間違いなくMT天国だ!! GR86が教えてくれたMTの味って? 乗って楽しいマニュアル車4選

間違いなくMT天国だ!! GR86が教えてくれたMTの味って? 乗って楽しいマニュアル車4選

 いまや国内でのMT車の販売比率は1%台。しかしMTを設定している日本車は乗用車だけで27車種もあったりする。意外と多いと思いませんか? そう、実は日本はMT天国だったのだ。その幸せを噛み締めながら、改めてMTの魅力に迫る。

※本稿は2025年5月のものです
文:ベストカー編集部/写真:奥隅圭之、日産、トヨタ、マツダ、スズキ
初出:『ベストカー』2025年6月26日号

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「久々のMTドライブは我ながらヘタだった」(飯干俊作)

右からフェアレディZ、スイフト、GR86、マツダ3で全部3ペダルMT車。それぞれの個性、乗り味の違いを確認しながら、MTの楽しさを存分に味わった
右からフェアレディZ、スイフト、GR86、マツダ3で全部3ペダルMT車。それぞれの個性、乗り味の違いを確認しながら、MTの楽しさを存分に味わった

 MT車が当たり前の時代に育っているから経験は豊富。でも、久しぶりだと少しギクシャクしてしまう。GR86を借りて走り始めた時、「同乗者がいなくてよかった」と思った。

 我ながらヘタなのだ。さすがにエンストはしないが、シフトアップがスムーズにいかないし、シフトダウンの回転合わせもタイミングが少しズレる。

 これがもしも若手時代で、怖い先輩を隣に乗せていたら、とんでもないことになっていた。「おまえヘタだね〜。マニュアル運転したことあんの?」

 ハラスメントって何? うまいの? という時代だったから、そのくらいのことは確実に言われていただろう。でも、本当にヘタなのだから返す言葉もない。

 実際は、自分は若手ではなく定年間近の60歳で、その歳にもなれば「ヘタだね〜」とイジってくれる人もほぼいなくなっているわけだが、しばらくそんなギクシャク走行が続いた。

 あとで気づいたのだが、GR86は久しぶりにMTに乗る運転者には本格スポーツすぎたのだ。エンジンのレスポンスが抜群にいいから回転を合わせるのが難しい。今回登場するほかの3車ではGR86ほど気を使わなくても普通に運転できたから、つまり、一発目に最もハードルが高いクルマに乗ったということだったのだろう。

 これ、間違ってもGR86批判ではなく、逆である。最近はMT車でも運転がラクで身構えずに乗れるクルマが多いなか、GR86は違う。もしも同乗者がいたら、ヘタだと思われないよう神経を使って運転するし、同乗者がいなくてもうまく操作できた、できないで一喜一憂する。

 これこそMTの醍醐味で、GR86はそれを存分に味わわせてくれるクルマということなのだ。

 経験上わかるのは、GR86は細かいことを考えずにサーキットなどで思い切り走らせれば、逆にスムーズに走らせられるだろうということだ。ゆっくり走らせるのが難しい。逆説的だが、だからこそ運転が楽しいのである。

 クルマ好き、運転好き、MT好きにはこの気持ちがわかってもらえると思う。逆にいえば、そうでない人にはまったく理解されないだろうが、誰に迷惑をかけているわけでもなし、「奇特な人もいるもんだ」とスルーしていただければありがたい。

日本は間違いなくMT天国なのだ

MTはそのクルマのポテンシャルとキャラクターをダイレクトに伝えてくれる
MTはそのクルマのポテンシャルとキャラクターをダイレクトに伝えてくれる

 今回は大排気量スポーツのフェアレディZ、本格FRスポーツのGR86、Cセグスポーツハッチのマツダ3、コンパクトカーのスイフトという4台のMT車を集めて撮影した。

 まず、こんなに多種多様のMT車が集められることが素晴らしい。「○○がダメなら代わりに××」という車種の代替え案も豊富にあって、日本は間違いなくMT天国なのである。

 また、各車それぞれにキャラクターが異なっていて、その乗り比べがまた楽しく、そして濃い。これは3ペダルMT車ならではの特長といえるだろう。

 今回つくづく思ったのは「MTはクルマのキャラクターを前面に出してくれる」ということだ。

 欧州のベーシック車っぽいスイフト、意外としっとり感のあるマツダ3、大パワー本格スポーツなのに運転がラクなZ、そして、ビンビンのレスポンスで(いい意味で)神経を使うGR86。なんというか、塩コショウだけで素材の味を楽しむ逸品料理という感じで、贅沢この上ない。

 もうひとつ実感したのは、MTになった途端、自分とクルマとの関係が格上げされるということだ。会社員なら同僚から「悩みごとも相談できる親友に」、学生なら同級生から「同じ目標を持つ部活の仲間に」という感じで、明確に付き合い方が濃くなり、いわゆる「クルマとの対話」の濃度が一気に上がるのだ。

 この最もわかりやすい例はスイフトだ。飛び道具のないベーシックなコンパクトカーだが、MTで走らせると、エンジンはもちろん、乗り心地やハンドリングも含めた乗り味全体が急激に主張し始める。

 それは試乗インプレッション的には「ダイレクト感が増す」ということになるのだろうが、それよりもクルマとの「親密度が増す」と表現するほうが近い。

 そして、それは気持ちの問題だけでなく、機構上あり得る現象のような気もする。いずれにせよ、クラッチを踏んでシフトするという、この“ひと手間”が思いのほか大きな効果をもたらしているのは間違いない。

 久しぶりに、MT車のイッキ乗りをして、改めて多くの気づきを得ることができた。その一番は「MTやっぱり楽しいわ〜」ということで、いろいろ書いてきたが、結局言いたかったのは、これ。また、運転の真剣度が上がるので、安全にも繋がると主張しておく。

(TEXT:飯干俊作)

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