これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、7人乗りクロスオーバーSUVの先駆として現代のSUVに遺産を残したヴァンガードを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
ライバルを上回る3列シートの居住性
ヴァンガードは、1997年に登場したハリアーから連綿と続く、トヨタのプレミアムSUVの一翼になるはずだった1台だ。
「Active & Luxury」をテーマに、ゆとりの動力性能や優れた操縦性安定性が生み出す卓越した走り。そして、プレミアムSUVにとっては必須とも言えるアーバンシーンに映える上質な内外装スタイルで「大人の」SUVとして売り出したが、2007年にデビューし、2013年には後釜を残すことなく新車市場から姿を消した。
デビュー当時のTV CMなどでは「タフ&ジェントル7シーター」と銘打っていたことからも、セールスポイントはプレミアムな雰囲気のSUVでありながら、3列7人乗り仕様がラインナップされていることだとわかる。
市場にはヴァンガードの前身と言われていたクルーガー、三菱 アウトランダー、ホンダ クロスロード、日産 エクストレイルといった3列シートを備えたシティSUVが導入され、SUVであってもミニバン並みのユーティリティを付加したクルマが広く認知されていた。
ミニバン以外の多人数乗り車を求めるニーズに訴求する狙いが合ったのは明白だが、ミニバンのようにいかないのがSUVの3列シート車である。これは現在でも変わらない。3列目の空間はコンパクトミニバンよりも狭く、“とりあえず”3列シートを装備したという印象は拭えない。
その点でヴァンガードは、“わりと”座れる3列目としたことがトピックとして挙げられる。発売当時のリリースを見ると、3列目に関する記述は「座り心地のいいサードシートを採用」しかないが、ライバルと目されるクルマと比較すると、シートの座り心地、足もとや頭上の余裕では勝っていたのは事実だ。
しかし、3列目に対する評価は概ね「いざというときに」とか「エマージェンシーシート」といった文言が並び、積極的に多人数乗りを推奨できるほどの能力でなかったことは否めない。
■トヨタのプレミアムSUVを広く浸透させた立役者
7シーターSUVという点がユーザーの琴線に触れることはほぼなかったが、高級ミディアムSUVとして磨き上げた特徴は注目され、多くの支持を集めた。
内外装は、トヨタブランドのデザインフィロソフィである「VIBRANT CLARITY(活き活き・明快)」に基づき、アクティブでアーバンなライフスタイルに応えるものに仕上げながら、SUVらしいたくましさをプラスすることで、都会的で洗練された個性が表現されている。
フロントまわりはスリムな造形のヘッドランプを外側に配置し、フェンダーと一体化した大型バンパーによって踏ん張り感を強調。さらにエンジンフード上に盛り上がった2本のラインとメリハリあるフォグランプまわりのデザインが、SUVならでは力強さをアピールしている。
スタイリッシュなSUVが増えた現代ではややコンサバな印象だが、エンジンフードからルーフ、リアスポイラ-へとスムースに続く伸びやかなシルエットは、当時としては目を引くものであり、ヴァンガードが掲げた「Active & Luxury」というテーマを巧みに表現していた。
SUVに求められる使い勝手のよさもユーザーメリットをもたらす要因のひとつだ。特に荷室は床下部品の薄型化とリアショックアブソーバーの斜め配置によって、開口部の地上高から低く設定し、さらに荷室幅を拡大したことも相まって、荷物の積み降ろしがしやすい。
さらに3列目シートが床下格納できるうえに、スーパーチルトダウン機構を採用した6対4分割可倒式の2列目シートによって、段差の少ない広い荷室スペースにできる。しかも2列目、3列目ともに左右独立して前倒しや格納ができるので、多彩なシートアレンジができることも実用面における優位点だった。
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