本日2025年12月31日、ガソリン税に上乗せされてきた「当分の間税率(通称:暫定税率)」がついに廃止となった。1974年に始まった“半世紀の上乗せ”が終わる節目だ。廃止決定後、クッション政策として段階的に補助金が投入されてきたが、税率は本日から本則へ切り替わり、市況価格は全国平均で158.0円/Lまで低下(12月22日時点)。厳しい物価高が続くなか、この燃料費低下は自動車ユーザーだけでなく物流全体、社会全体に恩恵がある。政策決定の背景を解説しつつ、この政策を地道に進め、実現にこぎつけた国民民主党と、実現に踏み切った高市政権に、自動車情報専門メディアとして感謝を伝えたい。
文:ベストカー編集局長T/画像:ベストカーWeb編集部
値下げの背景と今後の見通し、暫定税率は「ゴール」ではなく「スタート」
まず確認しておきたいのは、「暫定税率廃止=何が変わったのか」という点だ。レギュラーガソリン全国平均価格(資源エネルギー庁調べ)は、2024年1月9日時点で175.5円/Lだったものが2025年4月時点で186.5円/Lまで高騰、それがこの年末、2025年12月22日時点では158.0円/Lまで下がっている(本記事アイキャッチ写真にあるように東京都郊外ではレギュラー145円/L程度まで下がっている。ありがたい)。
国税庁の整理では、ガソリン暫定税率(合計53.8円/L)が本日12月31日から本則(合計28.7円/L)へ切り替わる。差し引きで25.1円/L分が「税制上は」軽くなる計算だ(より厳密にいうと今年11月に与野党が「暫定税率廃止」を決めた時点から正式廃止となる12月31日まで、段階的に補助金を積み増してきており、直近で25円/Lぶんまでガソリン価格は下がっていた)。
この値下げの最大の要因は、言うまでもなく「政治が動いたこと」にある。
暫定税率は、道路整備の財源確保を名目に1974年に導入され、2009年度には道路特定財源の一般財源化で税収は道路にひもづかない形へ移行したにもかかわらず、長らく「当分の間」のまま続いてきた。
そこにメスが入ったのは、国民民主党がこの点を訴え続けた功績が大きい。国民民主党は2021年10月の衆院選公約に「トリガー条項により暫定税率廃止」を掲げてからずっとガソリン暫定税率廃止を地道に訴え続けており、それに自民党・高市政権が物価高対策として応えたことでついに実現に至った。
なおこの年末に引き下げられるのはガソリン(揮発油)の暫定税率のみで、軽油(ディーゼルエンジン用燃料)は別のスケジュールで動いている。軽油(引取税)もガソリンと同様に「当分の間税率」が上乗せされており、上乗せ分は17.1円/L。資源エネルギー庁の整理では、軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止される予定で、すでに「つなぎ補助」で負担軽減が実施されており、物流の燃料コストを通じて物価全体の下押しにも効いてくる。
もちろん、ここで「全部解決」とは言えない。日本における自動車ユーザーの税負担は、依然、諸外国と比べて高いうえに複雑だ。自動車産業は日本において経済的基盤であり雇用を支え続けているが、自動車は取得・保有・燃料と段階ごとに積み重なっていて、平たく言うと「買いづらい状態」が続いている。
自動車産業は「百年に一度の変革期」を迎えており、日本において数少ない「世界で勝てる産業」であるはず。すくなくとも「母国」が厳しい環境においている場合ではないはず。トヨタやホンダや日産、スバルやスズキや三菱、マツダ、ダイハツには、しっかりと地元で地歩を固めてアメリカや中国の企業と戦ってもらう必要がある。
そのいっぽうで、日本の道路は誰かが整備し、壊れたら直す必要があって、そのためには税金の投入が必要だ。道路は日本経済の物流と国民の生活を支える「血管」であり、地方創生の「要」でもあり災害大国日本における生命線ともいえる。
だからこそ次に必要なのは、「自動車の税金は自動車単体ではなく社会全体で考えよう」という、モビリティ社会への考え方の転換だ。「誰に、何のために、どの段階で、モビリティ社会の維持と成長のコストを負担してもらうのか」を、国民が納得できる形に整えることが大切になる。この議論を進めなければならず、ガソリン暫定税率の廃止は“ゴール”ではなく、ようやくスタートラインに戻った出来事といえる。
今回の暫定税率廃止で「代替財源はどうするのか」という報道も出ているが、そもそもガソリン高騰対策としてこれまで累計8.2兆円の税金が注ぎ込まれてきているわけで(日本総研)、今回の政策は「取ってから配る」という政策から(厳しすぎる物価高への対策として)「そもそも取らない」という政策へ軌道修正したにすぎない。
最後に重ねてもう一度。今回の「ガソリン価格が下がる仕組み」を、半世紀越しに現実へ落とし込んだことは広く評価されるべきだ。物流費が直接反映する食品などの物価高で苦しむ人ほど、通勤や通学の送り迎えで自家用車を日常的に使う地方ほど、この政策は「効く」。他メディアであまり「評価する」という報道を見かけないのが残念だが、自動車情報専門メディアの責任として、政策を前に進める圧力をかけ続けた国民民主党と、それに応えた高市政権を含む関係者へ、感謝を伝えたい。
次は、複雑で分かりにくい自動車税制そのものを、もっと公平で、もっと納得感のある形へ。クルマ社会の未来のために、もう一段の改革を期待しております。




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