【速報】「すべては550万人のために」豊田章男自工会会長退任、次期会長はいすゞ片山氏へ

【速報】「すべては550万人のために」豊田章男自工会会長退任、次期会長はいすゞ片山氏へ

 2023年11月22日、日本自動車工業会(自工会)は都内で会見を開き、豊田章男会長が2024年1月をもって退任することを発表した。ここ20年の「1名一期2年」という慣例を超えて、二度目の就任(初回就任は2012-2014)、今年辞意を示すも周囲から引き止められて三期(2018-2024年)就任という重責を、次世代へ引き継ぐことになる。次期自工会会長は片山正則氏(いすゞ自動車 代表取締役会長/現自工会副会長)が担う。

文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカー編集部、日本自動車工業会、TOYOTA

■最大の功績は目標を定め、「モビリティ界」をひとつにしたこと

「自工会改革に取り組み、土台は作れたと思います」

 晴れやかな顔で、豊田会長は記者団に語った。

 日本自動車工業会会長職は、これまでよくも悪くも「神輿」であった。2018年に二度目の就任となったこの役職に、豊田章男会長は、百年に一度の革命期を乗り越えるべく頭と手と口と耳を使って奮闘、「成果」を出した5年半であった。

 最大の特色は、「競争と協調」を掲げて「競うべきところ」と「手を結ぶべきところ」を切り分け、メーカー同士の紐帯を強めたところにある。

最後の一年は、豊田会長のもと、日産、ホンダ、スズキ、ヤマハ、いすゞ、それにトヨタの佐藤社長も加わって、各社トップが一丸となり、ワンチームでさまざまな方面で「自工会」の存在感を高めた。新任となる片山正則いすゞ会長は前列左
最後の一年は、豊田会長のもと、日産、ホンダ、スズキ、ヤマハ、いすゞ、それにトヨタの佐藤社長も加わって、各社トップが一丸となり、ワンチームでさまざまな方面で「自工会」の存在感を高めた。新任となる片山正則いすゞ会長は前列左

 CJPT(商用車におけるCASE技術・サービスの企画を事業内容としてトヨタ、いすゞ、日野、スズキ、ダイハツが共同で取り組む事業体)が合同で次世代商用車の開発に取り組み、なによりスズキとダイハツが商用バンのBEVを共同開発し商品化まで達成したという成果は、豊田会長のリーダーシップなくしてはありえなかった。

 業界内の結束が固まったことで、政界とのチャンネルを強固にすべく2022年9月には「経団連モビリティ委員会」を発足、2023年5月に開催した広島G7サミットにてカーボンニュートラルへの取り組みを各国首脳陣や海外プレスへ紹介すべく実車展示と技術展示を実施した。

 思えば「カーボンニュートラルへの道はBEV一本だけではない、マルチパスウェイこそが押し進めるべき未来」という日本流の道筋に、国際的な理解が得られ始めたのはこの頃からだった。

 さらに「東京モーターショー」から「ジャパンモビリティショー」へとイベント名を変更し、クルマからモビリティへ、社会におけるモビリティの新しい役割を広く知らしめる場として大成功へと導いた。

 功績は数え上げればきりがない。その最後の仕上げが「引き際」だった。思えば10カ月前の2023年1月、トヨタ自動車の社長交代と合わせて自工会の会長職も退任したい、と事務局へ告げた豊田会長を、「もう1年だけ続けてほしい」と引き止めたのは各メーカーの社長で構成される副会長たちだった。

「自動車産業を取り巻く環境が急速に変化するなか、強い危機感のもと、これまでさまざまな改革をリードしてこられた豊田会長には、任期満了まで引き続きお力をお借りしたい」という意見で一致し、全副会長の総意として、慰留をお願いした経緯がある。

 そうして「ではもう一年だけ」ということで続けた自工会会長として、広島G7サミットとジャパンモビリティショーを成功させ、本日スパッと(任期満了となる2024年5月ではなく、カレンダーの変わる1月から、ということで)退任→新会長の就任を発表した。

環境、税制、雇用、次世代技術、そしてモータースポーツと、多方面で活躍。トヨタ自動車会長としての「顔」、マスタードライバー・モリゾウとしての「顔」を持ち、このたび3つめ、日本自動車工業会会長としての「顔」から降りることになる(画像はWRC2023シーズン最終戦ラリージャパンで1-2-3位を飾ったトヨタチームで喜びを爆発させる豊田会長)
環境、税制、雇用、次世代技術、そしてモータースポーツと、多方面で活躍。トヨタ自動車会長としての「顔」、マスタードライバー・モリゾウとしての「顔」を持ち、このたび3つめ、日本自動車工業会会長としての「顔」から降りることになる(画像はWRC2023シーズン最終戦ラリージャパンで1-2-3位を飾ったトヨタチームで喜びを爆発させる豊田会長)

 気づけば「トヨタのことや自工会のことはあまり好きではなかったけど、豊田会長の言うことなら信用できる」という、多くの自動車ユーザーが味方になって、みんなで「モビリティの未来」を一緒に、前向きに考えるようになった。今ではこの業界では誰もが「550万人のために」と、自然と口にする。

 これこそが豊田会長の最大の功績であり、日本自動車界の財産といえる。

 そうなるとやはり注目は「これからの自工会」だ。1967年の自工会発足から、会長職はトヨタ、日産、ホンダ各社のトップが務めてきた。今回、自工会会長へ就任する片山正則いすゞ自動車会長は、3社以外から初めて、そして商用トラックメーカー出身者として初めての選出となる。

「敵は炭素であり、内燃機関ではない。この理解は着実に広まりつつあります。日本自動車工業会は、これまで以上に、社会と環境への貢献を進めてまいります。550万人の仲間から、(「モビリティ関連企業」の枠をさらに広げて)850万人の仲間とともに邁進いたします」

 会長就任にあたって、片山氏は上記のように述べた。

2024年1月からの自工会新体制
2024年1月からの自工会新体制

 この「トヨタ、日産、ホンダ以外から初めて」という点も、また「商用車メーカーから初めて」という点もまた、自工会が推し進める多様性、マルチパスウェイを象徴する交代劇ともいえる。

 片山新会長には、豊田氏が成し遂げたこと以上の成果を期待します。正副会長とともに「モビリティ界」一丸となる新体制で、日本の産業と経済とクルマ好き、モビリティ好きたちを巻き込んで盛り上げていただきたい。日本自動車界に幸あれ。弊誌も微力ながら、お手伝いできることがあればなんでもやります。

(追記/記者向けの質疑応答で「先般、大成功となったモビリティショー、終幕直後から「毎年やってみては?」という話が出ていたが、これはどうなるか?」という質問が飛び、豊田会長から「いま日本で累計100万人のお客さんが集まるのは夏の甲子園とモビリティショーだけ。特にこれまでは”ワールドプレミアは何台出るのか”という話だったのが、今回からこれに加えて多くのスタートアップ企業にとって”新しい出会いの場”であり”お披露目の場”になったこと。そうであるなら2年に一度ではなく毎年開催してもいいのではないかと、いまも考えています。ただこれは新会長の専任事項ですので、新体制の下でしっかり議論していただきたい」とバトンをパス。それを引き取った片山新会長は「わたくし、まだ会長になっておりませんのでここで何かを言うのは難しいのですが…(苦笑)、今回のモビリティショーは本当に大成功でした。豊田会長の仰るとおりで、せっかく火が付いた種火を吹き消すようなことはしたくありません。ただ自工会だけでいいのか、経団連の皆さんとも一緒にすべきではないか、という議論もあります。そういう意味では”どうやるか”という話をしていきたいです」。とのこと。おお、これは2024年10月にまたモビリティショーが開催されると思っていいですね? ね??)

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