毎年WRCのSSが開催され、モータースポーツファンにもなじみのある岐阜県恵那市は6月14日「エナサステナブルモビリティデイ」を開催し、総合商社兼松株式会社とサステナブル燃料に関する協定を結んだ。具体的にはWRCでも使われているP1燃料の技術を使い、恵那市内でサステナブル燃料を作ろうという取り組みだ。内燃エンジン生き残りに向け恵那市に希望の灯がともされた
文・写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】次世代燃料でドリフト!? 衝撃の姿がコレだ(7枚)画像ギャラリー今注目されるサステナブル燃料とは何か?
内燃エンジンが生き残るためのカギと言われるのが、燃焼時にCO2を排出しないサステナブル燃料だ。サステナブル燃料は非化石の燃料を指し、大きく分けてのバイオ燃料とグリーン水素とCO2を合成する合成燃料、そしてSAF(航空燃料)がある。
このうちバイオ燃料は植物や食品廃棄物、農業廃棄物由来で食糧作物を使えば、食糧価格の高騰を引き起こすデメリットがあるため、現在は非食品ベースの原料を使う第2世代バイオマスが主流になりつつある。
そして近年注目されているのが合成燃料だ。合成燃料にもさまざまなものがあるが、今回恵那市と兼松が考えているのはグリーン水素とCO2から製造したeメタノールと第2世代バイオマス由来のメタノールをブレンドしたメタノールの合成燃料だ。
メタノールはアルコールの一種で揮発性が高く、エネルギー密度はガソリンよりも低いが、オクタン価が高く、燃焼すると水とCO2が排出されるが、硫黄酸化物や窒素酸化物の排出は少ないとされる。
CO2が発生するといってもメタノールを合成する際、再生エネルギーで作ったグリーン水素と大気中のCO2を合成させるため化石燃料に比べてCO2を大幅に削減できる。
現在兼松が扱うサステナブル燃料、P1には3つの特徴がある。①CO2を約80%削減できること②エンジンや車両の調整が不要なドロップイン燃料であること③累計4000台に加え、北極から砂漠まで世界の極地を含む20万キロの走行実績があることだ。
P1は現在ドイツで製造されており、WRCにも使われている。この技術を生かし恵那で合成燃料を作ろうというのが今回の協定の内容だ。
なおこれまで報道された通り、P1フューエルズはドイツで破産手続き中だが、技術力は抜きん出ており、支援企業の力を借りて再建中とのこと。兼松との提携にも問題はないという。
小型モジュールを使っての生産で「地産地消」を目指す
合成燃料を作るとなると、大きなプラントが必要だと思ってしまうが、P1燃料の製造はコンテナ大にモジュール化されたものを使うため、コンパクトなのが特徴。
「来年あたりから整備を始め、まずはモータースポーツで使ってもらえるようにしたい」と小坂喬峰恵那市長は話す。自らモータースポーツの経験もあり、「子どもたちにエンジン車の持つ楽しさを味わってほしい。それが我々大人の務め」とも話す。
協定の締結式には自民党の「内燃機関活用のための次世代燃料を推進する議員連盟」会長でクルマが大好きな古屋圭司氏や経済産業省自動車課の室長さん、経済産業省資源エネルギー庁の課長さんが出席するなど、注目度の高さが感じられた。
古屋議員はいたずらなEV化は産業の空洞化を招くと指摘し、内燃機関がサステナブル燃料によって生き残ることができることを恵那から世界に発信できるチャンスだと話されたが、その通りだと思う。余談だが古屋議員とは今気になっているというSTI S210の話で大いに盛り上がった。
そして経済産業省のお二人は、国内でサステナブル燃料を製造することはエネルギー安全保障の点でも重要だという。
また内燃機関を生き残らせるだけでなく、ガソリンスタンドというインフラを活用できる点でも液体燃料として使える意義は大きいとのことだ。
ガソリンスタンドは地震や台風による水害など災害時に復旧の拠点となっている。現在稼働中の3万カ所のガソリンスタンドのうち約半数が自家発電設備を持ち、停電時も営業が可能だというから、このガソリンスタンドを今後も維持していくことは、国民にとっても大きなメリットがあるのだ。
さらにこのお二人、「役人」というイメージはなく、率直に疑問に答えていただいたのが印象的。クルマが大好きということで、こんな方がエネルギー政策を立案していらっしゃるなら何とも頼もしいと思った。
午後からは恵那市民の皆さんを呼んでP1燃料を入れたラリー車の同乗走行デモランが行われ、豪快なドリフト走行に大きな歓声も上がり、大いに盛り上がった。
ちなみにドライバーに聞いてみると「若干レスポンスがよくなり、少し燃費は落ちるような印象です」とのこと。オクタン価が高くエネルギー密度が低いという影響だろうが、同乗しているぶんには振動や排気音を含めまったくネガは感じなかった。
ただネックはガソリンに比べると10~20倍という価格だが、国内で製造され、消費が拡大されれば価格は圧縮できるはず。さらに内燃エンジンの愛車に乗り続けることができるなら、多少高くてもサステナブル燃料で乗り続けたいというクルマ好きは多いはずだ。
恵那市がモデルケースになり、全国にサステナブル燃料製造の動きが広がっていくことを期待したい。
【画像ギャラリー】次世代燃料でドリフト!? 衝撃の姿がコレだ(7枚)画像ギャラリー











コメント
コメントの使い方