電動化には意外と積極的で、PHEVを多く設定するジープブランドだが、いよいよBEVを投入してきた。ジープブランド初の電気自動車となるコンパクトSUV「アベンジャー」に鈴木直也氏が試乗。小さな新型ジープの実力は?
※本稿は2024年10月のものです
文:鈴木直也/写真:大西 靖、ステランティス ほか
初出:『ベストカー』2024年11月26日号
■いよいよ来た! ジープブランド初のBEV登場
タフなオフロード4WDというイメージが強いジープだが、実は電動化にも積極的なブランド。ラングラーを筆頭に多くのモデルにPHEV仕様を設定し、ブランドキャラクターを損なうことなくCO2削減の実績をあげている。
次のステップとなるBEVでも、ジープは手堅い戦略を貫いた。
今回試乗したアベンジャーはジープのBEV第一弾だが、カジュアルなコンパクトSUVというキャラで駆動方式はFFのみ。BEVのエントリー層をターゲットとしたクルマ作りに徹している。
実車を目にしたアベンジャーの第一印象は、「コンパクトながら力のみなぎったグッドデザイン」というものだ。
アベンジャーは全長が10cm弱短いほかはヤリスクロスとほぼ同サイズ(4105mm×1775mm×1595mm)だが、グッと張り出したホイールアーチの造形など、力強く存在感のあるデザインが頼もしい。
試乗はステランティス・ジャパン本社(東京都港区)からスタートしたのだが、まず気に入ったのは取り回しのよさと軽快な加速感だ。コンパクトなボディは都内を走り回るには理想的なサイズだし、BEVらしいキビキビした加速感はストップアンドゴーの多い市街地走行をストレスなくこなしてくれる。
モーターのスペックは156ps/27.5kgmと控えめながら、アベンジャーがユニークなのは1.6トンを切る車重の軽さ。ダイレクトなモーターの加速感はどのBEVにも共通する特性だが、重いボディを強力なトルクで動かすのではなく、スマートで効率的な加速感が気持ちいい。
■意外と軽快感を重視したセッティング
シャシーのセッティングも軽快さを重視した味付けだ。電動パワステの操舵感は軽めで、あまりロールを意識させずにコーナーを駆け抜けるタイプ。低重心を活かしてワインディングを攻めるようなシーンも難なくこなす。
欲を言えば、乗り心地にもっと重厚感が欲しいところだが、BセグのSUVとしてはクオリティの高いドライバビリティと評価できると思う。
今回は試せなかったが、オフロード性能にもこだわりがあり、スノー/マッド/サンドなど6つの走行モードを選べる“セレクテレイン”をはじめ、ショートオーバーハングによる走破性(最低地上高200mm、アプローチ20度/デパーチャー32度)など、イザという時に頼れる隠し技を備えているのもイイ。
エコとは真逆の運転パターンながら、試乗中の電費は6km/kWh台をキープ。バッテリー容量は51kWhながら、丁寧に走れば航続距離400kmは期待できるという感触だった。
●ジープ アベンジャー アルティテュード 主要諸元
・全長×全幅×全高:4105×1775×1595mm
・ホイールベース:2560mm
・車両重量:1570kg
・最高出力:156ps/4070-7500rpm
・最大トルク:27.5kgm/500-4060rpm
・駆動方式:前輪駆動
・一充電走行距離(WLTC):486km
・総電力量:54.06kWh
・タイヤサイズ:215/60R17
・価格:580万円
コメント
コメントの使い方価格がヤリスクロスと違い過ぎるので、消費者は他と比べます
280万安~のCX-60は188ps・トルク25.5kgmと近いですが、110kg重い。
300万円安いカローラクロスHVはシステム出力170psと上回りシステム最大トルクも同等なうえに100kg軽い。
同価格帯のクラウンスポーツHVは234psと出力高いですが240kgも重いため、PWRは2.2良いという差。大きいと見るかそこそこと見るか