シーマが2022年12月をもって生産終了して以降、フラグシップカーを出せていない日産。ただ実は、シーマの代わりとなる新たなフラッグシップのコンセプトモデルを、かつてINFINITIが公開していた。幻となったフラグシップセダン「Q80インスピレーション」について振り返ろう。
文:吉川賢一/写真:NISSAN、INFINITI
【画像ギャラリー】異次元にカッコよかった!! 幻のフラグシップ「Q80インスピレーション」(12枚)画像ギャラリーフラグシップカーとしてのオーラがあふれ出ていた、Q80インスピレーション
パリモーターショー2014で、日産の北米向け高級車チャンネル、インフィニティが世界初公開した「Q80インスピレーション」。インフィニティは、このQ80インスピレーションを、「あらたなフラッグシップサルーンを予告するコンセプトモデル」と説明しており、「80」というナンバリングからも、当時のインフィニティのトップモデルであったQ70(日本名フーガ)の上に位置するフラグシップモデルとして、新規投入されるとみられていた。
4ドアのファストバックセダンで、ボディサイズは、全長5,052mm×全幅2,027mm×全高1,350mmと、全長全幅ともにQ70(全長 4,945 mm x 全幅 1,845 mm x 全高 1,510 mm)を超えるサイズ。独立した4シーターのパッケージングで、サイドドアは観音開きを採用。乗降性には優れるが、乗り降りに場所をとるので、コンセプトカー向けの装備だったのだろう。
サイドドアミラーレスや上下幅の薄いサイドウィンドウ、全面ガラス張りのパノラミックガラスルーフ、特大の22インチロードホイールなど、その立派な体躯からもフラグシップカーとしてのオーラがあふれ出ていた。インフィニティの将来のデザイン言語を示したこのデザインは、いま見ても美しく逞しいと感じる。
550hpを発生するツインターボV6ハイブリッド
パワートレインは、ダウンサイジング化されたツインターボチャージャー付き3リッターV型6気筒エンジンに、電気モーターを組み合わせたハイブリッドだ。トランスミッションには、9段オートマチックを採用し、システム最高出力は550hp(557PS)、最大トルクは750Nmを発揮しつつ、5.5L/100km(約18.2km/L)という低燃費を達成するとしていた。2010年にフーガハイブリッド向けに投入した、3.5リッターV6 NAエンジン+モーター(7速AT)を進化させた(当時の)次世代ハイブリッドユニットだ。
駆動方式は、後輪駆動から4WDへの切り替えを行う「スマートドライブトレーン」を採用。前後0:100から50:50までの範囲で自動的に配分できるとしており、手動で4WDモード固定も可能だった。
想定ライバルはレクサス「LS」、メルセデスベンツ「Sクラス」、BMW「7シリーズ」、アウディ「A8」といった、世界の名だたるフラグシップサルーンたち。生半可な内容では太刀打ちできないだけに、日産のテクノロジーの粋を集めた贅沢な一台になるはずであった。
Q70には、全長5,130mmまでホイールベースを伸ばしたQ70L(日本名シーマ)があったが、主に中国市場向けのサルーンであり、ライバルと渡り合うだけの内容は伴っていなかっただけに、Q80インスピレーションの市販化を心から楽しみにしていたユーザーは多くいたことだろう。
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