「金の卵を産むガチョウの腹を割くな!!」高市政権が掲げる積極財政は危機に立つ日本の自動車産業を守れるか?

「金の卵を産むガチョウの腹を割くな!!」高市政権が掲げる積極財政は危機に立つ日本の自動車産業を守れるか?

 日本のクルマには、取得・保有・走行の各段階で、合計9種類・年間約9兆円の税金がかかっている。アメリカや中国が自国の自動車産業を保護・優遇し、世界で勝てる産業へと育てていく中で、日本の歴代政権は自国の自動車産業に対して「逆走」ともいえる税制と政策を進めてきた。今も日本の自動車関連税制は、国内の自動車ユーザーや自動車メーカーにとって非常に厳しい。自動車産業は、日本が世界とガチで勝負できている数少ない産業のひとつ。この産業を税金で締め上げ続けていいのか――。高市政権が推し進める「責任ある積極財政」は、日本経済の土台を支える自動車産業をさらに飛躍させることが出来るはず。以下、日本の自動車税制がどれほど重いのか、どうすれば米中に対抗できる税制度にできるのか。自工会が日本政府に提出した要望資料に基づいて紹介したい。

文:ベストカーWeb編集部、画像:自工会、ベストカーWeb編集部、首相官邸(アイキャッチ写真は11月27日に経済財政諮問会議で取りまとめを行う高市総理)

【画像ギャラリー】「金の卵を産むガチョウの腹を割くな!!」高市政権が掲げる積極財政は危機に立つ日本の自動車産業を守れるか?(7枚)画像ギャラリー

日本のクルマには9種類・9兆円の税金がかかっている

 イソップ童話に『ガチョウと黄金の卵(英: The Goose and the Golden Egg)』という説話がある。以下、あらすじをざっと説明しておく。

 農夫はある日、自分の飼っているガチョウが金の卵を産んでいるところを発見する。街で卵を売ると大金が手に入り、農夫は喜んだ。ガチョウは毎日ひとつ、金の卵を産んだ。農夫は金持ちになり、豊かな生活を送った。しばらくたった頃、農夫は「このガチョウの腹には、もっとたくさんの卵が入っているのではないか?」と考え、ガチョウの腹を割いて探ってみた。結果、腹の中には金の卵は入っておらず、ガチョウは死に、農夫は貧しい生活に戻った。

 日本における自動車産業と、クルマを取り巻く環境の厳しさを考える時、上記の説話が頭に浮かぶ。さて、本題に入ります。

 まずは日本の自動車関連税制の、現状の「重さ」を確認したい。日本自動車工業会(以下自工会)の整理によると、日本の自動車ユーザーが負担している税金は、大きく「取得」「保有」「走行(燃料)」の3ステップに分かれ、その中身は合計9種類・約9兆円/年にのぼる。

取得:消費税(車体)約2.1兆円+環境性能割0.2兆円
保有:自動車税1.5兆円、軽自動車税0.3兆円、自動車重量税0.7兆円
走行(燃料):揮発油税・地方揮発油税など約3.1兆円、燃料にかかる消費税1.1兆円

 ガソリン代を払うときには、もともと税金の塊であるガソリン税の上に、さらに消費税が乗る「Tax on Tax(二重課税)」の状態。さらに、自動車重量税やガソリン税には、本来一時的だったはずの「暫定税率」も生き残ったままだ(ガソリン暫定税率については2025年末、51年ぶり(!!!?)に廃止が決まった。めでたい)。

 そのうえ、大切なクルマを大切に乗っていると、自動車重量税は新車登録から13年超で(新車時と比較して)40%増、18年超で(さらに10%増の)50%増となる。

 公共交通が整備されていない地域に住む、自家用車がないと生活できない人々にとっては、保有時や走行時の重課税は実質的な「地方差別」になっている点も見過ごせない。そういう人たちを、買い換えたくても買い換えられない状況に追いやっておいて、「古いクルマに乗っている人には重課税です」はあんまりではないか。

 日本の自動車に対する税金は、諸外国と比べてもあきらかに高い。「クルマは贅沢品だから」という昭和の価値観が、生活必需品となっている現在でも根強く浸透しているからだろう。

 クルマ好きなら誰もが感じている「日本のクルマの税金って、なんか……高くない?」というモヤモヤは、数字や実情を見れば見るほど「やっぱり重かった」というわけだ。

次ページは : それでも自動車産業は、日本経済の屋台骨だ

PR:かんたん5分! 自動車保険を今すぐ見積もり ≫

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

JMS2025に出なかった大物たちの行方は?最新の注目車対決10番勝負『ベストカー12.26号発売!』

ベストカー12.26号 価格590円 (税込み)  あの「ジャパンモビリティショー2025…