●写真:小川裕之/カワサキモータース 撮影:東京ドイツ村
ニンジャシリーズは250と400、そして650、1100と充実しているなか、さらに400と650の間に新たな500が滑り込んだ。250㏄ベースの車体に500㏄(451㏄)エンジンが載っているのだ、良いに決まっている。これが示すバイクの世相は??
小さい車体に大きいエンジン
筆者が今まで乗った中で最も「狂ってるぜ…」と思ったエンジンと車体のアンバランスバイクは、TDR50の車体にモトクロッサーの450㏄シングルを無理やり押し込み、さらにNOSを取り付けたカスタムバイクだ。それはそれはとんでもなく過激であり、怖いぐらい、いや明確に怖い速さを持っていた。それでいてたまらないコーフンも感じてしまうのだからバイク乗りというのはヘンな生き物だと思う。
ミニマムな車体にハイパワーなエンジン、そんな組み合わせにはどんなライダーでも興味を持つはずだ。あのTDR改450は極端としても、車体のクラスを超えた大パワーエンジンには惹かれるではないか。
ニンジャにおいては、かつての650ベースの400から250ベースの400になった時にこれが起きた。250の車体に400のエンジン、多くのライダーが夢見るようなバイクであり、特にスキモノやベテラン、玄人に愛されたモデルに思う。そしてこんどはその同じ車体に500(正確には451)㏄エンジンである。ますます夢が更新されたわけだ。とはいえ250㏄の車体に500エンジンが載っていても、この新型ニンジャ500は決して「狂って」はいなかった。
ニンジャ500
Z500
北米ベストセラー
かつて海外市場では多く存在した500や550ではなく、そして53馬力という数値は欧州のA2ライセンス(約47馬力上限)に対応でもない新生ニンジャ(&Z)500はいったいどんな存在なのか。いたずらにニンジャ250をハイパワー化させてやろうという面白半分でもないし、かといって特に日本や欧州では250や400、650もあるだけにニッチなマーケットを想像してしまう。
メインターゲットは北米とのこと。しかも去年、北米マーケットにおいてカワサキラインナップの中で最も売れたのがこの500だというのだから、日本では少々ニッチに思える存在でもアチラでは大ヒットのベストセラーということである。
ちなみに北米のラインナップは300、この500、650、1100となるため、250、400と排気量を刻んでいる日本のラインナップに比べると500の存在感もよりナチュラルに感じられるのは事実。A2ライセンスも400㏄縛りの普通自動二輪免許制度もない地域においては、ちょうどいい実用的スポーツバイクとして広く受け入れられているというわけだ。
恩恵しかない排気量拡大
走らせるとこれがとっても良い。当たり前だがサイズ感が完全に250であり、気負わずに走り出せる感覚はとても大型二輪免許が必要なバイクとは思えない。ポジションはカウルの着いたニンジャの方でかなりアップライト。ハンドルはクリップオンでありながら高さも垂れ角もありかなり余裕がある。意外にもバーハンドルのZの方が垂れ角が少ないためハンドルは遠く感じ、若干ではあるが前傾が深い。
ステップの位置は特にスポーティにバックステップということではなく、ナチュラルな位置がリラックスした姿勢を提供してくれるとともに、足をつくときに邪魔にならないよう考慮されているという。正立フォーク、シングルディスク、シンプルなメーター。視界に入る全てが250と同じ感覚であり、気構えせずに走り出すことができた。
※モデルは身長170cm/体重70kg。着用ジャケットは「カワサキ×IXON M-Night WP A」詳細はコチラから
とはいえ500㏄もあるわけでしょう? ……ということもないのが不思議だ。低回転域でのスロットルに対する忠実さ、繋がる所がわかりやすいクラッチ、全体的な軽さやいい意味での実用車感のようなものが排気量を忘れさせてくれ、低速域では本当に250と同じ感覚で扱える。ただやはりエンジンには絶対的な余裕があり、250に対してはもちろん、400に対してもトルクが豊富。しかもトルク感がまろやかで、ガツガツしたスロットルレスポンスやガチャガチャした低回転とかそういったことは皆無。常にスムーズで意のまま、全てがプラスの方向に働いているのだ。
例えば信号からの発進では頼もしいトルクで意のままに加速できるし、Uターンのような低速域でもトコトコと粘ってくれてありがたい。回転数を上げていけば右肩上がりにパワーが増す感覚は400に近いものがあるが、400に輪をかけて太さ、速さがあり、「小さな車体に大パワー!」の醍醐味を炸裂させる。
400に対して何か別の性格が与えられたということはない。あくまでこれはニンジャ400を451㏄にしたもの、というだけであり、コンセプトは全く同じなのだ。そんな素朴なバイクだからこそ北米では様々なライダー層に広く受け入れられてベストセラーになったのだろう。
何とかなるぶっきらぼうさ
試乗当日はZ1100やZ900RSといったよりプレミアムで大排気量、重量級のモデルにも乗っていたため、ニンジャ500はとても小さく、その車体は場面によって頼りなくさえ感じることもあった。ただワインディングに繰り出すと大排気量に比べると頼りないと感じていた軽量な車体は、頼りないのではなく意のままなのだと理解する。軽量ゆえ、スリムゆえ、鋭く走らせられるしスポーツ心もくすぐられる。北米でこれを買ってサーキット走行に興じている人も多いだろうな、などと想像したほどだ。
この軽さと、路面を捉えてくれるしなやかな車体はとても魅力的。400の時点で日本の公道においては特にジャストフィットなのではないかと思っていたが、トルクに余裕のある500ではなおさらであり、かなりいい気になって走り回ってしまった。
同時に乗ったZ1100やZ900RSに比べると路面のギャップなどで弾かれるようなこともあり、そういう場面では大排気量の重量や高級サスペンションがもたらすしっとり感はないな、と思わせられたりもしたが、しかし弾かれたところでそれがどうってことはないのだ。車体がブルッと震えてもそんなものはすぐに収束するし、車体の軽さとキュッとニーグリップできる余裕によって、そんなぶっきらぼうな反応が起きたってライダーは余裕そのもの。何とでもなる感がとても高いし、それこそ「バイクを操っている感」が高まる要素でもある。
ニンジャとZ
カウル付きとカウルなし&バーハンを交互に乗り比べたところ、2台にはほとんど差がないという結論に達した。車体ディメンションはキャスター角がほんのわずかに違う以外ギアレシオやタイヤサイズなどまで全く同じ。違いといえばカウルがないぶんZのほうが4㎏程軽くなっているぐらいだろうか。
ただ直接乗り比べるとわずかな違いはあった。ニンジャの方はカウルがついている分フロント周りに落ち着きがあるため、ワインディングでフロントの接地感がつかみやすい。またハンドルに適度な垂れ角があるため、小指をひっかけておいてクックッとハンドルへの入力によるコーナリングのきっかけ作りもしやすいし、ふとした外乱への対応もしやすかった。
対するZはハンドルの両端が上がっているフラットに近い形状。肘を張って乗るようなストリートファイタースタイルで、先に書いた「ぶっきらぼうさ」のようなものはこちらの方が高いかもしれない。コーナー中もニンジャの方は車体と一体になってスムーズにこなすのに対し、Zはフロントをライダーがグイッと抑え込んで「言うことを聞かす」ような走りになっていた。カウルがないことによるフロント周りの軽さもこういったイメージを強めているだろう。よりナチュラルなのはニンジャの方に思えたが、Zの方はストリートファイター的なアグレッシブさを楽しむという意味ではより個性的だ。
車検/免許度外視ならベストチョイス
2台にわずかな違いはあったものの、2台とも「250クラスの車体に500㏄エンジン」というその芯にある魅力は同様。ライダー誰もが憧れる「軽量ハイパワー」を実現しており、さらにベーシックな車体こそが走らせる悦びを強化している。
ニンジャ250は車検がないスタンダードスポーツとして魅力的だ。そして400も普通自動二輪枠で乗れる魅力的なオールラウンドスポーツバイク。ただそういった枠組みを忘れたとき、もっとも惹かれるのはこの500に思う。カワサキ関係者は「500には500にしかないハッピーがあるんです」と言っていたが、考えてみるとこの車体にはこの500こそがベストマッチ、ここがこのシリーズのゴールだった気さえする。なお650と比べると軽さやコンパクトさも武器であり、そこにも明確な違いがある。
近年では各社ともに免許枠にとらわれない魅力的な選択肢を提供してくれているが、今回カワサキはそんなトレンドに乗っかった形だ。これはもしかしたらメーカー側が、バイクを趣味として楽しもうという人は、もう当たり前に大型自動二輪免許を取得するという前提で考えているのかもしれない。そして大型自動二輪免許が当たり前になったのなら、いわゆる「排気量マウント」ではなく、むしろ「本当に楽しめる乗り物」あるいは排気量にかかわらず「等身大のバイク」を選ぶ層も増えると見込んでいるようにも思う。
現在の日本市場においてはニッチな存在になりそうなニンジャ・Z500ではあるが、広く誰にでも薦められる良車である。一台欲しいぐらいだ。
ニンジャ500/Z500ディテールチェック
ニンジャ500

ZX-6Rと同様のヘッドライトがニンジャファミリーをアピール。ロービームはコンパクトなモノフォーカスLEDで、ハイビームはヘッドライト内部の非点灯部分を暗く見せるブラックリフレクター式を採用。精悍な表情を追求する。

φ41㎜の正立フォークにφ310㎜シングルディスク、ピンスライドキャリパーとはとてもベーシックな構成である。ただそれが素晴らしく機能するのだからむしろバイクはこれぐらいシンプルでいいじゃないかという気になる。なお5本スポークの軽量ホイールはレースからのフィードバックもある縦剛性を高めたものでコーナリング性能を高めている。ブレーキタッチは初期の無効ストロークを極力減らしているし、軽量ハイグリップなラジアルタイヤも採用するなど、ベーシックな構成の中にも細かな煮詰めが行われているのだ。

クリップオンハンドルとはなるものの、その位置は高くまた垂れ角もあるためライダーの小指は意外と手前に来る。結果としてZよりもリラックスしたライディングポジションを実現するとともに、バイクとの一体感はニンジャの方が上だ。メーターはフルLCDで十分な情報量。加えて専用のアプリ「RIDEOLOGY THE APP」も搭載する。

ボア径70.0㎜はそのままに、ストロークを400の51.8㎜から58.6へと伸ばすことで排気量は451㏄に。パワーは48馬力から53馬力へ向上している。ただその性格は400と同様で低回転域、常用速度域でもとても扱いやすい。なお最大トルク発生回転数は400の8000RPMから7100RPMへと引き下げられており、そういう意味では500の方がさらに扱いやすい場面もある。なおカウルはラジエーターからの排熱性も考えられており、たとえ渋滞中などの停車時に冷却ファンが回ったとしても、ライダーから熱を極力遠ざける設計とされる。
Z500

Zシリーズらしい凄みデザインを効かせているフロントマスクはZ7ハイブリッドでも採用されているトリプルLEDヘッドライトを配置。上側2灯がロービーム、下側1灯がハイビームという構成で、コンパクトながら優れた照射性能を確保する。

ネイキッド版ということでエンジンはもちろん、トレリスフレームや曲線を描くエキパイを積極的に見せるデザインを採用。ボディワークはエンジンの上に浮かぶように配置させたという。フレームをゴールドとしたのも個性的だ。

バータイプとなるZのハンドルはかなりフラットな形状で、バーエンドはむしろニンジャよりもライダーから遠く、必然的に弱前傾に、また肘を開いたようなストリートファイタースタイルで乗ることになる。ニンジャのカウルマウントとは違いミラーはハンドルマウントとなっているが、振動対策をして後方視界のクリアさを追求している。なおバーハンドルをもう少し絞り角、垂れ角のあるものに変更すればニンジャと同様なキャラクターにもなりそうだな、などとも思った。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/549612/
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