2021年シーズンはレース内容そのものよりも、疑惑方面の話題で盛り上がった印象がある。メルセデスのDRSからルイスのブラジルエンジン、はたまたDASまで……。しかし疑惑は疑惑のままで、白黒はっきりしたものはほとんどない。2021年シーズンを振り返りつつ、F1を賑わせた過去の疑惑を見つめ直してみる。
2019年フェラーリPU疑惑と1994年シューマッハ&ベネトン疑惑はどんなものだったのか? 元F1メカニック津川哲夫氏に解説していただいた。
文/津川哲夫、写真/Red Bull Content Pool,Ferrari,LAT images
■疑惑は疑惑のままだが、レッドブルホンダ・フェルスタッペンの戴冠が決定
激闘の2021年シーズンはレッドブルホンダの勝利で終わった。しかし勝利のための執念か、トップ2チーム間に発生した疑惑は醜いほどの応酬の数々だった。
レッドブルのリアウィングのたわみ疑惑や、ホンダエンジン開発疑惑。これは2021年シーズン用の“新型ホンダPUがシーズン開幕してから速くなった”とメルセデスが疑惑を投げ掛け、シーズン中のパフォーマンスの向上はレギュレーション違反ではないか? シーズン中にパフォーマンス開発を行ったのでは? と執拗にFIAに迫り、FIAは実にレッドブル軍団の4台を執拗にランダム車検にピックアップしていた。だが結果は白だったのだ。
また、レッドブルのピットストップオート化疑惑というのもあった。前半戦のレース結果の多くで、ピットストップタイムがレッドブルとは1秒近く離されていることに我慢ならなかったメルセデスが、「レッドブルのピットストップはオート化が行き過ぎている。人間の反応限界を超えていて危険なのでは?」と抗議。これをFIAは受け入れてしまい、シーズン中にもかかわらずピットストップ機構のレギュレーション変更を行ってしまった。つまりメルセデスは追いつけない1秒を、規則の変更を引き出すことで取り戻したのだ。
そんなメルセデスもまた疑惑にあふれていた。PUチャージ温度疑惑、そしてリア&フロントウィングのたわみ疑惑等々……それらは技術的な違反疑惑を使った政治的な神経戦の体をなしていた。
F1はライバルからアドバンテージを得られるならば、何でもするまさに戦い、戦争なのだ。
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