新型タント超進化で捲土重来なるか!? 絶対王者N-BOXに勝てるか? 

【番外コラム】 軽超ハイトワゴン市場が激変? 新型タントはN-BOXの牙城を崩すか??

(TEXT/渡辺陽一郎)

 タントは人気が高く、発売から5年以上を経た今でも、販売台数はN-BOXとスペーシアに続いて国内の総合3位だ(今年4月)。

 このタントのフルモデルチェンジが近づき、プロトタイプを試乗した。ライバル車のN-BOX、スペーシアと比べたい。

左が今回の新型、右は先日までの現行車

 新型タントの内装は現行型より上質だが、ライバル2車を大きく上回るほどではない。特にN-BOXはメーター周辺の作りがていねいで、タントと差がつきにくい。

 シートの座り心地は、現行タントでは後席が不満だ。座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足して、足を前側に投げ出す座り方になる。

 そこを新型では床と座面の間隔を16mm広げて着座姿勢を向上させ、柔軟性も増した。プロトの座り心地は少し柔らかすぎるが、背もたれは腰を包む形状でサポート性はいい。

上が標準モデル、下がカスタムモデルの内装だ

 スペーシアのシートは少し硬いが、N-BOXは体が適度に沈んで快適。タントの室内の快適性はスペーシアを少し上回り、N-BOXと同程度。

 前後席の頭上と足元の空間も、タントとN-BOXは互角だ。

 身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、タントとN-BOXが握りコブシ4つぶん、スペーシアは3つ半になる。Lサイズセダンのクラウンがふたつ半だから、スペーシアを含めて充分に広い。

 使い勝手では、タントに装着された左側のスライドドアに特徴がある。現行型と同様、中央のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させ、前後両方を開いた時は開口幅がワイドに広がる。乗降性がいい。

「ミラクルウォークスルー機構」を持つのも新型タントの大きな魅力のひとつ

 動力性能は、ノーマルエンジンの場合、タントは実用回転域の駆動力が増した。CVT(無段変速AT)のギヤ比がワイド化され、エンジンは少し高回転指向でも加速は滑らかだ。

 現行型のパワー不足を解消した。ライバル車と比べても、タントは比較的余裕がある。スペーシアは実用回転域の駆動力が少し足りない。N-BOXはパワフルではないが扱いやすい。

DNGAエンジンは日本初の「複数回点火」などで、燃費と走り、環境性能を大幅向上させている(画像左がターボ、右がNA)

 ターボはパワフルで、10.0kgm前後のトルクが幅広い回転域で持続される印象。1L前後のエンジンを搭載する感覚で運転可能でノイズも小さい。

 スペーシアのターボも動力性能は充分。アクセルペダルを踏み増した時のノイズは少し粗いが、吹け上がりが活発で加速はいい。

 走行安定性は現行タントでは操舵感が鈍い。高重心のボディで安定性を確保するためだ。そこを新型はプラットフォーム、サスペンション、タイヤまで新開発して自然な印象に改めた。操舵に対する反応も正確になっている。

上が標準モデル、下がカスタムモデル

 たとえば車線を変える場合、ボディの傾き方は小さくないが、挙動の変化が穏やかに進むから不安定になりにくい。カーブを曲がる時はボディの内側が持ち上がるというより、外側が沈む印象。唐突にフラリと傾く不安感も抑えてある。

 スペーシアは少し安定指向で車両の動きは穏やかだが、そのぶんだけ後輪の接地性が高い。N-BOXは機敏ではないが重厚感が伴い、4輪がしっかりと接地する。タントとは互角だ。

 なおターボのタントカスタムRSは、足回りが少し硬い。15インチタイヤと相まって操舵感は機敏だが、乗り心地は路上のデコボコを伝えやすい。14インチは快適だ。

軽超ハイトワゴンの王者に君臨するN-BOX
スペース的にライバルよりやや不利なスズキ スペーシア

 装備では運転支援機能に注目したい。

 新型タントに車間距離を自動調節できるクルーズコントロールが用意され、デイズのプロパイロットと同じく全車速追従型になる。N-BOXは30km/h以下でキャンセルされ、スペーシアにはこのタイプのクルーズコントロールがないから、タントがリードする。LEDヘッドランプは、部分的に消灯して、ハイビームを保ちながら相手の眩惑を抑えられる。

 以上のように新型タントは、先代型の欠点を払拭させ、居住性や走行性能はN-BOXに近い。決め手に欠ける印象もあるが、運転支援機能と安全装備は最も先進的だ。開口幅のワイドな左側のスライドドアも、依然として大切な魅力になっている。

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