2025年6月、イタリアのサルディニア島にて行われたWRC第6戦の「ラリー・イタリア・サルディニア」。ここまで全勝で第6戦を迎えたトヨタだが、またもや当然のように優勝を飾り、全勝記録を伸ばした。オジエも4戦3勝と絶好調だ!!
※本稿は2025年6月のものです
文:国沢光宏/写真:Red Bull、TOYOTA GAZOO Racing
初出:『ベストカー』2025年7月26日号
ポルトガルに続いてオジエの「横綱相撲」で優勝
WRCサルディニアはオジエの横綱相撲という展開でポルトガルに続き優勝。今シーズン4戦出場し、優勝3回という全盛期もかくやと思える驚異のリザルトを残している。
金曜日は砂利掃除をしなければならない3番手スタートだったにもかかわらずジワジワと追い上げ、終わってみたら首位。土曜日は追いすがるヒョンデのタナックやチームメイトのロバンペラを引き離し、日曜日はマージンを残しながら逃げ切ってしまった。
相撲は横綱が勝ち続けて当たり前の競技。WRCのオジエを見ると正しく横綱といったイメージ。WRC史上最も強かったドライバーとして伝説になること間違いなしの現役時代を楽しみたいと思う。
来シーズンからトップカテゴリーがラリー1からラリー2ベースの車両になるかもしれない。そうなればオジエは今度こそ引退すると予想する。残るシーズン、なるべく多くのラリーに出てほしい。
勝田選手が勝つために足りない「何か」とは?
さて、日本人のラリーファンからすれば、やはり勝田選手である。サルディニアでの5位入賞も決して悪い結果じゃないと思う。
けれど2020年からトップカテゴリーにフル参戦を始めて6シーズン目。着実に成長していることは間違いないものの、優勝や表彰台の常連となるには、まだ「何か」が足りないと感じるのも事実。
その「何か」こそが、オジエ選手のような絶対的な強さにつながる要素であり、勝田選手が乗り越えるべき壁かもしれない。
勝田選手のリザルトを分析してみると、速いタイムを出すことは当たり前になっているが、全ラリーを通してコンスタントにトップ争いに絡む状況かといえば、そうなっていない。
サルディニアの場合、荒れた路面アタックを続けながらもミスせず走り切るというバランス感覚が重要になる。初日の転倒も小さなミスだと思う。まぁそんなことはチームや勝田選手だって100%認識していることだろう。
オジエ選手のようになるにはどうしたらいいか? 勝田選手はメンタルが安定しているという強みを持つ。速さだってある。以下、ランチア・ストラトスの時代からWRCを見てきた私の分析です。
勝田選手のようなドライバーは少なからずいた。有名なのはジル・パニッツィ。10年間WRCで勝ちなし。けれどプジョー206で優勝するや、そのシーズンはWRCのターマックですべて勝った。クリス・ミークもWRC初優勝はシトロエンDS3時代の35歳。
勝田選手にとって最もいい「薬」は初優勝だと思う。歴代の「遅咲き」と呼ばれた名ドライバーの多くは、不思議なことに一度優勝すると、その後は普通に勝てるようになっていく。
ラトバラ監督も遅咲きだし、TGR-WRTのCEOである春名雄一郎さんはそう考えているようだ。もちろんモリゾウさんだって同じだろう。プレッシャーを気にせずラリー道を追求してほしい。


















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