新開発3.6L水平対向6気筒エンジンに、2基の電動ターボの組み合わせ。得られた出力は歴代911史上最高となる711ps。最も新しく、最も力強い911ターボSに、スペイン・マラガの一般道とサーキットで試乗した竹花寿実氏がレポートする。
※本稿は2025年11月のものです
文:竹花寿実/写真:ポルシェ ほか
初出:『ベストカー』2025年12月10日号
最新&最強の911登場!
2025年9月にミュンヘンで開催されたIAAモビリティでお披露目された新型ポルシェ 911ターボSに、スペイン・マラガ近郊で試乗することができた。
現行911(タイプ992)の後期型である“992.2”は、GTS系モデルに“Tハイブリッド”と呼ばれるハイブリッドシステムを搭載したが、新型ターボSもそのTハイブリッドを積む。ただし、GTS系とは一線を画している。
GTS系は電動ターボチャージャー(eターボ)が1基だが、ターボSは新開発3.6L水平対向エンジンの左右にeターボを1基ずつ備え、それぞれが左右の3気筒の過給を担うツインターボ。もちろんエンジンと8速PDKには電気モーターが組み込まれている。
結果、新型は最高出力711ps、最大トルク800Nmという、従来モデルを61psも凌駕する驚異的な性能を実現。量産911史上、最もパワフルなモデルとなったのである。
シャシーにもehPDCC(電気油圧制御式ポルシェダイナミックシャシーコントロール)やリアアクスルステアリング、専用セッティングのPASMダンパー、大径のPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)などを採用。エアロダイナミクスも専用にチューンされた。
今回は、まずマラガ郊外のホテルからアスカリ・サーキットまで100km弱の一般道でクーペに試乗。
走り出してすぐに乗り心地のよさに驚かされた。路面からの突き上げが、GTS系モデルより明らかにソフトなのだ。しかも速度域が上がっても、スポーツやスポーツ+に切り替えても大きく悪化しない。また静粛性もGTS系より明確に優れている。歴代で随一の速くて快適な911と言っていい。
サーキットでは、もはやターボラグなど微塵も感じない高レスポンスと、0-100km/h加速2.5秒という驚異的な加速力、4WDとリアアクスルステアリングによる圧倒的なスタビリティにより、自由自在の走りを楽しめた。
GTS系の4WDモデルより若干アンダーステア傾向が強めだが、それを補って余りある動力性能が、ドライバーを非日常の世界に連れて行ってくれる。
新型911ターボSは、日常の移動からサーキット、またロングドライブまで、あらゆるシーンで最高の走りが楽しめる完璧なスーパーカーなのである。
快速オープンドライブが楽しめるカブリオレも用意
販売の約35%を占めるというカブリオレは、クーペより若干だが快適性に振った乗り味。
大人しく走っているぶんには極めて快適なオープンドライビングが楽しめるが、一旦アクセルペダルを深く踏み込めば、クーペと遜色ないダイナミックな走りが味わえる。価格は3941万円だ。
●ポルシェ 911ターボSクーペ 主要諸元
・全長×全幅×全高=4561×1900×1305mm
・ホイールベース=2450mm
・車両重量=1725kg
・パワーユニット=水平対向6気筒 3591cc+ツイン電動ターボ
・エンジン出力=640ps/77.5kgm
・システム出力=711ps/81.6kgm
・最高速度=322km/h
・価格=3635万円



















コメント
コメントの使い方ポルシェは本当に実力のあるメーカー。特に知名度だけは圧倒的なのに現行車のレベルが伴ってない欧州メーカーたちの中で、他を寄せ付けないほど突出してる。
992は巨体だし重い。そんな体躯に途轍もない馬力を積んですら、自在に走らせる制御と、それを破綻させない部品設計&生産精度が素晴らしい。
世界トップの日本メーカーが追いつけてない数少ない車。それは立ち止まらず常に向上し続けた歴史の成せる業だと思う