2025年10月25日、スーパー耐久第6戦岡山に初参戦したGRヤリス Mコンセプト。結果は3時間を走り切って見事完走した。最終盤に乗った豊田章男会長はGRヤリス Mコンセプトを「名馬のごとし」と表現した。果たしてその意味とは?
※本稿は2025年11月のものです
文:ベストカー編集部/写真:トヨタ、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
ただならぬポテンシャルを感じ取った豊田章男会長
新開発のG20Eターボを搭載し、DATとGR-FOURを組み合わせたミドシップ4WD、GRヤリス Mコンセプトがデビュー戦で見事完走。それどころか経験豊富なGRヤリスやシビックタイプRを相手に終盤までリードする速さを見せた。
最終盤に約15分ステアリングを握った豊田章男会長に、デビュー戦の出来は何点ですか? と聞いてみた。すると、「完走できたし、4人のドライバー全員が乗れたから75点くらいかな」とコメント。
金曜日の練習走行ではパワステの容量不足やABSのセッティングなど、これまでのテストでは出てこなかった不具合が出た。土曜日の予選、日曜日の決勝と走るごとにカイゼンされ、レース前に比べると大きな進化を遂げた。
「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」のお手本を見せたような週末だった。
さらに豊田章男会長はこんな話をしてくれた。
「このクルマ(GRヤリス Mコンセプト)は名馬のごとし。今も楽しいクルマだけど、腕がよくなればもっと楽しめるクルマだと思います。これを乗りこなすには自分の腕をあげないといけませんね」。
乗馬もたしなむ豊田章男会長ならではの表現だが、マスタードライバーをして、もっとうまくなりたいと思わせるクルマだということだ。それだけGRヤリス Mコンセプトのポテンシャルの高さを感じ取ったともいえる。さらに、
「ミドシップはクルマメーカーしかつくれないと言われますが、これをつくることで、トヨタはきっと変わると思います」と話してくれた。
ミドシップ、それも4WDのミドシップとなれば、アウディR8やランボルギーニ・ウラカンなどが思い当たるくらいだ。そんな特別なクルマをフルラインナップメーカーのトヨタが開発する意味はどこにあるのだろうか?
豊田章男会長は電動化自体を否定するものではないが、自動車すべてがコモディティ化することについては危機感を募らせている。モータースポーツで鍛え上げられたクルマはブランドとして認められ、生き残ることができる。
技術者も「安くてコスパのいいクルマ」だけではなく、台数は売れなくても、満足度が高く、指名買いされるようなクルマをつくれるようにならなければならない。
「トヨタが変わる」とはそういう意味で、マスタードライバーである豊田章男会長がなぜ自ら未完成のミドシップ4WDの開発に関わり、レースを走るのか? という疑問の答えもそこにある。
まったく新しい公開開発という手法
完走を果たしたGRヤリス Mコンセプトだが、トヨタ自動車会長であり、マスタードライバーの豊田章男が乗るべき性能に達しているかといえば、本来はNOだとチーム関係者は言う。
それでも「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を進める素材としてGRヤリス Mコンセプトは最適。一つひとつの技術ではなく、クルマ一台をレースに参戦し、つくっていこうという初の試みだ。
豊田章男会長はMコンセプトへの強い想いもあって、Aドライバーとしてステアリングを握った。レースという公開の場でクルマを鍛え、開発するスタイルをファンやトヨタ自動車の技術者に見せたかったからに違いない。
豊田章男会長がトヨタ自動車の技術部を変えたのは、モータースポーツに出場しながらのアジャイルな開発手法を牽引したことだ。モータースポーツというある意味極限のなかで、不具合をたくさん出し、その度に改善していけば、開発スピードは驚くほど上がっていく。
GRヤリス Mコンセプトはスーパー耐久の最終戦に出場せず、2026年の1年間のスーパー耐久を通して、速さと耐久性を磨いていくことになる。
Mコンセプトは、技術者はもちろん我々ファンが想いを伝え、開発に関わっていくクルマでもある。みんなで楽しいクルマに仕上げていく、それがMコンセプトプロジェクトだ。










コメント
コメントの使い方社長や技術者だけじゃなく、ファンが開発に携わってくと書いてますが、本当なのかな。
開発者側が、MRでメーカーの箔付けたい為に暴走してるように見えてて
ファンの声ってそれを全肯定する一部だけのことを指してるのかなと。
今までは市販車反映感がありましたがこれは…