2024年11月に日本デビューした4代目BMW X3。今回テリーさんには、X3のM50 xDriveに試乗していただいた。改めてBMWの真髄を味わいつつ、何やら思うところあったテリーさん、今回は「クルマの大きさ」についてモノ申したい!?
※本稿は2025年4月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、BMW ほか
初出:『ベストカー』2025年5月26日号
BMWの走りはやはり素晴らしい!
3シリーズといえばBMWを代表するモデルだが、今はセダンよりもX3が主流になっているのかもしれない。セダンはスーツのイメージだが、昔と違って今はもうデートにスーツを着ていく人は少ない。だからSUVが人気になる。クルマとファッションはよく似ているのだ。
クラウンが生まれ変わって話題になったが、BMW3シリーズがセダンよりSUVが主流になるのは、クラウンと同等以上の変化ではないだろうか。久しぶりにX3に乗ってつくづくそう感じたしだいである。
今回乗ったX3のエンジンは直6、3Lターボのマイルドハイブリッドで、システム出力は398ps/59.1kgmという凄い数値となっている。
走りはかなりハードだ。動き出した瞬間に「緻密な工業製品」を感じさせるのはBMW共通の乗り味で、X3もその印象がまずくる。
しかも、M50という最強グレードということもあって、緻密さを超えた獰猛さが伝わってくる。街なかをゆっくりと走っているだけでもタダモノではない感があふれていて、ノーマルモードが普通のスポーツモードのような走りを見せるのだ。
スピーカーから流れてくるエンジン音も賑やかで、モードによって音も変わる。擬似音と言ってしまえばそれまでだが、厳しい音量規制に対応しながら楽しさを演出する立派な技術だ。
エンジンのリアルな音だけでなく、F1マシンの音やジェット機の音など、できることはいくらでもある。それも今後のクルマの楽しみになるのかもしれない。
それにしても、BMWの走りはやはり素晴らしく、工業製品としてとても優れていることがわかる。ドイツ車がほかの国のクルマとは一線を画していることは明らか。
ただし、その価値を求める人が昔より減ってきているのも確かで、ドイツ車も新しい価値を見つけるべき時期にきているのではないだろうか。
ロールスロイスがやるしかない!
BMW X3は代を重ねるごとに大きくなって、今回の試乗車は全長4755mm、全幅1920mm。3シリーズクラスで全幅が1900mm超というのは驚きだ。クルマはいったいどこまで大きくなるのだろうか。
私の知り合いで「買いたいクルマがない」という人が何人かいる。予算はあるが、高いクルマは大きいサイズばかりで手に余る。だからといって小さなクルマは庶民的すぎて面白くないというわけだ。そんな彼らは消去法でBMWミニやノートオーラを買っている。今、小さな高級車に需要があるのは明確なのだ。
自動車業界は「大きいものは高い」「小さいものは安い」という図式をこれからも続けるつもりだろうか。
もちろん、多くのメーカーが小さな高級車にチャレンジして失敗してきた歴史は知っている。しかし、それが今挑戦しない理由にはならない。少なくともBMW X3が全幅1920mmまで肥大化しているのに、そこに問題意識を持たないのは時代遅れではないだろうか。
小さな高級車を作り、成功させられるメーカーはロールスロイスかベントレーしかない。もしもロールスロイスがBMWの小型車のプラットフォームを使って2000万円クラスの小さな高級車を作ったらどうなるか(ロールスロイスはBMW傘下なので、あながち不可能な話でもない)。
トヨタやBMWではダメでも、ロールスなら一瞬で価値観が変わる可能性がある。それがブランドというものだ。
ロールスロイスが小さな高級車に風穴を開けてくれれば、他の高級車メーカーも後に続きやすいだろう。つまり「常識を変える」ということである。
こんなふうにBMW X3はいろんなことを考えさせられるクルマだった。しかし、それとは別に、走りが最高だったことは強調しておきたい。
BMW X3 M50 xDrive
2024年11月に日本に導入された4代目。M50 xDriveは全長4755×全幅1920×全高1660mm、ホイールベース2865mm、車重2000kg。
直6、3Lターボ+48Vマイルドハイブリッドを搭載し、システム出力398ps/59.1kgmを発揮する。WLTCモードは11.9km/Lだ。このほか、2Lのガソリンターボ(798万円)とディーゼルターボ(858万円)もある。



























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