2024年11月16-17日に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久最終戦、イベント広場では多くの催しが開かれ、そのひとつに、トヨタ・モビリティ基金によるアイデアコンテスト「Mobility for ALL」部門で活動する17チームによる実証実験があった。これを読んでいる皆さまにも深く関係する事業なので、ぜひ紹介したい。
文:ベストカーWeb編集部、写真:トヨタ・モビリティ基金、ウィーログ、コボリン、ベストカーWeb編集部
■「健康寿命」を終えたあとの10年のために
「日本において、いま寝たきり状態の人は300万人と言われています」、「健康寿命と実際の寿命には10年の差があります。この10年の生活を支える技術が必要です」。こう話すのは特定非営利活動法人「ウィーログ」で車いす向け施設バリアフリーマッププロジェクトを紹介してくれた担当者。
話を伺ったのは富士スピードウェイのメインスタンド前イベント広場で、トヨタ・モビリティ基金が実施している「Mobility for ALL ~ 移動の可能性を、すべての人に。」というアイデアコンテストの実証実験会場だった。
■トヨタ・モビリティ基金「アイデアの社会実装プロジェクト Mobility for ALL 2024」公式サイト
「Mobility for ALL ~ 移動の可能性を、すべての人に。」は、誰もがスポーツ観戦や会場までの道のりを快適に楽しめるようなアイデアを公募するコンテスト。2022年度から実施しており、受賞団体には同基金から活動支援金(一件あたり最大2000万円)が授与される。今回の実証実験では17団体が参加した。
もちろん一時金だけでは継続的に活動できないので、今回のような広く一般向けや投資家向けに活動をアピールする場で、銀行や投資家と活動を繋げたい狙いがある。
「自動車をたくさん作ってたくさん売る」という目的を持つ営利企業である自動車メーカーが、こうした活動を支えているわけで、屋台骨がしっかりしているところや着眼点が「移動の自由のために」というあたり、トヨタさすがだなと感じる。
■技術の力で「移動」のハードルを下げる
今回紹介していただいたのは上述の「ウィーログ」と、高性能電動車いす「ハイネル」を開発する「株式会社コボリン」の2団体。
「特定非営利活動法人ウィーログ」は、バリアフリーマップを提供するアプリ「WheeLog!」を開発、運営する団体。公共施設(駅やサーキット)のトイレや駐車場、観客席の3Dマップをユーザーが投稿できるアプリで、「ここは車いすで行けるか」、「行けたとしてどんな具合か」のデータが蓄積され、参照することができる。
3Dマップ上に車いすのアイコンを置いて(スマホ上で)周囲の景色や「動かし方」を参照できるため、事前の準備が格段に楽になる。
■みんなでつくるバリフリーマップ「WheeLog!」公式サイト
「株式会社コボリン」が提供するのは、姿勢を比較的自由に変えることで長時間座り続けることができ何かに熱中できる超電動車椅子「ハイネル」の開発、製造、販売。この車いすは「一般的な車いす」と「電動ベッド」の中間的な存在で、(電動で前後左右に移動できるだけでなく)車いす上で使用者が「側屈(下半身に対して上半身を真横に傾ける動き)」や「回旋(下半身を固定して上半身をひねる動き)」や「伸展(筋肉を引っ張って伸ばす動き)」などが可能となる。
車いす上でストレッチすることが出来るため、長時間の移動や観戦へのハードルを低くすることができる。
一般的な高性能電動車いすは300万円程度(行政により約半額の補助が出る)で、「ハイネル」はそれよりも高額となりそうだが、量産化することで価格を下げつつ高性能化を目指したいとのこと。
■姿勢変換機能つき電動車いす「Hineru(ハイネル)」公式サイト
このほかにも多くの団体が富士スピードウェイに集まり、多くの観客に取り組みを紹介していた。高齢化社会は着々と進んでおり、モビリティのかたちもモータースポーツの観戦スタイルもそうした社会に合わせて進化する必要がある。そしてこうした進化は、寄せられる関心や支援の声によって早めたり方向を変えたりすることができる。
なるべく早く強く、よき方向へ進むべく、こうした取り組みは積極的に応援したい。高齢者や病気の人、障がい者の方々にとってやさしく住みやすいモビリティ社会は、きっとそうでない多くの人たちにとってもやさしく住みやすい社会であるはずだから。
【画像ギャラリー】トヨタ・モビリティ基金のアイデアコンテスト「Mobility for ALL」の様子in富士スピードウェイ(7枚)画像ギャラリー
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