北海道や東北地方ではすでに雪が降り、関東地方の平野部でも寒さに震える季節になってきました。朝、慌ててクルマの暖房のスイッチをオンにしたものの、エアコンの送風口から出てくるのは冷たい風ばかり。そこで、暖房をガンガンかけると燃費に影響するのか? また冷え切った車内を1秒でも早く暖める方法はあるのか、解説します。
文:ベストカーWeb編集部/Adobe Stock(トビラ写真:Adobe Stock@Cautivante.co)
暖房はエアコンと違って燃費への影響はほぼない
家庭用の暖房と同じように、クルマの暖房をつけると燃費が悪くなってしまうからとなるべくつけたくないという人がいるかもしれません。
勘違いしがちなのが、エアコンと暖房の違いです。家庭用のエアコンと違って、クルマの場合、暖房を使いたい場合にはエアコンスイッチをオンにする必要はありません。
クルマの暖房は、エンジンで温められた熱を、冷却水の熱を利用して送り出されるもので、燃費への影響はほぼありません。
暖房にはその暖かさの元となる熱源が必要ですが、EVや一部のハイブリッド車を除くガソリン車やディーゼル車では、エンジンが動いている時に発生する熱を再利用し、暖房のための熱源としています。
ハイブリッド車を含むエンジン車の場合、エアコンの暖房についてはその熱源としてエンジンの冷却水を利用しています。つまりエンジンが暖まらないと温風は出てきません。
エアコンのボタンでコンプレッサーを作動させなくても、暖房は使えるのはそのためだからです。ちなみに暖房時にエアコンを使うのは温風を作るためではなく、まずは空気を冷やして除湿(熱交換器が結露することで空気から水蒸気が除去される)してから温めることで、車内の湿度を下げて窓が曇ることを防いでくれるからです。
つまりエアコンを使っても使わなくても、暖房はエンジンが温まるまでは機能しない、ということです。欧州車、特にドイツ車や北欧のクルマは始動後数分で暖房が強く効くように設計されているが、日本車はそこまで暖房の機能が重要視されていません。
寒冷地仕様はバッテリーやオルタネーター、ヒーターコアの容量を増やしていますが、冷却系の配管構造はそのままなので、ヒーターが効き始める時間は早くなりません。
EVやハイブリッドの場合は、燃費は悪くなる?
暖房をつけると“燃費への影響はほぼない”と前述したのは、ガソリン車、ディーゼル車の場合で、EVやハイブリッド車は燃費への影響は少なからずあります。
EVには電気抵抗の大きな素材に電流を流して、電気を熱に換えるPTCヒーターが使われるのが一般的だからです。家庭用エアコンと同じヒートポンプ式の暖房装置も装着されているクルマもあり、そのヒートポンプから温風を出すことによって、バッテリーの消耗が早まります。つまりPTCヒーター、ヒートポンプともに電費の悪化につながることになるのです。
暖房装置がヒートポンプ式ではないハイブリッド車の場合には、エンジンの熱を利用しますが、バッテリーが充分に充電されているとエンジンが止まってしまう場合があります。暖房の温風が必要な場合には、エンジンを始動する必要があるため、燃費が悪くなるのです。
またハイブリッド車でも暖房装置がヒートポンプ式の場合には、エアコンを作動させることになるため、その動力源としてエンジンが利用されるので燃費が悪くなります。
もしも信号待ちの停車中に、エンジンがかかって強制暖房が始まってしまったら、一度エアコンをオフにするか、設定温度を下げることで暖房が止まることがあるので、燃費悪化を防ぐにはこのようにするといいでしょう。
ちなみに日産リーフや三菱アウトランダーPHEVには、PTCヒーターに加えてヒートポンプ式を採用しています。PTCヒーターで温めてからヒートポンプを作動させますが、PTCヒーターと比べると消費電力は小さく効率的ですが、一気に温度を上昇させるのは苦手だからPTCヒーターを組み合わせています。
一番のお薦めは寒冷地仕様(相場は1万~3万円)のなかにオプションとして用意されているPTCヒーターです。EVやPHEVの場合は、PTCヒーターが標準装備されている場合が多いのでチェックしておきましょう。
メーカー、車種によって寒冷地仕様の中身が異なっていますが、始動性をよくする強化バッテリーや冷却水が必要以上に冷やされて暖房性能が低下するのを防ぎラジエーターに風が当たらないようにするラジエターシャッターなども含まれる車種もあります。
PTCヒーターはエンジン始動直後からエンジンが暖まるまでの間、通常のヒーターに加えて暖房を補う電気式補助ヒーター。メーカーによって差はあるが速熱性があるので、寒がりはPTCヒーターを選択することをお薦めします。






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