ノートとマーチ。いずれも日産を代表するコンパクトカーで、それぞれに走りの性能を強化したNISMOバージョンが設定されている。
兄弟モデルともいえる両車、はたしてどちらが楽しいのか。e-POWERが好調なノートだが、今回はガソリンモデルに絞って、国沢光宏氏に判定してみてもらった。
文:国沢光宏
ベストカー2016年10月10日号
走り出した瞬間にわかる違い
ベースとなったノートとマーチは車格がワンランク違う。ベーシックグレードに搭載されるエンジンこそ1.2Lの3気筒で同じながら、車重など100kg差。
といったあたりを反映したのだろう。ノートNISMOに搭載されるエンジンは1.6L 140psに対し、マーチNISMOは1.5L 116psとなる。
いっぽう、重量差は80㎏にとどまった。マーチNISMOの場合、3気筒エンジンを4気筒にスペックアップしたため大幅に重くなってしまったのだろう。
ノートは3気筒ながら、ボディ側の補強などが楽だったらしく、結果的に車重差が少なくなった。こうなるとパワフルなエンジンの効果が抜群。パワーウェイトレシオをみると、マーチNISMOの9.31kg/psに対しノートNISMOは7.71kg/psで、圧倒的に有利だ。
その違いは、ハンドルを握って走り出せばハッキリわかる。ノートNISMOは低い回転からトルクが出ており、余裕すら感じるほどだ。マーチNISMOに乗り替えると、高回転域をキープしなければパワー感は薄め。
いや、高回転まで回したってパワーが出ない感じ。どの基準をもってしてもエンジンはノートNISMOの勝ちだ。
エンジンパワー以上に差があるのはハンドリングだろう。トレッドの狭さからくる重心高の違いなのだろう。マーチNISMOのほうがロールする感じ。トリッキーなハンドリングと言っていい。
限界領域のコントロール性という点からしてもノートNISMOが優勢だと思う。こちらをひと言で表わすなら「奥ゆきのあるハンドリング」ということになる。
ということでこの2車「ドチラがよいか?」と聞かれたらまったく迷わない。明らかにノートNISMOがいい! 乗り比べたら誰だってわかるほど。
個人的にはデザインも圧倒的にノートNISMOを支持する。オリジナルのマーチ自体、日産も失敗したと考えているらしく次期型はまったく違う方向性になるようだ。販売状況にもハッキリ出ている。ユーザーはきちんと見分けている。
ただし! 楽しさという評価軸だとマーチNISMOも案外頑張っている。特に50歳以上のクルマ好きなら「懐かしさ」を感じることだろう。
私らが、若い頃に作ったチューニングカーってマーチNISMOみたいなクルマだったような気がする。
回りたがらないエンジンを無理矢理回し、ボディ剛性のない車体に補強を入れ、硬いサスペンションを組んだ感じ。完成度こそ高くないけれど、一生懸命さを感じる。
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