ダカールラリー2022も13日目。明日のジェッダが最終ゴールとなるが、この日のステージ11で日野チームスガワラは重大な危機に陥った。オートマチックトランスミッションに不具合が発生。
低速でしか走れないため、チェックポイントなどをパスして直接SSのゴールに向かったのだ。これで大幅なペナルティが課せられ、累積順位もダウンする可能性が強い。
文/フルロード編集部・日野自動車・多賀まりお 写真/日野自動車・ASO
【画像ギャラリー】ATの不具合で競技中にストップ。満身創痍のHINO600シリーズに明日はあるか!?(10枚)画像ギャラリー一難去ってまた一難 今度はATに不具合発生
12日の競技中に電気系の不具合に見舞われた日野チームスガワラのHINO600シリーズは、メカニックによってトラブルを修復され、13日、ステージ11の競技に臨んだ。
この日はビーシャを基点とするループコースで345.64kmのSS(競技区間)が行なわれたが、HINO600シリーズはSSスタートから30km地点でオートマチックトランスミッションの不具合によりストップ。
その後なんとか低速で移動できる状態になったため、ループをショートカットしてSSのゴールに直接向かい、ビーシャのビバークに帰着した。
明日は競技に復帰し最終ゴールを目指す
ビバークでは待ち受けていたメカニックたちが早速トランスミッションの交換作業を開始。
この日は競技スタートを切ったものの全てのチェックポイントとウェイポイント(コース上で通過を義務付けられているGPSポイント)をパスしてゴールしたため、大量のペナルティタイムが課される見通しだ。
これにより累積順位の後退が予想されるが、日野チームは初めてハイブリッドシステムを搭載したラリートラックの走行データを可能な限り収集するべく、明日14日の競技に参加してジェッダのゴールを目指す。
ダカール2022の最終日となる14日にはビーシャ~ジェッダ間で164kmのSSが予定されている。
日野チームのメンバーのコメント
菅原照仁
SSを10~20km走ったところでシフトダウンをしようとすると2段いっぺんに落ちるようになり、その後トルクが伝わらなくなってストップ。どうしようもなくSSのショートカットを決めました。
前日のトラブルで遅れた時間をなんとか挽回したいと思っていたのですが、今回はむずかしそう。しっかり走ってジェッダのゴールを目指します。
染宮弘和
止まった場所が一般道に近かったので上手くショートカットできました。今日は排気管でお尻が熱くなる前に終わってしまい、残念です。
望月裕司
ほとんど前兆がないまま突然動けなくなるトラブルが発生しました。がっくりしたいっぽうで、明日は絶対完走させてやるという気持ちになりました。
【従軍記者・多賀まりおの「ダカール2022」短信】
ビバークから次のビバークへの移動は?
ダカールラリーの競技参加者はだいたい朝ビバーク地を出発して夕方次のビバークに到着します。
では、選手以外の人たちはどのようにビバーク間を移動しているかというと、メカニックなどのチーム関係者はほとんどがアシスタンスカーとトラック、主催者の関係者は職種によって自動車のほか旅客機、小型機、ヘリコプターとさまざまです。
かつて空港がビバーク地だったアフリカ時代には航空機で移動する通称エアメカニックが存在しましたが、アシスタンスルートおよびアシスタンスカー/トラッククラスの創設を機に禁止されています。
一般的なチームの朝は、まず移動時間が掛かるアシスタンストラックを4~6時頃出発させ、メカニックやエンジニア、マネージャーなどが乗るアシスタンスカーがこれに続きます。
かつてはメカニックの車両やパーツを運ぶトラックも全て競技への参加が義務づけられていましたが、現在は競技区間を通らずに次のビバークに至るアシスタンスルートが確立され、アシスタンス車両はこれを使って安全かつ確実に移動しています。
同ルートの道路環境は国や地域によって大きく異なり、アフリカ時代は4輪駆動が必然でしたが、現在、オフロードなのはビバークだけなので乗用車でも大丈夫。ロールバーも不要となりました。
物流のお話の際にも記しましたが、このルートがビバークの物流事情を大きく変えたキーであることは確かです。
見方を変えると競技コース上で参加車両のアシストを行えるのは競技参加者だけなので、大きなチームでは勝たせたい選手をアシストするために専用の車両やトラックを競技にエントリーさせています。
そこまでできないチームではメカニックの乗るアシスタンスカーが選手の出発をビバークで見送ったり、同様にSSのゴールで待機することも……。
ともあれアシスタンスカー、トラックは昼過ぎから午後に次のビバークに到着。主催者が決めたコマ割りの場所にビバークを設営して、競技車の到着を待ちます。メカニックやスタッフにとってはこの時間がのんびり出来る時間になります。
なお、食堂のテントや厨房機器、発電機などは複数のチームが編成され、互いに一つおきにビバークを巡っています。
かようにビバーク間の移動は大きなストレスを伴うものですが、今大会はループコースでの競技が合計5箇所で設定され、関係者の負担が軽減されました。
大規模になったダカールのビバークにとってループコースは救世主的存在です。
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