気温が極端に下がる北国の真冬。バッテリーあがりにより、突如としてエンジンがかからなくなるトラブルを経験している人は多いと思うが、それらに当てはまらない「マフラー凍結」という深刻なトラブルがあるのをご存じだろうか? 北海道在住の筆者が原因と対処法を紹介する。
文:木下琢哉(Team Gori)/写真:木下琢哉(Team Gori)、写真AC
マフラー内部が凍って排気ができなくなる
マフラー凍結は排気ガスに含まれる水分が駐車中に凍り、内部が凍ってしまう症状。最初は薄い氷程度と思われるが、運転を繰り返すたびに水分が凍りつき、氷が徐々に大きくなる。やがてマフラー内部を塞いでしまい、排気ができなくなりエンジンがかからなくなるというわけ。
まるで人間の血管にコレステロールが溜まって動脈硬化を起こし、心筋梗塞になるような現象だが、極寒冷地ではクルマにも同じことが起きるから驚きである。
通常なら、排気ガスの熱や駐車中でも予熱で水分は蒸発する。しかし、北国では外気温が低すぎて寒さのほうが勝ってしまい、時間経過とともに凍ってしまう。
雪道ということもあり、エンジン回転数を上げずに走り、近場の移動ばかりですぐにエンジンを切ってしまい、充分にマフラーまで温まらない。これが氷の蓄積を加速させる大きな要因だ。
マフラーを外して暖房器具で解凍してようやく復帰
凍ったマフラーを解凍すれば、エンジンはかかるようになるのだが、これがなかなか大変。暖かい車庫があればいいが、一般家庭の車庫に暖房設備などなく、車庫内の温度は外気温とそれほど変わらない。北海道のような極寒地では、自然解凍を待っていたら春になってしまうレベルだ。
そのため、即解決したい時は、マフラーを車体から外さなければならない。こうなると、もう自分で解決できるレベルの作業ではなくなってしまう。外したマフラーは暖房器具の前で吊るして、何時間もかけて解凍していく。その様子はまさにアンコウの吊るし切りだ。
作業時間はマフラーの脱着と解凍を合わせてほぼ丸一日から二日かかる。当然、費用もそれなりにかかってしまう。だが、春まで待つわけにもいかないし、エンジンがかからない以上、レッカー移動が必須。結局、整備工場などに依頼するしかないだろう。
エンジンを切る前に空ぶかしして水分を飛ばそう
このトラブルを未然に防ぐ方法はいくつかある。雪道で怖くても、できるだけエンジン回転数を上げてマフラーが十分に温まるまで走る方法と、風通しの良い吹きさらしの場所に長時間駐車しない、マフラー内部に水が溜まりやすくならないように、フロント側が低くなるような傾斜地に駐車しないなど。短時間の運転を避けるのも効果的だ。
マフラーがしっかり温まるくらいに毎日走り、車庫保管できる人なら、このトラブルとはほぼ無縁だ。逆に雪道を恐る恐る走り、青空駐車している人は凍結させる確率がぐっと上がる。しかも一度起きると繰り返す傾向にある。筆者は1シーズンに2回も凍らせた強者を知っている。
どうしても雪道が苦手で回転を上げにくい場合は、エンジンを切る前に空ぶかしを何度か行い、マフラー内の水分を飛ばそう。これが最も安全で簡単な解決策だろう。もちろん、たまに遠出もしてマフラーを徹底的に温め、水分を完全に蒸発させることもお忘れなく。ちょっとした心がけでトラブルを未然に防ぎ、大きな出費と時間ロスを防げるので、頭の片隅に置いておこう。
【画像ギャラリー】内部から大きな氷の塊が!! 凍ったマフラーを写真で見る(4枚)画像ギャラリー







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