S660の魅力をフランス人ジャーナリストが語る【日本初公開】

 ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーの審査員にも名を連ねるフランスの自動車雑誌「L’Automobile(オートモービル)誌」

 同誌副編集長のアレクサンドラ氏、そして夫でジャーナリストのフレデリック氏は大の日本好き。

 今回特別にフレデリック氏からS660の試乗インプレッションを寄稿してもらった。フランスから見た日本の軽自動車スポーツカーをどう語るのか。日本初掲載となる記事をお届けしたい。

 文:Frederic Guihal(フレデリック・ギアル) /翻訳:WEBベストカー編集部/写真:L’Automobile


実用性とFANの間で

 箱根という東京から約100km離れたこの場所は、その魅力的な山道がライダーや多くのクルマ好きを惹きつけてやまない場所だ。

 私たちは今回、ここ箱根でホンダS660をドライブした。このぶっ飛んだロードスターは2015年4月から日本市場でのみ販売されているクルマだ。

 当日はホンダ本社のある東京の青山から出発した。日本の皆さんとあまり変わらない体型の私たちですら、この超狭小なコックピットに収まるのは至難の業だ。

 それくらいS660は小さい。そしてもっとも忘れてはならないことがある。それはできる限り持ち物を減らすこと。

 1泊分の荷物はせいぜい歯ブラシ、下着そして靴下くらいにすべきだ。トランクはフロントフード下に「ルーフ入れ」があるが、それをトランクとして使うには実用性は極めて低い。

 そうなると歯ブラシとパンツたちは助手席の足元に押し込めるしかないのだ。

 また高速道路では135km/h以上で走る手立てはない。そもそも軽自動車という660ccの枠に収めたこのS660は、64psしかなくそんな最高速が出せる設計ではない。とはいえ、日本の高速道路は100km/hが法定速度だから問題はないのだが。

 658ccのターボエンジンはシート後ろのミドシップにマウントされ、CVTもしくは6MTで操る。日本では不人気のMT車がS660ではそこそこ需要があるなんて話を耳にした。

フレデリック氏はS660の実用性の低さこそ指摘しているが、そのハンドリングはかなり気に入っていた様子だ

箱根で味わう”マイクロスーパーカー”

 そうこうしているうちに富士山が見えてくる。魅惑的な箱根の山道が近づいてきた証だ。

 箱根は湖の近くにある地名であり、その道路形状などを含めて「特別な道」が広がるエリアなのである。有料道路もあるがそのぶん舗装は綺麗に保たれ、シャシーの性能を見極めるには非常にいい場所だ。

 「スピード注意」の看板がやたらと目に付く。こういう場所こそ、この「マイクロスーパーカー」の束縛を解いてあげるのに最適だろう。

 正直に話そう。加速に関してはそこまで速くもないし、パワーに圧倒される部類のものではない。

 でもこの850kgの軽量なボディ、ウエストゲートの音が賑やかな過給エンジンが組み合わさるとなぜだか刺激的で堪らない。特にこの箱根のような道では最高だ。

フレデリック氏が理想的なワインディングと称した箱根。クルマ好きだけならず、多くのジャーナリストが愛してやまない道だ

S660はヨーロッパでも通用するか?

 S660はとてつもなく速く走ったり、大馬力を発揮するようなクルマではなく、それ以外の部分で大きなドライビングプレジャーを提供するクルマだ。

 ヨーロッパでも人気のマツダMX-5(編註:日本名ロードスター)と同様のコンセプトだ。

 S660はかなり曲がりくねった日本の峠道で躍動するための玩具のような存在である。ねじれ剛性の高さがこのクルマの最大の売りではないとはいえ、その高い剛性感と信頼できるブレーキのおかげで安心できる、気持ちのいいドライブを提供してくれる。

 クルマ離れが続く日本だが、S660はクルマに少しでも関心がある人には新鮮な歓迎をもたらすだろう。たとえば私たちが道路を横断する時、信号待ちのS660のオーナーからの「幸せオーラ」に感化されることに違いない。

 このようなS660への熱狂はヨーロッパでも起こりうると簡単に想像できる。MX-5だって長年愛されていることも忘れてはいけない。

 しかしS660はひょっとしたら日本で走ってこそ最適なクルマではないだろうか。この島国のとてつもなく狭く曲がりくねった道を、安全に、そして楽しく走るのにベストなサイズなのだから。

妻でオートモービル副編集長のアレクサンドラ氏もお気に入り。ただ助手席に荷物と共にいるのは少し疲れたそう

“L’Automobile”とは?

オートモービル誌でのS660の特集記事

 今回この寄稿が叶ったのは実は2015年6月26日号のベストカーの企画からである。

 世界で売れている日本車を調べるこの企画でとても親身にインタビュー協力してくれたのが、このオートモービル誌であり、その回答者こそアレキサンドラ氏だった。

 オートモービル誌は1946年創刊と老舗のフランスのナンバーワン自動車誌であり、図らずとも日仏ナンバーワン自動車誌のコラボとなった。

 今後も海外のジャーナリストから見た視点のレポートを不定期ながら更新していく予定。ベストカー独占のこの企画、お見逃しなく。

フレデリック氏(右)とアレクサンドラ氏(左)。二人とも日本語や日本文化を自費で学ぶなどかなりの知日派で、日本車への知識も豊富だ。特にフレデリック氏は軽自動車までもカバーできる数少ない外国人ジャーナリストである

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