消波ブロックの作り方
大型消波ブロックは重量や寸法的に工場からの運搬が困難なので、現地でつくるのが基本。どのタイプの消波ブロックを使うのかは事前の計画段階で決められており、その計画に基づいて地元の建設会社が形状の特許を持つブロックメーカーから型枠をレンタルしてきて、自分たちで生産を行なう。
今回生産する消波ブロックは東京のブロックメーカー、三省水工の「シーロックエイト(エイトはラテン数字)100t型」で、完成時の寸法は長さ5.78m×幅5.35m×高さ4.82mで質量は98.90tに及ぶ。使用する型枠の容積は44リューベで、これは大型トラックベースのミキサー車11台分に相当する。
消波ブロックの生産は、組み立てた型枠に原材料となる生コンクリートを流し込んで固めるというもので、型枠に入れて2日で初期硬化し、さらに2日で「持ち上げてもいいぐらい」まで硬化。最終的に28日後に検査を受けて、設計強度を上回っていれば完成となる。
津軽半島は11〜2月の冬季間が豪雪のため、3〜4月が特産品であるイカの産卵期のため海での作業ができなくなり、取材時に生産していたブロックは来年の春用。生産は設置工事がストップする冬季間も行なわれ、設置工事が再開する来年の春にはヤードが一杯になる予定だ。
消波ブロック設置工事の実際
設置工事は輸送パートと設置パートに大別され、輸送パートは「トレーラによる陸上輸送(小泊港内のヤード〜岸壁)」「起重機船による海上輸送(小泊港〜下前漁港)」に分けられる。海上輸送後はそのまま起重機船で設置作業を行なう流れだ。
陸上輸送を担うトレーラは消波ブロック輸送の第一人者として知られる兵庫県西宮市の株式会社ライト建設が齋勝建設にレンタルしているもの。同社が独自に開発した2軸16輪の低床セミトレーラで、トレーラ単体の寸法は全長約12m、全幅3.3mとなっている。
消波ブロックの形状に応じた架台を搭載するのが特徴で、これによりさまざまな形状の消波ブロックを安全かつスピーディに運搬可能。今回は国内最大級の消波ブロックを運搬するため架台を軽量化し、架台をマウントした状態で最大積載量100tを確保。コンプライアンスもしっかり守って輸送可能となっている。
一方、起重機船は100t級ブロックを1度に12個運搬可能。トレーラが運んできた消波ブロックを次々と船体に積み込み、片道1時間半かけて下前漁港に到着後は、速やかに設置工事を行なった。重さ100tの巨大消波ブロックをクレーンで海中に投下するシーンは、ほかではなかなか見られないド迫力なものだ。
ちなみに今回の下前漁港への消波ブロック設置工事は、100t級の消波ブロックを3年で1500個設置する計画。1年あたりの設置数は500個となるが、前述の通り11〜4月中旬までは海での作業=設置作業ができないので、実質的に半年で500個を投入しなくてはならない。
また、取材時は偶然穏やかな天気が続いたが、本来この地域は日本海からの強風で海が荒れやく、海が荒れても作業がストップしてしまうので、スケジュールは意外とタイト。生産技術、運搬技術とともにシビアな工程管理まで求められる消波ブロック設置工事は想像よりはるかに大変そうだ。
【画像ギャラリー】100t積み低床トレーラが活躍!! 消波ブロックの生産から設置までの様子をチェック!!(16枚)画像ギャラリー