2025年11月5日、三菱自動車は2025年度上期（4–9月）の決算を発表した。売上高は1兆2613億円（前年同期比▲3.5％）、営業利益は173億円（同▲81％）、経常利益158億円（同▲77％）。世界販売は38.4万台（同▲6％）。上期はASEANの鈍化や米国関税、為替の逆風に苦しんだが、通期は売上高のみ2兆8200億円へ小幅下方修正、営業利益700億円・経常利益600億円・最終利益100億円の見通しは据え置いた。株主還元も年10円（中間5円・期末5円）を計画。数字は厳しいものの新型車の準備は整っており、後半に向けた“反転の芽”が見えた。
文：ベストカーWeb編集部、画像：三菱自動車、自工会（アイキャッチ写真はJMSの記者会見で熱くプレゼンする三菱自動車・加藤隆雄CEO）
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上期の総括と通期見通し――「量より質」で立て直す後半戦
2025年上半期の三菱自動車の主要数値は以下のとおり。
・売上高：1兆2613億円（前年同期比▲3.5％）
・営業利益：173億円（同▲81％）
・経常利益：158億円（同▲77％）
・中間純損益：▲92億円
・世界販売：38.4万台（同▲6％）／通期見通しは84.3万台（同0%）
営業利益が縮小した主因は、販売数量と車種ミックスの悪化、コスト増、米国関税と影響により世界各国での競争激化、そして為替影響。
地域面ではASEANや豪州NZのマイナス影響が響いた。一方で通期の利益計画（営業700億円／経常600億円／最終100億円）を維持。今年後半にかけて、収益性の高い車種の供給・販売最適化、コスト対策の継続で収益の反転攻勢を強める。配当は年10円（中間5円・期末5円）を継続予定。マザーマーケットである日本市場の強化も経営方針として見えてきた。
数字の重さを開示しつつ収益計画を守り切る覚悟を示しており、ここで腰折れせず選択と集中で着実に利益を積み上げる三菱らしい粘りを評価したい。2026年は新たな中期経営計画の発表年でもある。しっかり数字を揃えて、新たなチャレンジへ向かってほしい。
JMS2025の実感と“デリカ攻勢”――受注は好発進、現場の士気は高い
決算説明の質疑応答では、ジャパンモビリティショー2025での三菱自動車ブースに多くの来場があったことについて加藤隆雄CEOに「受け止め」を聞く質問が飛んだ。
「新型デリカミニ」、「新型デリカD:5（マイチェン）」、「アジアクロスカントリーラリー優勝のトライトン競技車両（実車）」、世界初披露のコンセプトカー「エレバンスコンセプト」と、人気が集中したことが紹介された。来場者の熱量から三菱への期待を強く実感し、同社内でも「自分たちもあらためてやる気をもらった」と、士気が大きく上がったという。これは数字だけでは測れない“現場の追い風”だ。
受注の初速も明るい。新型デリカミニは9月18日の発表以来、予約受注が1万台を突破。新型デリカD:5も10月30日の予約開始以降、約3日間で1000台超の受注が入ったと説明があった。いずれも“デリカ”ブランドの強さを再確認させるもので、日本市場の牽引役として期待が高い。もちろん「エース車種」であるアウトランダーPHEVの人気もいまだに高い。
上期は米国関税とASEAN市場の需要減退、主要モデルの切り替えタイミングに差し掛かったことにより、苦戦した三菱自動車。いっぽう各マイナス要因は出口が見えており、下期は“勝てる車種を勝てる市場へ”が揃うよう、準備は整っているように見える。
特にマザーマーケット、日本市場でのデリカの二枚看板（ミニ／D:5）の伸長は、まさに三菱の真骨頂。JMSで得た手応えを販売現場の実需につなげ、数字を積み上げてほしい。
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