シエンタ強さの秘密とは? 地味…なんて言わないで!! 隠れたヒット車

■セーフティセンスが改良されたのも大きなポイント

緊急自動ブレーキを作動させる安全装備のトヨタセーフティセンスも改良され、昼間に関しては歩行者の検知が可能になった。従来は歩行者に対応していないことが重大な欠点だったから、先ごろのマイナーチェンジはユーザーにとってメリットが大きい。

音波を使ったインテリジェントクリアランスソナーも新設定された。車庫入れなどのために徐行している時に、近くにある障害物を検知すると、警報を発して最終的には緊急自動ブレーキも作動させる。車両の周囲を上空から見たような映像として、カーナビ画面に表示するパノラミックビューモニターもオプション設定した。

■受注が停止していた期間も影響している

いずれも注目度の高い改良だが、これだけが登録台数を昨年の1.5倍まで急増させた理由ではない。まずマイナーチェンジを控えて、受注が停止していた期間が影響した。

受注停止のために、2018年9月の登録台数は前年に比べて16%減っている。10月の登録台数は、9月に減少した台数とマイナーチェンジで増えた台数が合計されたから、前年の1.5倍になった。

安全装備の向上も見逃せない。先に触れたとおり改良前のトヨタセーフティセンスは、歩行者を検知できなかった。ほかのトヨタの小型車も同様だったが、2018年4月にアクア、5月にはヴィッツが改良を行い、トヨタセーフティセンスの歩行者検知を可能にしている。

そうなればシエンタも遠からず改良されるから、安全装備を重視するユーザーは、購入を延期させていた。この台数もマイナーチェンジ後の上乗せに含まれる。

さらにヴォクシー/ノア/エスクァイアのトヨタセーフティセンスが歩行者を検知できず、2019年1月に改良を受ける事情も関係している。そこまで待てないユーザーは、ダウンサイジングになるものの、歩行者検知を可能にしたシエンタを買うことがあるだろう。

トヨタのコンパクトカーでは、ポルテ&スペイドの設計が古くなり、トヨタセーフティセンスは歩行者を検知できない。今では売れゆきも下がり、この需要がシエンタに流れた面もある。

以上のように最近は、トヨタが用意する5ナンバー車の魅力が低下していた。そこにシエンタが安全装備を進化させ、2列シート仕様も加えたから需要が集まった。

シエンタは取り扱いディーラーも多い。先代型は全国に約1300拠点あるトヨタカローラ店が販売していたが、現行型はトヨタの全店(4系列のすべて)が扱うから4900拠点に増えた。

■ライバル、フリードに対しても大きなアドバンテージ!!!

シエンタの最大のライバルはフリード。2018年10月の販売台数では6751台で7位

もちろんシエンタの商品力も高い。先代型と同様の薄型燃料タンクを使って床を低く抑えたから、全高が1700mmを下まわるのに、3列目に座っても膝が持ち上がる窮屈な姿勢になりにくい。ハイブリッドのニッケル水素電池も、燃料タンク前側の床下に配置され、居住性にほとんど悪影響を与えていない。

この優れた空間効率は、ライバル車のフリードを上まわる。フリードは床が少し高くステップワゴンと同等だが、全高は100mm以上も低い1710mmだから、室内高が不足気味で3列目に座ると膝が持ち上がりやすい。

その代わりフリードは、内外装がミニバンらしい形状だから好みに合うユーザーも多いが、シエンタは車内を広く確保する工夫を凝らした。

フリードの3列シート7人乗り。価格はフリードHVが225万6000〜265万6000円、ガソリン車が198万〜212万1600円(価格はFF、モデューロは除く)

2列5人乗り仕様のフリード+(プラス)はHVが227万6000〜267万6000円。ガソリン車が190万〜212万円(価格はFF、モデューロは除く)

シエンタはガソリン車の価格を約180万〜200万円に抑えながら、内装の質を高めたことも特徴だ。インパネは樹脂性でソフトパッドをほとんど使わないが、見栄えはよい。ステッチ(縫い目)やキルティング風の装飾を施すなど、コストを抑えながら上質に見せている。

コンパクトで低価格の車種を上質に見せるのは、もともとトヨタの得意ワザだった。最近はヴィッツやアクアが質感を下げて発売され、その後に改善されるなどトヨタ車のよさが薄れてきたが、シエンタには今でも息付いている。

価格も絶妙だ。前述のようにシエンタの1.5Lガソリン車は約180万〜200万円だから、2Lのヴォクシー&ノアに比べると50万〜70万円安い。最近は安全装備や環境性能の向上もあってクルマの価格が上昇傾向にあり、ヴォクシー&ノアでも割高感が強まりつつある。

今回ラインアップされたシエンタの5人乗りファンベースの価格にしても、ガソリン車が177万6600〜198万720円、HVが218万7000〜234万360円。対する5人乗りのフリード+(プラス)はガソリン車が190万〜212万円、HVが227万6000〜267万6000円と、後発だけにフリード+(プラス)より価格を安く設定している。

ミニバンは就学年齢に達した子供を持つ世帯が多く購入するため、出費にはシビアだ。ユーザーの関心が、ヴォクシー&ノアから割安なシエンタに移っている面もある。

このようにシエンタには好調に売れる要素が多く、以前から販売の上位に入っていた。それがマイナーチェンジで弾みを付け、小型/普通車の2位になった。果たしてこれからも高人気を維持できるのか!? 今後の動向に注目したい。

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