2025年1月の東京オートサロンで発表されていたヒョンデ インスターがとうとう日本での販売を開始した。日本の軽自動車よりも若干大きいというコンパクトなボディサイズに、日本のBEVが驚くほどの圧倒的なコスパを持っていた!!
※本稿は2025年5月のものです
文:清水草一/写真:池之平昌信
初出:『ベストカー』2025年6月10日号
ご近所の足としてはもちろん長距離走行もこなせるBEV
ヒョンデ インスターのコスパはスゲエ。一充電あたりの航続距離(458km)を価格(中間グレードのボヤージュで335万円)で割ると、日本で売られているBEVのトップに来る。
ライバルは日産 サクラだが、単純なコスパは約2倍! 航続距離は2.5倍! BEVはおおむねコスパで決まる。この時点でインスターの勝利は確定だが、実際見て、乗ってどうなのか。
んん、まあまあでした。
見た目はだいぶオモチャっぽく仕上げてある。それが狙いなのだろうが、ちょっと安っぽく感じられるのは気になる。内装も同様だ。
この点に関しては、軽ながら軽離れした上質さを持つサクラの勝ちか。もちろん「フィアット パンダっぽくて好き」といった声もあるだろう。
走りは、しっかりBEVだ。つまりトルク満点で実用加速に優れ、重心が低いので安定している。
モーターの最大トルクは15.0kgm。サクラの19.9kgmに比べるとやや低い。サクラより300kgほど重いせいもあり、速いという感じはないが、速さでBEVを選ぶ人は最初からこのへんは狙わないだろうし、「これでも充分速い」と言っておこう。
足回りはやや硬めで、BEVとしては静粛性が低め(ロードノイズが入りやすい)。日本仕様は首都高などのジョイントに対応して、足をソフトに仕上げたというが、若干粗削りに感じた。
でも、主な用途がご近所の足ならまったく問題なし。むろん長距離だってイケる。条件が悪くても300kmは走るだろう。急速充電速度はサクラの数倍だ。
逆に言うと、サクラの航続距離(180km)や急速充電性能(最大30kW)が悲しく思えてくる。実質的には100kmちょい走ったらもうドキドキする。国産BEVの悲哀ですね。
インスターにも弱点はある。それは、軽クラスだけど軽じゃないこと。ベースは韓国の軽車(キョンチャ)だが、規格が日本の軽より大きい。もうひとつは、BYDが日本の軽規格に合わせたBEVを開発中らしいこと。本当なら、物凄いコスパになりそうだ。
それでも現時点では、インスターのコスパはトップ。このクルマ、欧州では500万円くらいで売られている。それが335万円(中間グレードのボヤージュ)!
韓国本国でちょうど300万円なので、超バーゲン価格だ。ヒョンデ・ジャパンがインスターに社運を賭けているのをひしひし感じた。
●ヒョンデ インスター 主要諸元
・グレード:Voyage
・駆動方式:FF
・全長×全幅×全高:3830×1610×1615mm
・ホイールベース:2580mm
・パワーユニット:モーター
・モーター最高出力:85kW(115ps)
・モーター最大トルク:147Nm(15.0kgm)
・一充電航続距離:458km
・総電力量:49kWh
・車両価格:335万5000円

























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