電動化投資を大幅縮小!? ホンダが戦略を方針転換した件

電動化投資を大幅縮小!? ホンダが戦略を方針転換した件

 世界的なBEV普及の停滞と、先ゆき不透明なトランプ政策を受けて、ホンダが電動化戦略を大きく軌道修正した。近年のBEV推進を方針転換し、2030年度までの電動化投資を大幅に縮小。代わりにハイブリッド車に注力するという!!

※本稿は2025年6月のものです
文:中西孝樹、ベストカー編集部/写真:ホンダ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年7月10日号

【画像ギャラリー】下方修正ではなく軌道修正!! BEVへの投資を減らしHEVの開発&販売に力を注ぐホンダ(16枚)画像ギャラリー

電動化戦略の変更を決断したホンダ

2025年秋デビューのプレリュードは、次世代版ではなく従来型e:HEVの改良版を搭載する。それでも走りの楽しさは飛躍的に向上している
2025年秋デビューのプレリュードは、次世代版ではなく従来型e:HEVの改良版を搭載する。それでも走りの楽しさは飛躍的に向上している

●ホンダが修正した電動化戦略の内容(2025年5月)
・四輪車の電動化戦略を軌道修正
・2030年度までのBEV関連投資を10兆円から7兆円に減額
・BEVへの投資を減らし、HEV戦略を強化
・ソフトウェアへの投資額2兆円は維持
・2030年のEV販売比率見込みを30%から20%に変更
・2027年から4年間で13車種のHEVモデルを投入(全世界)
・2030年のHEV販売台数目標を220万台に設定
・2027年からの次世代HEVはコスト50%以上低減(2018年比)
・2020年代後半、大型車向けのHEVも開発し、投入する
・2040年、100%ZEV(BEV&FCEV)目標は維持

 日本車メーカーのなかで、最もBEV(電気自動車)化に熱心だったホンダが方針転換。2024年5月に公表していた電動化への投資額10兆円を7兆円に減額し、HEV(ハイブリッド車)の開発、販売に注力すると発表したのだ。

 世界的にBEVの普及が遅れていることに加え、米国トランプ政権がBEV支援策を大幅に後退させたことも大きな理由のひとつ。新設するカナダのBEV・バッテリー工場の稼働開始時期を2028年から2030年以降に延期し、その分の投資も減少させる。

 BEV戦略が足踏みする一方で、再び存在感を増すのがHEVだ。ホンダは2027年以降に次世代HEVを中心に攻勢をかける。グローバルで13車種の新型車を投入し、2030年に220万台のHEV販売を目指すとしている。

 2030年、ホンダはグローバル販売360万台を計画しており、220万台のHEV比率はその6割強。BEVは2割前後の70万〜75万台と見込んでおり、2024年同時期に目標としていた200万台以上から大幅に減らした。

 この次世代HEVは2018年比で50%以上コストを削減し(2023年比30%減)、燃費性能を10%改善。また、2020年代後半には大型車向けのHEVシステムも投入し、エントリーカーからラージクラスまで、幅広いラインナップを構築する。

目的地まで全経路ほぼ自動運転

方針転換してもBEVのニューモデルは投入していく。新開発のゼロシリーズはまず北米で販売し、2026年春までに日本にも導入となる
方針転換してもBEVのニューモデルは投入していく。新開発のゼロシリーズはまず北米で販売し、2026年春までに日本にも導入となる

 ホンダが次世代HEVと並行して注力するのが「知能化」だ。そのキーテクノロジーのひとつとして次世代ADAS(先進運転支援システム)がある。

 次世代ADASは生成AIを活用し、カーナビで目的地を設定すると、市街地を含む全経路で運転を支援するシステム。ドライバーの責任下での走行ではあるが、レベル3の一部自動運転機能も視野に入れている。

 2027年以降、日本、北米の主力モデルから提供を開始し、コンパクトクラスを含む、かなり広い範囲の車種に投入していく計画で、もちろん、BEVだけでなくHEVにも搭載可能。

 また、電動化、知能化が他地域よりも早く進む中国では、モメンタとの共同開発で次世代ADASを開発し、今後中国で発売するすべての新型車に搭載するという。

 次世代HEV、次世代ADASが2027年以降のホンダを支える戦略になるわけだが、2021年に立てた「2040年に100%ZEV(BEV&FCEV)」の目標は変えていない。

 2025年中にはBEVのゼロシリーズ第一弾が登場し、中国ではイエシリーズ2車種を投入。また、日本でもN-ONEベースの軽BEVが登場するなど、直近の計画は変更なく進む。

 今回のホンダの発表は、不透明な市場環境を踏まえ、BEVへの投資のタイミングを後ろにずらすということで、ソフトウェアに関する投資額は維持している。カーボンニュートラルには「BEVが最適解」という姿勢も変わっていない。

次ページは : 戦いの主戦場は知能化に移った(中西孝樹)

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