洗車キズが付くから洗車機は絶対使わない、そう考えている人が存在する一方で、洗車機メーカーは、常にこの問題に真剣に取り組んでいる。この話はクルマ好きの間で長く語り継がれてきたテーマであり、なかなか結論が見えないテーマでもある。今回は長きにわたりこの問題と向き合ってきた洗車機メーカーの立場からの話を提供したいと思う。
文/写真:青山義明、取材協力:タケウチテクノ、ビユーテー
誤った洗車機の使い方と拭き上げタオルに注意
「洗車機を通した後にキズを発見した。だから、これは洗車機によるキズに違いない」という話を聞くことがある。しかし、洗車機メーカーは洗車の際に注意すべきは、洗車機を通した後の拭き上げのタオルなど、だともいう。
洗車の際にキズが付くということについては、例えば乾燥した固いタオルや砂が入り込んだタオルを利用し不用意にボディを擦ることが一番のキズの原因となる、とも指摘する。
もうひとつは、汚れていてわからなかったキズが、クルマがキレイになったことで、拭き上げ中にキズを発見し、キズが付いたと思うのではないか? ということ。前述の拭き上げの際のキズも含めて、この後処理の際にも注意が必要だ。
また、洗車機メーカーが言うのは、まずは洗車機の正しい使い方、となる。これは洗車痕ではなく、破損につながる内容だが、洗車機は洗車時に車両のボディ形状を一度スキャンして読み取った後にその形状に合わせてブラシを当てていく。このスキャンした後にクルマを動かしたり、ボディ付属品を避ける指示を入れないことで、アンテナが折れた、であるとか、リアミラー、ドアミラーの破損といったケースもある。
これについては、車両を停止させたらエンジンを停止し、事前の装備チェックやガムテープでの補強といった作業を事前に行って、十分気を遣いたいところである。あくまでも事前に確認をしてから、冷静に洗車機に通すようにしたい。
洗車機に通した後のボディを実測したデータがある
洗車機に通すとキズが付くのか? メーカーではキズについての検証も行っている。そもそも、洗車機で付くキズとはどういうものか? ということについて調べてみよう。キズとは車両のボディ外板部分の線状のヘコミ痕(線キズ)を指すことが主であろう。
前後正面は横線、それ以外はフロントからリアにかけての線キズが付くはず、である。それは多くの方が納得できるものだと思われる。洗車機メーカーは、洗車機ではそうしたキズと呼ばれる痕は通常では残らない、と洗車機のブラシの回転とキズの関係を指摘する。
もし仮に洗車機でキズがつくとしたら、ブラシを押し当ててぐりぐり擦っているわけではないから、回転しているブラシの、その回転方向に点キズが付くという。つまりボディ側面でいえば縦に線キズが付くことはない。しかし、そういったキズの車両を見たことがあるだろうか? いわゆる多くの人が思っている洗車機によるキズは、実際は洗車機では起きえないキズ、であるというのである。
で、以上は仮の話。実際のところ、洗車機のブラシの接触面はどうなっているのか? 基本的には、ブラシの先端はボディ表面に長く接触しているのではなく跳ねながら当たっているという。つまり、洗車機のブラシでキズが付くとしたら、ブラシの回転方向に合わせてボディのフロントからリアにかけて、点々とキズが付くというのが、本来の洗車機キズということになるというのだ。
このキズ問題について、タケウチテクノが製造している門型洗車機に搭載しているスポンジ系ブラシ「サイフレックスブラシⅡ」を、第三者機関に持ち込んでおり、その結果をビユーテー(タケウチテクノの製造する洗車機の販売会社)が公表している。
この「成績書」によると、洗車機を通す前(0.05ミクロン)と1回通した後、10回通した後の変化を数値化しているが、最大0.02ミクロンの変化量となる。ちなみにこのデータは表面粗さ(Ra )をマイクロメートルμm)で表している。 1マイクロメートル(ミクロン)は 0.001 ミリメートル(1mmの 1000 分の 1 )であるが、人間の髪の毛の太さがおよそ 70 ミクロンなので目には見えないレベルである。
もちろん、これをもってしても、アンチ洗車機派からすれば、変化がある=キズが付いたのだと主張するかもしれないが、目に見えない変化をキズといえるだろうか……。
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