自動車メーカーが発表するコンセプトカーは、未来のデザインや技術を示すデザインスタディが多いものですが、マツダが2008年に送り出した「風籟(ふうらい)」は違いました。なんと実際にサーキット走行が可能な本格仕様に仕上げられており、レースマシンさながらのパフォーマンスを備えていたのです。
文:吉川賢一/写真:MAZDA
【画像ギャラリー】すごい完成度だったマツダ「風籟」 「走って魅せた」伝説のコンセプトカーを振り返る(29枚)画像ギャラリーデザインコンセプト「Nagare(ながれ)」シリーズの第5弾
マツダが2008年に公開したコンセプトカー「風籟(ふうらい)」は、マツダのデザインコンセプト「Nagare(ながれ)」シリーズの第5弾として登場したモデルです。マツダが提案した新しいデザイン哲学「Nagare(ながれ)」を体現したコンセプトカーとして、2006年の「流(ながれ)」を皮切りに、「琉雅(りゅうが)」「葉風(はかぜ)」「大気(たいき)」と続いたあと、その集大成として、2008年デトロイトショーで公開されました。
「Nagare(流れ)」とは、「動き、エネルギー、軽やかさといった要素を、「流れ」として造形やラインで表現するデザイン哲学」のこと。第1弾となったコンセプトカー「流」は、その名のとおり流れるようなボディラインをもち、ボディサイドのキャラクターラインも特徴的で、前席中央に1人、後席3人という4人乗りレイアウトやガルウイングドアの採用などによって大いに話題を呼び、シリーズが注目されるきっかけとなりました。
アメリカン・ル・マン・シリーズ参戦マシンのシャシーを採用
「風籟」とは、風の音や風の響きという意味をもつ言葉で、コンセプトカー「風籟」の外観も、まさしく走行時に流れる風(空気)を意識したものでした。フロントからリアへと続くラインは滑らかで、ボディサイドには流体を思わせるスリッドを配置。リアには大型ウイングが備わり、レーシングカー同様の迫力を漂わせていました。
最大の特徴は「実走行可能」という点。ベースには2005~2006年シーズンに「アメリカン・ル・マン・シリーズ」に参戦していた「クラージュC65 LMP2」のシャシーを採用し、これに軽量なカーボンボディを組み合わることで、車両重量はわずか675kg。ドライバーを前寄りに配置するキャビン・フォワードレイアウトで、現実的かつ攻撃的なパッケージングとなっていました。
搭載されたエンジンは、最高出力450馬力を誇る3ローターのロータリーエンジンで、燃料にはエタノール100%(E100)を使用するなど、環境性能にも配慮されていました。実際にサーキットで走行する映像も公開され、甲高いロータリーサウンドとともに疾走する姿は、当時大きな話題となりました。
結末は残念だったが、マツダの挑戦と夢が凝縮されたモデルだった
流麗なデザインと圧倒的なパフォーマンス、そして環境性能とを両立したスーパーパフォーマンスカーだった風籟ですが、その結末は悲しいものでした。英国の人気自動車番組「Top Gear」によるテスト中に事故を起こし、全焼となってしまったのです。
非常に残念な結末ではありましたが、単なる未来デザインの提案にとどまらず、実際に走行もできることで、クルマが走る姿の美しさをみせてくれた風籟は、マツダの挑戦と夢が凝縮された一台であり、多くのクルマファンの記憶に強く残ることになりました。
2025年秋には、ジャパンモビリティショー2025が開催されます。マツダは、2年前のJMS2023では、2ローターRotary-EVシステムを搭載したコンパクトスポーツのコンセプトカー「アイコニックSP」を世界初公開し、クルマファンを楽しませてくれました。今回も、クルマファンをわくわくさせてくれるようなコンセプトカーを用意してくれることを期待したいです。
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