1982年にヤマハ初の4ストスクーターとして登場した「シグナス180」。1984年には排気量を変更し、「シグナス125」としてリニューアル。その後モデルチェンジを行ないつつ、2003年に「シグナスX」へ、そして2021年にシグナスシリーズとして初めて水冷エンジンを搭載し、「CYGNUS GRYPHUS(シグナスグリファス)」へと進化した。その後はカラー変更を行ない、2025年5月に新色のイエローが追加された。
文:小川浩康 写真:関野 温
コミューターとしての扱いやすさに、俊敏な走行性能をプラス!
厳格化された排出ガス規制をクリアするためにエンジンを水冷化し、排出ガスを浄化するキャタライザーなどの補器類を追加するためにフレームも変更して、「シグナスX」から「シグナスグリファス」へとフルモデルチェンジ。車重は6kg増の125kgとなったが、最高出力を9.8PS→12PSへとパワーアップして重量増に対応している。それでいて燃費は37.5km/L→44.5km/Lへと大幅に改善。このように走行性能と環境性能の両立を具現化する設計思想に基づいて開発されたのが、ヤマハ独自の「BLUE CORE」エンジンだ。
「シグナスグリファス」に搭載された水冷4ストローク125cc「BLUE CORE」エンジンは、アンダーフレームを装備するスクーター「NMAX」をベースとしているが、変速比を全体的に低速寄りにした加速重視のセッティングとなっている。さらに、吸気バルブの作動特性を決めるカムが6000rpmで低速向け(ローカム)から中高速向け(ハイカム)に切り替わり、全域でトルクフルなエンジン特性を実現しているのも特徴だ。
始動モーターとジェネレーターを一体化した「SMG(スマートモータージェネレーター)」を搭載し、静粛で素早いエンジン始動も実現。フロントポケット、USBソケット、コンビニフック、容量28Lのシート下収納と、コミューターとして便利な装備も充実している。前後ディスクブレーキはリヤ(左側レバー)をかけるとフロントも連動する「UBS(ユニファイドブレーキシステム)」を装備し、ブレーキング時のマシン挙動を穏やかにする。
シグナスグリファスの足着き性をチェック
実用性とスポーツ性を「BLUE CORE」が両立する!
空冷「シグナスX」から水冷化し、ラジエターや触媒などの装備が追加されたことで、車重はプラス6kgの125kgとなった「シグナスグリファス」。しかしハンドリング操作は軽快で取りまわしやすく、センタースタンドも力まずにスムーズにかけられた。エンジンをかけない状態での押し引きでは、取り立てて重量増を感じなかった。
「シグナスグリファス」の「BLUE CORE」エンジンのアイドリングは約1500rpm。3000rpmくらいでトルクが立ち上がってくると同時にクラッチミートし、車体は前進しはじめる。そこからスロットルを開けていくと6000rpmまでスムーズに上昇していき、市街地の交通の流れをリードできる加速力も発揮する。6000rpm以上は「VVA(Variable Valve Actuation)」で吸気側カムが低速向けから中高速向けに切り替わり加速の伸びをキープしていく。けれど、市街地ではそこまで回さなくても充分速く、「VVA」が作動しない回転域でも走りにストレスを感じなかった。
むしろ4000~5000rpm時のスロットル操作に「BLUE CORE」エンジンはダイレクトに反応し、上り坂などでも車体をしっかり加速させるトルクを発揮する。前後12インチタイヤは接地感が分かりやすく、ハンドリングには軽快さもあり、タッチがよく充分な制動力を発揮する前後ブレーキには安心感もある。「シグナスグリファス」のこうした特性と車重のバランスがよく、ゴー&ストップの機会が多い市街でキビキビした走りを楽しめる。これは、変速比を「NMAX」から低速寄りにしたことで加速重視のセッティングへと変更された恩恵だろう。
スポーティな走りが日々の移動も楽しくする!
市街地で軽快な走りを実現している「シグナスグリファス」は、フロントにポケット、コンビニフック、USBソケット、シート下には容量約28Lの収納スペースも装備。そしてフラットなフロアは乗り降りがしやすく、コミューターとしての使い勝手のよさをしっかりと持っている。
ただし、ディスプレイは単色でスマホとの連携に未対応など、付加価値的な装備では最新モデルに及ばない。また、ABSやトラクションコントロールも未搭載で、前後サスは荒れた路面でコツコツした感触が手に伝わってくるなど、気になる点もある。それでも前後サスはストロークの奥で踏ん張り感があり、シート自体も衝撃を緩和してくれて、トータルでの乗り心地はいい。また、フラットフロアは足の置き場に自由度があり、前後長に余裕のあるシートと合わせて着座位置を変えやすく、長時間のライディングでも尻痛を低減できる。
その一方で、「NMAX」のようなフロアトンネルがないので、足首(くるぶし)で車体をホールドできず、マシンとの一体感では「NMAX」に一歩譲る。だが、自由度の高いライディングポジションのおかげでフロントに荷重をかけやすく、荷重することでハンドリングの安定性が高まってマシンコントロール性も向上する。さらに加速重視の変速比と常用域で粘り強いトルク特性も相まって、125ccスクーターでトップクラスのスポーティな走りを実現している。
ちなみにヤマハの125ccスクーター(LMWのトリシティ125は除く)には、「シグナスグリファス」の他に「ジョグ125」「アクシスZ」「NMAX」がラインナップされていて、加速性能の目安となるパワーウエイトレシオは、「シグナスグリファス」が10.41、「ジョグ125」が11.44、「アクシスZ」が12.04、「NMAX」が11.00となっている。「シグナスグリファス」はスペックでも優位性がある。
通勤や買い物などの移動に便利なシティコミューターとしての扱いやすさと、クラストップの加速性能を兼ね備えた「シグナスグリファス」は、マシンコントロール性もよく、スポーツスクーターとも呼べる軽快な走りを身に着けている。シティコミューターとしての利便性に加えて、日々の移動中にもスポーティな走りを楽しみたいと思うなら、「シグナスグリファス」はコストパフォーマンスも含めて魅力的な一台だ。
ヤマハシグナスグリファス主要諸元
・全長×全幅×全高:1935×690×1160mm
・ホイールベース:1340mm
・車重:125kg
・エンジン:水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒124cc
・最高出力:12PS/8000rpm
・最大トルク:1.1kgf・m/6000rpm
・燃料タンク容量:6.1L
・変速機:Vベルト式無段/オートマチック
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-12、R=130/70-12
・価格:37万4000円
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/498992/



















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