ロング&ローなフォルムに、トルクフルな1300ccのパワーユニットを搭載した「X4」

ロング&ローなフォルムに、トルクフルな1300ccのパワーユニットを搭載した「X4」

 ドラッグレースを走る、低く長いバイクをモチーフにしたバイクは数少ない。そんなドラッグレース用バイクを意識したデザインを持つX4は、後のCB1300SFに受け継がれるパワーユニットを最初に搭載したバイクとなった。

 
文/後藤秀之
 

エリミネーター、Vmax、そしてX4へと繋がるドラッグレース

 1/4マイルをどれだけ速く走ることができるか、それが日本ではゼロヨンの名で知られるドラッグレースであり、そのタイムはバイクや車の性能を示す情報のひとつとなっている。アメリカにはそれこそあちこちにドラッグレース場があり、気軽に参加できるホビーレースとしても浸透している。

 このドラッグレースを走るバイクは車高を落とし、フロントフォークを寝かした独特のドラッグバイクスタイルが定番。スーパースポーツバイクをベースにしたマシンの場合は、ローダウン+ロングスイングアームが定番化している。

 このドラッグ用のバイクをモチーフにしたバイクが、1985年に発売されたカワサキのエリミネーター900とヤマハのVmax(V-MAX)である。エリミネーター900はGPZ900R用ベースの水冷DOHC4バルブ直列4気筒エンジン、Vmaxはベンチャーロイヤル用ベースの水冷DOHC4バルブV型4気筒エンジンを搭載、駆動方式は両車ともシャフトドライブが採用された。

 

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最初にドラッグレース用バイクをモチーフとしたのは、カワサキのエリミネーター900。GPZ900Rベースの直列4気筒エンジンを搭載していた。

 

 

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Vmaxはドラッグ用バイクという要素に加えて、アメリカンマッスルをバイクで表現したモデル。全世界的に高い人気を誇った。

 

 エリミネーター900が最高出力115PS・最大トルク8.7kgmだったのに対し、Vmaxは6000rpm以上で1気筒に2つのキャブレターから吸気されるというVブーストシステムによって最高出力145PS・最大トルク12.4kgmというパワーを誇った。エリミネーター900は1986年にZL1000へとモデルチェンジしたがその後数年で生産終了、対するVmaxはマイナーチェンジを繰り返しつつ2007年まで製造され、2009年には1700ccのエンジンを持つ新型も発売された。

 

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GPZ1000RXベースのエンジンを搭載したZL1000。エリミネーターのペットネームは与えられず、大きくアップしたハンドルなどクルーザー的要素が加えられた。

 

 そんな一人勝ちとも言えるVmaxのライバルとなるべく、1997年にホンダが送り込んだのが1300ccの直列4気筒エンジンを搭載した「X4」である。

 

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X4は1300ccの直列4気筒エンジンを、新設計のフレームに搭載して登場。各部のデザインは力強さを感じさせるものだ。

 

 

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190サイズのタイヤや太く短いサイレンサー、低く設定されたシートなどが迫力のあるリアビューを生み出す。

 

 
 
 

都道の加速を生み出すトルクフルなパワーユニット

 X4のデザインはロング&ローという言葉で表現するのが正しいドラッグバイクスタイルで、滑らかな曲線で構成した力強くボリューム感のあるフューエルタンクやショートデッキスタイルのリアカウル、ドラッグバーハンドルなどを採用。発表当時ホンダは、X4のデザインを「野獣が低く構え、力を溜め込んだ緊張感をイメージ」と表現している。

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ハンドルバーはフラットなドラッグバーだが、上半身はリラックスした感じになる。ステップはほぼ体の中心あたりに位置する。

 

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身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。シート高は730mmと低いが、車幅があるのでかかとが軽く浮く感じになる。

 

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ヘッドライトはマルチリフレクタータイプが採用されている。この車両には純正オプションのスクリーンが取り付けられている。

 

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メーターはタコメーターの方が少し大きい、異径の二眼タイプ。ウインカー以外のインジケーターはメーター内に収められている。

 

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ベントタイプのライザーにドラッグバーを組み合わせることで、リラックスしたポジションが作られている。

 

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油圧式クラッチを採用しているため、ハンドル左側にもマスターシリンダーが存在する。スイッチ類はシンプルなデザインだ。

 

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容量15Lのフューエルタンクの上には、デジタル燃料計と水温計を内蔵したアルミダイキャストカバーが取り付けられている。

 

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シートは大きく段差の付いたタイプで、730mmという低いシート高を生み出している。グラブバーはアルミ製で、シートカウルにビルトインしたデザイン。

 

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ショートデザインのシートカウルに小ぶりなテールランプが組み合わされることで、テール周りのデザインはシャープにまとめられている。

 

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ステップホルダーはアルミ製の大きなもので、タンデムステップのホルダーまで一体となっている。

 

 X4にはCB1000SFをベースとしているものの、ピストン軸間が同一なこと以外は全て新設計となる水冷4ストロークDOHC4バルブ1284ccの直列4気筒エンジンを搭載。最高出力は自主規制値いっぱいの100PS/6500rpm、最大トルクは12.3kgm/5000rpmを発生した。このエンジンは日常使用する機会の多い極低回転域から中回転域で力強い出力特性と、高回転域での伸びを両立させていた。

 

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水冷エンジンながらシリンダーにはフィンが設けられる。CB1000SF用エンジンをベースに、全面的な改良が施されている。

 

 

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最高出力は自主規制によって100PSに抑えられているが、最大トルクは12.3kgmとライバルVmaxのフルパワー仕様より上だ。

 

 

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メッキ仕上げのサイレンサーは、ドラッグマシンのような太く短いデザインで、左右2本出しとなる。

 

 ライバルVmaxは「VMAX1200」として1990年から国内仕様が販売されていたが、Vブーストが外され最高出力97ps/7000rpm、最大トルク11.3kg-m/6000rpmとスペック的にはX4が上回っていた。また、このX4のエンジンは、翌年発表されたCB1300SF(SC40)のベースとなっている。

 

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X4のエンジンとフレームは、1998年にデビューしたCB1300SF(SC40)に受け継がれる。

 

 
 

ロング&ローフォルムを生み出す車体構成

 X4のフレームは、丸型断面と角型断面の鋼管を組み合わせたダブルクレードルタイプで、鋼管の持つしなやかさを活かつつ、剛性をバランスさせることで重厚な操縦フィーリングを生み出している。このフレームもCB1300SF(SC40)のベースとなっており、X4の方が兄となる兄弟車となっている。X4のホイールベースは1650mmと長く、キャスター角も31°とカスタム(アメリカン)系に一般的な設定とされている。ちなみにCB1300SF(SC40)のホイールベースは1545mm、キャスター角は27°である。

 サスペンションはフロントにインナーチューブ径43mmの正立フロントフォーク、リアは630mmという長いアルミスイングアームにツインショックが組み合わされる。ホイールサイズはフロント18インチ、リア17インチで、フロントは3本スポーク、リアはには5.5インチ幅のディッシュホイールが装着される。ブレーキはフロントが310mm径のディスクローターと対向4ポットキャリパーの組み合わせをダブルで装着、リアは276mm径ディスクローターと対向2ポットキャリパーの組み合わせとなる。また、駆動方式にはチェーン式が採用されており、これは他のモデルと異なるポイントでもある。

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フロントフォークは43mm径の正立タイプで、キャスターは31°と寝かされている。フロントホイールのサイズは18インチだ。

 

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ブレーキは310mm径のディスクローターと、4ポットキャリパーの組み合わせ。ゴールドのキャリパーはニッシン製だ。

 

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190mm幅のタイヤと極太のアルミスイングアームが迫力を感じさせる。駆動方式はチェーンとなっている。

 

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リアブレーキは272mm系のディスクローターと2ポットキャリパーの組み合わせ。ホイールは17インチのディッシュタイプだ。

 

 2000年にはより低重心化したローダウンフォルムを採用した「X4 Type LD」をラインナップに加えるなどしたが、販売台数が大きく伸びることなく2003年に生産が停止された。これはメイン市場と見据えていたアメリカでの販売も苦戦したことも関係している。しかし、X4のエンジンは2003年にフルモデルチェンジしたCB1300SF(SC54型)にも基本設計が引き継がれ、25年を超えるロングライフなエンジンとなった。

 

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2000年に発売されたX4 Type LDは、ショーワ製のリザーバータンク付きリアショックを装備。スタンダードよりも10mmシート高が低くなっている。

 

X4主要諸元(1997)

・全長×全幅×全高:2330×745×1140mm

・ホイールベース:1650mm

・シート高:730mm

・車両重量:270kg

・エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒1284cc

・最高出力:100PS/6500rpm

・最大トルク:12.3kgm/5000rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:15L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=120/70-18、R=190/60-17
・価格:89万円(当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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