ホンダが「量産バイク史上最速」を目指し開発した「CBR1100XX Super Blackbird」は、その役割を見事に果たした

ホンダが「量産バイク史上最速」を目指し開発した「CBR1100XX Super Blackbird」は、その役割を見事に果たした

 バイクが最高速度を競った1990年代、ホンダは明確に「量産バイク史上最速」を狙った「CBR1100XX Super Blackbird」を1996年に発売した。最高速度300km/hオーバーを目指して生み出されたこのバイクには、当時のホンダが持つあらゆる技術が投入されていた。

 
文/後藤秀之
 

1990年代、バイクは最高速を競い合っていた

 1990年代、バイクは排気ガス規制の影響をほとんど受けることなく、その性能を追求し続けていた。その性能の証明方法のひとつは最高速度であり、ホンダのCB750Fourや川崎の900 Super Four(Z1)が200km/h、その後スズキのGSX1100S KATANAが218km/h、カワサキのGPZ900Rが250km/hと各メーカーのフラッグシップモデルがしのぎを削った。

 1990年カワサキが発売したZZ-R1100(ZX-11)のスピードメーターは、320km/hまで刻まれていた。実際の最高速チャレンジでは残念ながらストックでは300km/hを超えることがなかったが、バイクの最高速度に300km/hを初めて意識したモデルとなった。筆者は当時C型のZZ-R1100に乗っていたのだが、実際に250km/hくらいは割と簡単に出てしまう恐ろしいバイクであった。ZZ-RはC型からD型へと進化し、世界最速のバイクの地位を守っていた。



1990年に発売されたカワサキの「ZZ-R1100」は、1993年にD型へと進化。メーターは320km/hまで刻まれていたが、実測では300km/hに届かなかった。

 1996年、満を持してホンダから対ZZ-Rウエポンとも言えるバイクが発表された。「CBR1100XX Super Blackbird」と名付けられたそのバイクは、300km/hの壁を越えるべく当時のホンダが持つ様々な技術を投入したモデルであった。このXXの先代に当たる「CBR1000F」も海外仕様では250km/h以上の最高速度を誇っていたが、ZZ-Rの290km/h以上の走行速度を超えることがXXに課せられた使命だったと考えて良いだろう。



「量産バイク史上最速」を狙って開発された「CBR1100XXSuper Blackbird」は、デザイン的にも新しいチャレンジがされたモデルであった。



新設計の車体に新設計のエンジンを搭載したXXは、各部にホンダの最新技術を投入。その最高速度は300km/hを超えるに至った。

 もちろんホンダは何もしていなかった訳ではなく、1991年に乾燥重量185kgの車体に124PSを発生する893ccエンジンを搭載した「CBR900RR FireBlade」を発表、このバイクは現在のSS(スーパースポーツ)の元祖と言えた。

 
 
 

「量産バイク史上最速」こそがこのバイクの本質

 「CBR1100XX Super Blackbird」はいわゆる「メガスポーツツアラー」と現在では呼ばれている種類のバイクであり、先代モデルである「CBR1000F」から車体やエンジンなど全てが新設計されていた。

 XXの開発においてホンダは、いかなる速度域でも、いかなるエンジン回転域でも豪快で充分なパワーを発揮できる「絶対的な動力性能」、大排気量車でありながらも、軽快なハンドリング特性と、高い操縦安定性を実現する「機動力の高いシャープなハンドリング」、世界最高性能を快適に楽しめる「優れた居住性」という3つの軸を中心に開発を行なったという。

 そして、具体的な開発においては、世界最高性能のスーパースポーツにふさわしいバイクとして、次の10項目を開発目標として設定している。

1.空力性能と動力性能の高さが瞬時に感じられるデザインを持つこと
2.感動を呼ぶ加速性能を有すること
3.高速クルージングでもスムーズかつ安定したコントロール性を有すること
4.ミドルクラスマシンに匹敵するシャープかつコントローラブルなハンドリング特性を有すること
5.先進のDual Combined Brake Systemを採用し、高速走行性能に必要十分かつコントロールしやすいブレーキシステムを有すること
6.新開発のデュアル・シャフト・バランサーを採用し、どの回転域でも上質な振動フィーリングとすること
7.絶妙のウインドコントロールによって、高速走行時の卓越した快適性を有すること
8.使うほどに、走り込むほどに誇りが持て愛着の湧く造り込みをしていること
9.夜間走行においても最大限の視界を確保し、高い安心感が得られる灯火系を有すること

 そして、10番目には「量産バイク史上最速であること」という、おそらくはこのバイク最大の開発目標が掲げられていた。



身長171cm、体重65kgのライダーが跨った状態。ハンドルは思っているよりも低く、上半身が自然にカウルの恩恵を受けられる設定。



両足を着くと、かかとがかなり浮く感じになるが、片足であればしっかり着地するので不安感はない。



ヘッドライトは“ピック・ア・バック”スタイルと呼ばれる新形状のデュアルタイプで、フロントカウルと完全にフラッシュサーフェス化されている。



カウルの先端に設けられたエアインテークがエアを取り込み、空気圧を上昇させてエンジンの吸気効率を格段に向上させダイレクト・エア・インダクション・システムを搭載。



フロントのミラーにはウインカーがビルトインされており、空気抵抗の低減と最高速の向上に寄与すると共に視認性も向上させている。



ブラック地+ホワイトの文字のタコメーターを中央に置き、その両側に大型LCDを設置した当時としては先進的なデザインを採用したコクピット。



クラッチは油圧式を採用。スイッチ類はシンプルにまとめられており、国内仕様はクロームメッキ仕上げのグリップエンドが採用されている。



ハンドル右側にはハザードランプのスイッチが取り付けられている。輸出モデルの場合、この場所にヘッドライトのスイッチが取り付けられている。

 
 

新設計のパワーユニットは最高出力164PSを発揮

 「CBR1100XX Super Blackbird」に搭載されたエンジンは、アッパークランクケース/シリンダーブロック一体型デザインを採用して新設計されたもの。この4ストロークDOHC16バルブ直列4気筒1137ccエンジンは、最高出力164PS/10000rpm、最大トルク12.7kg-m/7250rpmという当時としては世界最高の性能を発揮するに至った。

 このエンジンのボア×ストロークは79×58mmで、シリンダー部にはオープンデッキ・シリンダーブロック一体鋳造技術を採用。シリンダースリーブおよびボアピッチを極限まで詰めるなどすることで軽量でコンパクトに仕上げられている。エンジン単体での重量はCBR1000Fと比較して約10kg軽量化され、スーパースポーツモデルとしては初めてデュアルシャフト・バランサー採用していた。



エンジンは当時最先端と言えたアッパークランクケース/シリンダーブロック一体型デザインを採用し、コンパクトに仕上げられた。

 初期モデルには42mm径の傾斜型フラットスライドCV型キャブレターを採用し、点火には3次元マップタイプ点火システムが採用されていた。1999年には発売された2型ではダイレクト・エア・インダクションシステムと電子制御燃料噴射システム(PGM-Fi)を採用。最高出力は164PSと変わらなかったが、発生回転数が9500rpmへと若干ではあるが引き下げられた。

 2001年に登場した3型からはユーロ2排出ガス規制に対応したことで最高出力が152PSへとダウン、100PSに規制された国内仕様も設定されている。今回撮影させていただいたのはこの3型の国内仕様であり、車名としてはペットネーム無しの「CBR1100XX」となる。



輸出仕様は最高出力164PS/10000rpmであったが、2001年に導入された国内仕様は自主規制に合わせて100PS/8500rpmにデチューンされていた。



燃料タンクはデザインは変更されていないが、フューエルインジェクション化された2型以降は22Lから24Lへと容量が増えている。



シートは前後にしっかりとし段差があるが、スムーズな印象を受けるデザイン。長距離ライドも考慮し、適切な硬さと厚みを持つ。



特徴的なデザインのテールライトは“デュアル・エレメント”テールライトと呼ばれ、ヘッドライトと同様に2個の電球を上下にレイアウトしている。



エキゾーストパイプはステンレス製の4-2-1-2集合タイプで、表面はバフ仕上げで美しく仕上げられている。

フレーム、サスペンション、ブレーキ。その全てに新技術を投入

 フレームにはCBR900RRで得られたノウハウが注ぎ込まれ、軽量化と高剛性をバランスさせたダイヤモンド形状の新設計されたアルミ・ツインチューブフレームを採用。コンパクトなエンジンとこのフレームの組み合わせにより、マスの集中化とミドルクラスマシンに匹敵するハンドリング特性を実現し、高速安定性と合わせてあらゆる速度域で優れたレスポンスを発揮し、コントロール性にも優れた車体に仕上げられている。また乾燥重量は223kgとCBR1000Fと比較して26kgの軽量化を果たしている。

 フロントサスペンションはコンベンショナルな正立タイプフロントフォークだが、調整を行なわなくても路面状況に応じて常に最適な減衰力を発揮するH.M.A.S.(ホンダ・マルチ・アクション・サスペンション)を採用することで、世界最高性能にふさわしい安心感のあるハンドリングが実現。リアサスペンションは縮み側の減衰力が無段階で調整可能なH.M.A.S.リアダンパーと、目の字断面押出成形アルミ製チューブを採用した新設計のスイングアームを組み合わせる。



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