破産後に大躍進!? F1“中堅の星”の快挙とレッドブル・ホンダが示す可能性

 ホンダがトロロッソと新たに組み初年度を戦うF1で今、あるチームが脚光を浴びている。メルセデスからパワーユニットの供給を受ける“プライベーター”、「フォースインディア」だ。同チームは2018年7月に破産しながら、破産後初レースのベルギーGPでなんと予選3位、決勝5位という好成績をマーク!

 自動車メーカー直系のワークスチームではないプライベーターの好走は、図らずもF1の難しさを示した。しかし、2019年に誕生するレッドブル・ホンダは、そんな現代F1の「構図」を変える大きな可能性を秘めていると、F1ジャーナリストの津川哲夫氏は分析する。

文:津川哲夫 [Text:Tetsuo Tsugawa]
Photo:Getty images/RedBull Content Pool、Daimler


非メーカー直系中堅チームの快挙が示す「意味」

予選1位を獲得したメルセデス、ルイス・ハミルトンの背後に迫る同3位のフォースインディア、エスティバン・オコン(ベルギーGP決勝)

 フォースインディアが倒産。管財人が入り、チームは現在ウィリアムズに乗るランス・ストロールの父親の投資家グループによって買収されて新たなスタートを切った。

 その新生フォースインディア、スパ・フランコルシャンの予選では雨に恵まれたとはいえ、2列目の3、4番目を獲得。

 決勝レースでもこの予選が幸運だけではなかったことを証明する5、6番手のダブル入賞を果たした。現在のF1は、トップ3である事実上のワークスチームが飛び抜けていて、6位以上の入賞はプライベーターにとって優勝と同じぐらいの意味がある。

 近年、フォースインディアのようなプライベーターは、F1界では“クラスB”を戦わざるを得ず、レースはメルセデス、フェラーリのワークスチームが牛耳り、セミワークス型のレッドブルが必死にトップ2に食い下がっているのが現状だ。

 実際、ルノーが自らのワークスチームを登場させて以来、レッドブルでさえワークスとしての地位はなく、単なるカスタマー(パワーユニットを自動車メーカーから買う、あるいは提供を受けるチーム)に戻っている。

 現在のF1パワーユニット(PU)は、もはや一個人(プライベート)に作れるものではなく、カスタマーPUを使うプライベーターは、その出発からワークスに大きなハンデを持つことになる。

 規則上、カスタマー供給用のPUはワークスと同じで、物理的な違いはないはずなのだが、例えば新車開発時はモックアップ(試作版)PUで細部はわからず、ぎりぎりまで本物は供給されなかったり、規則上変更可能でもPU関係のパーツは御仕着せのままといったケースが多い。

 仕様条件も耐久性等のために滅多なことではフルパフォーマンスは使用されない。

 その背景にはワークスからの要求もあれば、チーム側のPU代金のセーブという意味もあるのだが、これだけでもパフォーマンスに大きな差がついてしまう。

 PUトラブルの解明は100%供給チーム側に伝えられることはなく、多くの場合ある程度でお茶を濁されて、全ては解明できないままレースを進めていかなければならない。

 したがって、ますますチームはPUに保守的にならざるを得ず、とてもワークスクラスへ挑むのは難しい。

 こんな状態だからこそ、今回のフォースインディアが如何に快挙を成し遂げたか、ということなのだ。

ワークスは上から目線!? 変わるF1プライベーターの位置づけ

フォード・コスワース DFVエンジンを搭載する1978年のチャンピオンマシン、ロータス 79。現代F1ではメーカー直系チームが強さを見せつけるが、かつては多くのプライベーターが同じエンジンで鎬を削っていた

 現在ワークスからのカスタマー供給は“上から目線”で行われている。これを我慢しなければならず、ワークスへの忖度があるのが現状だ。

 遠い昔、プライベーターは決してワークスの下という構図ではなかった。競争力のある市販エンジンがあり、そのエンジンをエンジンチューナーがさらにチューニングしてパフォーマンスを上げることも可能だった。

 むしろ、ワークスはその市販エンジンに後れを取るわけには行かず、必死になっていた時代があった。

 コンストラクターの多くはプライベーターで、マクラーレン、ティレル、ブラバム、ロータス、ウィリアムズ……みな市販エンジン、コスワース DFVでチャンピオンを取っている。

 だからこそ、車体のコンストラクターズチャンピオンシップに大きな意味があった。現在、それはメーカー同士のステータス争いに変わり、そのステータスを得るためにチームオーダーなどが頻繁に使われる。

レッドブル・ホンダが示すプライベーターの新しい可能性

自らのチームで戦うのではなく、レッドブル、傘下のトロロッソと組みF1を戦うことを選んだホンダ。その関係は、新しいF1の可能性を示すと津川氏は期待する

 では、現在の状況で中団争いを走るプライベーターに生きる道、戦う道はないのだろうか?

 この意味でホンダがレッドブルとトロロッソへパワーユニットを供給することは、これまでと違ったケーススタディーとなりそうな気がする。

 まずワークスと言えども、チームはレッドブルそしてトロロッソというプライベーターであくまでもホンダとのコラボレーションという形をとっている。

 このコラボはチームとホンダが同等の立場を維持し、どちらも上から目線のない共闘を行うというわけだ。

 レッドブルへの供給が決まった時、筆者はこれまでのレッドブルへのチーム感から、心情的に「まだこのクラス(=トップチーム)への供給は早いのでは」と老婆心を働かせてしまった。

 しかし、その後のレッドブルを観察し、多くのチーム関係者と話をしてみると、彼らはルノーとの関係から多くを学んだようだ。

 どちらが意地を張っても、どちららが上から目線でいても、純正コラボは成立しないことを痛いほど認識した様子だった。

 これはホンダも同じで、マクラーレンの上から目線を受け入れてしまったことに大いなる反省があったはずだ。

 プライベーターのトップチーム・レッドブル、ヤングドライバーを積極的に産み出すトロロッソ。

 ホンダは“ワークス”だが、レッドブルとのコラボは、現在に君臨するメルセデス、フェラーリ、ルノーのメーカー型ワークスの牙城を崩し、近未来のF1を変える最高の兵器に成りそうな気がする。

 今や老婆心は大きな期待感へと変わってしまった。

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