ニッポンのクルマ界が生み出した名車を振り返る本企画。今回はトヨタが放ったスーパースポーツLFAについて。
軽量化のためにボディ骨格にCFRP(炭素繊維強化樹脂)を採用、そしてエンジンは9000回転で当時のトヨタF1マシンと同じ高い周波数を出すよう、チューニングされていたとか。
レクサスLFA
(2010~2012年)
文:鈴木直也
イラスト:稲垣謙治
初出:ベストカープラス2016年10月17日号
世界最高水準のものづくりにチャレンジ
世界トップレベルの性能を誇るスーパースポーツ。
クルマ好きならそう聞いただけで誰もがワクワクしてしまうテーマなのだが、それは自動車メーカーとて同じことだ。もし事情さえ許すのなら、どこのメーカーだってそんなプロジェクトをやってみたい……。
しかし、現実はやっぱりキビシイ。フェラーリやランボルギーニみたいなスーパーカーの老舗ブランドですら、フラッグシップモデルの生産台数はせいぜい年3ケタというレベル。
大メーカーほどこういう少量生産車は採算にのせにくく、やってもモーターショーのコンセプトモデルどまりが関の山。まず量産までたどりつかない。
そういう意味では、レクサスLFAは最近では珍しい事例だったといえるだろう。2005年のデトロイトショーでコンセプトモデルが初展示された時、恥ずかしながらぼくはまさか量産化までいくとは思っていなかった。
しかし、徐々にLFAの全貌が明らかになるにつれ、なぜトヨタがスーパーカー作りに本気になったのかが見えてくる。
目指したのはレクサスのFシリーズの頂点であり、「世界超一級レベルの運動性能と超一流の感性と官能を持ちあわせるスーパースポーツ」として世に送り出すべく、レクサス初のスーパーカーだった。
ひとつには、もちろんレクサスのブランドイメージを高めるためのフラッグシップモデルとしての役割だ。
この頃はレクサスが日本に正式に逆上陸するなど、レクサスブランドのグローバル展開が活気づいた時期。勝利まであともう一歩だったF1活動とあわせて、レクサスのスポーツイメージ向上にドライブがかかっていた。
さらに、もうひとつ重要なのは、トヨタグループ全体として“世界最高水準のものづくり”にチャレンジする機会を持つということが挙げられる。
技術的に見るとLFAに斬新なところはなく、この当時のスーパーカー作りのセオリーに忠実にしたがった古典的内容といえるのだが、要素技術はコストに糸目をつけず最先端、最高級のものを集めている。
ヤマハのV10エンジン、アイシンAIのトランスアクスル、トヨタテクノクラフトやトヨタ自動織機の手になるCFRP性モノコック/ボディワークなど、いわばグループの総力を上げた技術オリンピック。
それをトヨタグループ各社が協力して1台のクルマにまとめ上げることに、LFAプロジェクトの意義があったワケだ。
残念ながら予定の500台を限定生産、販売をしてLFAプロジェクトは終了してしまった。
今のところLFA後継車の噂も聞かないが、こういう“お祭り”は10年に一度くらいやらないと伝統として認知されない。
レクサスのブランド価値を高めるという意味でも、LFAには後継モデルが必要なんじゃないかなぁ?
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