歩行者が狭い道を歩いていると、後ろから来るクルマがハイブリッド車やEVの場合、近づいてきてもわからない場合が多い。そのような時、気づいてくれないため、仕方なくクラクションを鳴らしてしまったドライバーも多いのではないだろうか。ではそもそもハイブリッド車やEVの低速域では音は発生しないのだろうか? 法律ではどのようになっているのか、解説していこう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
そもそもハイブリッドの音、EVの音はどんな音がする? 無音?
ガソリンエンジン車はアクセルを踏めばエンジンが回り、排気音や吸気音などが自然に発生します。しかしハイブリッド車(HV)はモーターのみで走行する場合、内燃機関の回転音がそもそも発生しません。当然、BEVもモーターの音だけなので静かです。
結果として、ゆっくりと近づく時には人間の耳にはほとんど音が聞こえない「静かすぎる」状態になりやすいのです。これが「プリウス、後ろから来ていたのか!」と歩行者が驚く原因でもあります。
この静かさは乗り心地や騒音低減のメリットでもある一方、歩行者や自転車利用者が周囲のクルマの接近に気付かないという安全上の課題を生んでいます。そこで登場するのが「車両接近通報装置」です。
車両接近通報装置が義務化されている

ハイブリッド車やEVが低速時にほぼ無音で走る安全課題を解決するため、日本では国土交通省が車両接近通報装置(Acoustic Vehicle Alerting System:AVAS)の義務化を進めてきました。2010年頃から自動車メーカーは自主的に「車両接近通報装置(OFFをスイッチもあり)を装備してきましたが、2018年3月7日以降は保安基準の改正によってHVやEVへの装備が義務付けとなりました。
2018年3月から新型HVやEV、2020年10月から継続生産車への装着が道路運送車両の保安基準として義務付けられています。これはモーター走行時に歩行者等に接近を知らせるための発音装置を備えることを求めるものです。
義務化された装置は、基本的に車速が低い時に自動的に音を出す(例:時速20km/h以下)。また装置はドライバーが任意に消音できない仕組みとされ、常に安全確保のために鳴るようになっています。
この法律は「違反」かどうかという表現ではなく、「装着義務」があるというルールであり、義務付けられた対象車種はこれらの装置を備えていなければ公道を走らせることができないという形で実効性が保たれています。
車両接近通報装置の音は、メーカーによっても車種によって違うの?
車両接近通報装置が義務化されたことで、各自動車メーカーは法規的な要件を満たしつつも独自の音を開発しています。クルマの特性やブランドイメージに合わせた「音色」が設定されることが一般的です。
独特の音色については、前述の交通安全環境研究所が検証した、車両接近音の音色違いによる認知実験の結果で詳しく報告されています。
メロディやチャイムカテゴリーのような音だと、エンジン音よりも10dB程度低い音量でも、エンジン音と同等の認知性を確保できています。ただメロディやチャイムだと、不快に感じることもあるため、ノイズに聞こえない範囲で確実に車両接近を通知できるよう、各自動車メーカーが音質や音量を作り込んでいるのが今の姿です。
トヨタでは2010年の3代目プリウスから、車両接近通報装置の搭載が始まりました。これが車両接近通報装置の世界初搭載となります。EV走行における、歩行者がクルマに気づきにくいというデメリットを解消するに講じた策です。
使われた音色は「コォー」や「ヒュー」という音で、不快ではありませんが、気づいてもらうための音としては、少し存在感が弱かったように思われます。
2018年のカローラスポーツからは、音を一新。これまでよりも高めの音で「コォー」から「キーン」という感じの音に音階が上がっていく。以前よりも、聞き取りやすくなり、クルマに気付く機会も多くなりました。さらに2020年のヤリスで音は「ガー」「ゴー」という系統のものに変化します。
以降は、カローラスポーツのものとヤリスのものをベースにしながら、トヨタは車種専用にサウンドをチューニングしていくこととなります。
ハリアーでは少し重厚感のある音へ、アクアでは「ブーン」「ビーン」という感じの震え系の音へ、カローラクロスでは宇宙船の移動音のようなイメージの、柔らかくも耳に残る音になりました。











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