猛烈なシゴキをイメージするかもしれないが、実際は違う。なぜなら、生死をわけるかもしれないギリギリの場面において、根性や勢いなどに頼るのは、非常に危険きわまりないからだ。

 自衛隊では、あらゆる危険な場面を想定し、日々トレーニングを積んでいる。ときに自身の限界に挑戦するような厳しい訓練もあるが、それは極限の場面でも正しく力を発揮するためのものだ。

 本稿では、自衛隊で蓄積されてきた様々なノウハウを、日常生活でも応用できるよう紹介する。指南するのは、元陸上自衛隊幹部の二見龍氏。災害対応のエキスパートでもあり、近著『自衛隊式セルフコントロール』では、日常生活から災害対応まで幅広く役立つ自衛隊のノウハウを公開している。

『自衛隊式セルフコントロール』はこちら

文/二見 龍(ふたみ りゅう) 写真/AdobeStock@Josiah.S 


■心の許容量をアップさせよう

 仕事や人生がうまく行かない、あるいは頑張っているのに成果がなかなか出ないという状況が続くと、心が折れ、へなへなと座り込みたくなるものです。

 また長引くコロナ禍で、自粛生活や日々のさまざまな制約にうんざりしている人も多いことでしょう。こうしたストレスが元で、SNSなどで他者を攻撃したり、あるいは電車や店舗などで客同士がトラブルを起こしたりというような話を聞きます。

 人には心が穏やかでいられる状態を保てる限界があり、許容量は人それぞれに違います。限界を超えると、心がいっぱいになってしまい、踏ん張れなくなります。誰もが、もっと強い心が欲しいと願う時があると思います。

 ここで紹介するのは、私が自衛官時代に実践していた、心を立ち直らせ、強くする方法です。簡単にいうと、心の限界値をアップさせる方法です。やり方は簡単です。道具や準備は必要ありません。個人差はありますが、1カ月ほどで効果が出てくるでしょう。

 まず、自分の心の限界値を10~15%ほど、いつもより大きく広げた状態で日々の行動を始めます。困難なことがあったとき、あるいは理不尽を感じたときも、いつもよりちょっとだけがんばったり、耐えたりするのです。すると少しずつ心の許容量が広がり、意識的に広げた10~15%増しの許容量が標準状態になってきます。以前なら苦しくなってしまうところが、普通の感じで受け入れることができるようになるということです。

 心を10~15%増しの許容量にするためには、いつもならば苦しくなってしまう状態の時でも、笑顔を作って「まだ余力がある」というように自分に言い聞かせ、心が大きい人間のように振る舞うことです。

 例えば、業務が忙しく疲れが溜まってくると、普通ならば不機嫌になってしまうところを、さわやかな笑顔と声で挨拶をしたり、ニコッと笑みを浮かべ、明るい声で前向きな話をしたり、といったイメージです。

■人間の特技は慣れ。実感がやる気につながる

 もちろん、簡単にできれば苦労しません。おそらく、2日以上続けていると苦しくて仕方がない状態になってくるはずです。無理やり明るく振る舞っていると、普段の倍以上に心に疲労が溜まり打撃を受けるからです。3日目を過ぎると、明るい心と表情を作るのがきつくなり、このままではもたないかもしれないという不安と弱い心が出てきます。顔は笑顔ですが、心はヒーヒー状態でいつ我慢ができなくなるかわからない状態となります。

 しかし、人間には慣れるという特技があります。つまり、ここで諦めず、1カ月ほど頑張って続けていると、いつの間にかラクになっていくのです。

 当初の10日間が頑張り時でしょう。心の中でヒーヒー言いながら、1週間続けても少しもラクにならず、その苦しさは10日目ぐらいまで加速していくからです。頑張って継続することを考え、耐えていると、2週間を過ぎるあたりから、苦しかった状態が少しずつ和らいできます。

 そして、1カ月を過ぎるあたりには、普通にできるようになります(当然個人差がありますが)。筋トレによって身体ができてくるのと似ているような感じです。

 成長を実感できれば、きっと楽しくなるはずです。ぜひ挑戦してみてください。


二見 龍(ふたみ りゅう)
1957(昭和32)年東京生まれ。防衛大学校卒業。陸上自衛隊第8師団司令部3部長、第40普通科連隊長、中央即応集団司令部幕僚長、東部方面混成団長などを歴任し陸将補で退官。防災士として自治体、一般企業で危機管理を行う。著書に『自衛隊式セルフコントロール』、『自衛隊最強の部隊へ』シリーズ、『弾丸が変える現代の戦い方』、『自衛隊は市街戦を戦えるか』、『特殊部隊 vs. 精鋭部隊』などがある。近著の『自衛隊式セルフコントロール』はすぐに実践できる自衛隊のノウハウが満載

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