冷える?冷えない? エンジン冷却系統の状態がわかるラジエーターリークテスター

冷える?冷えない? エンジン冷却系統の状態がわかるラジエーターリークテスター

 水冷エンジンにとって性能維持の要となるのがラジエーターをはじめとした冷却系統です。冷却系統はリザーバータンクを含めてすべてが閉鎖系にあり、キャブレターのオーバーフローパイプのように車体外部にロングライフクーラントが排出される機構はありません。それにも関わらずどこかからLLC特有の甘い匂いがする時は、ラジエーターリークテスターで原因追及できるかもしれません。

文/栗田晃

 
 
 

水冷エンジンは冬場の暖機運転促進でも有効



高回転で走り続けたわけでもないのに水温計の針がいつもより高温を示している場合、大きなトラブルが発生する前に冷却能力以上の負荷が掛かっているのか。冷却系統に不具合があるのかを明確にしておく必要がある。

水冷エンジンの冷却系統には、夏場だけでなく寒い冬にも重要な役目があります。インジェクション車の場合、ガソリンが霧化しづらい冬場は温度補正によって混合気を濃くして対処しますが、同時に冷却経路中のサーモスタットが開くまでは冷却水を熱源として活用しています。キャブレター車も同様で1990年代モデルの中にはフロートチャンバー外側に冷却水を通して暖機を促進するキャブレターヒーター装着車がありました。
エンジン内部を循環する冷却水は、エンジンの中で最も高温となるシリンダーヘッドから熱を奪い、ラジエーター内部を通過する際に走行風で冷却され、ウォーターポンプで再びエンジン内に圧送されるというサイクルを繰り返しています。先の始動直後の暖機促進の例だけではなく、走行中の冷却水もただ冷やせば良いというわけではなく、一定の温度範囲に留めておくよう設計されています。

 
 
 

常温では漏れないのに水温が上昇すると漏れる理由



走行直後にラジエーターキャップを開くと冷却系統内部の圧力が低下して冷却水が噴き出すので、常温まで低下するまで充分待つことが重要。

そのために重要なのがラジエーターキャップです。水は大気圧下では100℃で沸騰し、圧力が低下すれば沸点は低下し、逆に高圧の下では沸点が上昇します。ラジエーターキャップは冷却水温度上昇に合わせて上昇する冷却系統内に圧力を加えることで、100℃で沸騰させない働きがあります。
例えばキャップ本体に1.1と数字が書かれている場合、冷却経路の圧力は1.1kg/㎠(約107kPa)で開弁します。冷却系統を107kPaまで加圧すると冷却水の沸点はおよそ120℃まで上昇し、大気圧下より沸騰しづらくオーバーヒートしづらくなります。
ただし大気圧より冷却系統内部の圧力が高くなると、冷却水漏れトラブルが発生する可能性が高くなります。新車時ならそんな心配は無用ですが、ゴムやプラスチック、金属部品の経年劣化が心配される旧車や絶版車では、各部品の接合部などから冷却水が滲んだり漏れたりする場合もあります。
すると冷却系統内の圧力が低下し、圧力が低下することで冷却水が沸騰し、ウォーターポンプ周辺で気泡が発生すると循環が滞りオーバーヒートにつながる危険性もあります。
常温では気にならないのに走行中に水温が上昇するとロングライフクーラントの甘い匂いが漂うような場合は、どこかから冷却水が漏れている可能性を疑うべきです。

 
 

冷却系統に強制的に加圧するラジエーターリークテスター



ラジエーターリークテスターの一例(この製品はストレート製)。ゲージ付きポンプとラジエーターの口金に取り付けるアダプター、ラジエーターキャップのテストを行うアダプターなどがセットになっている。



冷却系統に加えている圧力が分かるのがラジエーターリークテスターの特徴。ゲージの単位は製品によってまちまちだが、外周のbar表示(0~2.5)がkg/㎠とほぼ同一となる。

走行中に発生する冷却水漏れを発見するのに役立つのがラジエーターリークテスターです。ゲージ付きのポンプの先をラジエーターに取り付けて加圧することで、冷却系統全体を加圧して走行状態を再現できます。
キャップ部分から圧力を加えるだけならエアーコンプレッサーにつないだエアーブローガンでも可能ですが、専用工具が優れているのが加圧する圧力が把握できる点です。エンジンの冷却系統は大気圧より高圧になっても気密性を維持しますが、どこまでも圧力を上げても良いわけではありません。過剰に加圧すればガスケットやOリングが抜けてしまう危険性もあります。
このテスターはラジエーター点検に特化しているだけあり、最大2.5bar(200kPa)までの圧力を指針で確認することができます。先の1.1kg/㎠設定のキャップであれば0.98barまで加圧して漏れの有無を確認すれば良いことになります。ここで紹介しているゲージが1bar以下の領域が緑帯なのは、一般的な1.1kg/㎠設定に対応したものだと思われます。
ラジエーターキャップアダプターを介してテスターのポンプで加圧する際は、車両ごとの設定上限を超えないよう、さらに加圧状態が持続できるか否かを確認することが重要です。
ポンプで加圧しても1barまで上がらないような場合、冷却系統のどこかから確実に冷却水が漏れているはずです。漏れが発生する可能性があるのはラジエーター本体、ホース、ウォーターポンプのメカニカルシール、サーモスタットケースなど多岐にわたり、さらにシリンダーヘッドガスケットから燃焼室やオイル潤滑経路に混入している可能性もあります。エンジン内部に漏れている場合、燃焼室内であれば排気ガスに甘い匂いが混ざり、オイルに混ざればエンジンオイル点検窓から見えるオイルが乳化します。
一方、一度は1barまで上昇して、その後ジワジワと圧力が低下する場合、漏れの程度が軽微で、走行中ならエンジンの熱で漏れたそばから蒸発している可能性があります。そうした状況では、バイクが停止した状態でじっくり観察できるラジエーターリークテスターのメリットを実感することができます。



ラジエーターの口金サイズに適合するアダプターを取り付ける。



ポンプのホースをラジエーターアダプターに取り付けて加圧する。画像は1.1bar程度まで加圧しているが、圧力を掛けすぎると冷却系統のシール抜けなどのトラブルにつながるので注意が必要。

意外に多いラジエーターキャップ不良も判断できる



ラジエーターキャップは冷却系統の圧力をコントロールする重要なパーツである。口金に接するゴムシールが経年劣化で硬化すると設定開弁圧以下でもリザーバータンク側に冷却水を漏らしてしまうことがある。



キャップサイズに適合するアダプターを使用してポンプに取り付け、加圧して開弁圧を測定する。ラジエーターキャップは高価な部品ではないので定期的に交換すれば良いが、不具合があった場合に測定することで、原因特定の手がかりになる。

水漏れ以外で冷却系統で発生しがちなトラブルとしてラジエーターキャップ不良があります。ラジエーターキャップには冷却系統を加圧することで沸点を上昇させると同時に、圧力が過剰に上昇した際に冷却水をリザーバータンクに逃がす安全弁としての機能があります。
この安全弁はラジエーターの口金部分に密着するゴムシールと金属スプリングを組み合わせたシンプルな構造で、ゴムの硬化を始めとした経年劣化や異物噛み込みなどによる気密性低下が起こると圧力を維持できなくなり、沸点低下により気泡が発生してオーバーヒート状態になるリスクがあります。1000hPaの大気圧下では100℃で沸騰する水が630hPaの富士山山頂では87℃で沸騰するのと同じ理屈です。
そのためラジエーターキャップは消耗品として定期交換するのが間違いありませんが、ラジエーターリークテスターがあればキャップに表記された数値まで圧力を漏らさず維持できるか否かを確認できます。
普段は空冷か水冷かなど気にすることはありませんが、いざ水漏れが始まると嫌でも意識せざるを得ません。冷却水漏れはオーバーヒートなどさらに大きなトラブルを引き起こす元となるため、早急に原因を特定して適切な整備を行うことが必要です。
その際に冷却系統を加圧して維持できるラジエーターリークテスターの有用性が分かるはずです。

POINT
 

 

  • ポイント1・水冷エンジンの冷却水はエンジンの熱を受けて温度が上昇して圧力が上がることで沸点が上昇する
  • ポイント2・ラジエーターリークテスターは常温下で冷却系統に圧力を加えて冷却水漏れを発見するのに役立つ
  • ポイント3・ラジエーターリークテスターでラジエーターキャップの開弁圧を測定することでキャップ自体の不具合の有無を判断できる

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/501445/

冷える?冷えない? エンジン冷却系統の状態がわかるラジエーターリークテスター【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/parts-gears/429972/

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