チャイルドシートは後部座席に付けるのが基本なのだが、助手席に取り付ける人が筆者の身の回りに多く、驚いている。気持ちは分からなくもないが、助手席にチャイルドシートを載せると、子供の安全が守れないこともあるのだ。特に乳児を乗せるケースを中心に、チャイルドシートの取付位置を考えていきたい。
文:佐々木 亘/写真:Adobe Stock(メイン画像=Evgeniy Kalinovskiy)、トヨタ
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チャイルドシートについて規定している道路交通法71条の3の3では「自動車の運転者は、幼児用補助装置(チャイルドシート)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。」と規定されているのだが、法律のどこを探しても設置場所に関する規定は載っていない。
つまり、法律上はチャイルドシートをどこのシートに取り付けてもいいということになる。しかし、チャイルドシートメーカーや自動車メーカーは、後部座席への設置を推奨しているのだ。
特にチャイルドシートの中でも乳幼児(特に乳児)が使用するタイプのものは、必ず後部座席に付けてほしいと筆者は思っている。取付方法を確認すれば分かることだが、現在の最新安全基準であるR129では、生後15か月まで(15か月を経過しても身長76cm未満まで)は、チャイルドシートの前向き装着は不可としているからだ。
乳児の場合は、すべからく後ろ向きにチャイルドシートを取り付ける必要がある。この場合、エアバッグが背中側から膨らんでくる助手席は、チャイルドシートの設置場所には適さない。エアバッグの展開で、チャイルドシートが弾き飛ばされる危険があるためだ。
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メーカー推奨は分かるのだが、乳児期に親が運転し、子がひとりでクルマに乗らなければならない場合、親としては自身の目の届かない後部座席よりも、運転者の隣(助手席)に我が子を置いておきたい気持ちもよくわかる。
筆者も、後部座席に乗せた子供が泣き出し、いたたまれない気持ちで「あと少し」と思いながら、目的地まで運転を続けることが現在進行形で発生している。隣に我が子がいれば、どれだけ良いかと思うことも多い。
そんな状況があるからこそ、助手席にチャイルドシートを付けなければならないケースもあることを加味しながら、安全と親の気持ちに折り合いをつけなければならないだろう。
ただし、エアバッグが展開する助手席は、後ろ向きにチャイルドシートを載せるには非常に危険な場所という認識は捨てずにいてほしい。それを踏まえて、助手席にチャイルドシートを載せるなら、次の条件を満たす必要がある。
まずは正しく固定できるものであること。助手席シートには昨今のチャイルドシート取り付けで多く使われるISOFIXに対応していないものが多い。すなわち、シートの固定方法は昔ながらのシートベルト式だ。まずは、これを使えるチャイルドシートを選んでほしい。
次にエアバッグとの干渉が懸念されるため、チャイルドシートは最悪でも前向きに取り付ける必要がある。それでも万が一の際には、エアバッグと子供がぶつかるケースも考えられるだろう。助手席シートは一番後ろまでスライドし、できるだけダッシュボードとチャイルドシートとの距離を確保することが必要だ。
最後に、安全運転を行うこと。これが最も大変かもしれない。助手席で泣き出す子供に気を取られ、目を奪われた結果追突事故を起こすということも大いに考えられる。運転しながら子供のお世話をすることはできない。気になって安全運転に支障が出るというなら、ぐずっても手を下せない後部座席に乗せる方が、何倍も安全に目的地へたどり着く。
重ね重ねになるが、安全面を考えても、各メーカーが推奨するのも、チャイルドシートの後部座席への着用であることは忘れてはいけない。助手席に取り付けるのは、本当にやむを得ない場合のみだ。
子供が不快でぐずっても、命まで取られることは少ない。子供とクルマに乗る時には、真っ先に命の安全を優先するのが親の務めであろう。
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