アメリカンスポーツの最高峰、シボレーコルベットが7年ぶりにフルモデルチェンジし、8代目へと生まれ変わった。
1976年まで使用していたサブネーム、スティングレィを復活させるとともに、なんと約65年の歴史を持つ、FR(エンジンをフロントに積みリアを駆動する)の駆動方式を、MR(ミドシップ、後の車軸の前にエンジンを搭載しリアを駆動する)へと、8世代目にして初の大変革を敢行したのだ。
すでに2020年1月10日に日本でも発表され、予約受注が開始されている。価格は、2LTクーペが1180万円、3LTクーペが1400万円(いずれも右ハンドル)。
その8代目コルベットを、アメリカ・ラスベガスとその近郊、サーキットからワインディングロード、一般道まで、モータージャーナリストの渡辺敏史氏が徹底試乗した!
文/渡辺敏史
写真/ゼネラルモータース ゼネラルモーターズジャパン
初出/ベストカー2020年4月26日号
【画像ギャラリー】アメリカ人の「魂のヒーロー」歴代コルベット約65年の軌跡
FRを捨てなぜミドシップを選んだのか?
GMがシボレーブランドで販売するコルベット。初代=C1の登場は1954年と、銘柄別でいえば最も長い歴史を持つこのスポーツカーは、この新型が66年目にして8代目=C8となる。
その老舗の暖簾を守り続けるために選択したのは、史上最もドラスティックな変貌だ。
代々のコルベットは、モノコックではなくフルフレーム構造のシャシーに軽量なファイバーボディを組み合わせた2シーターFRの体を採ってきた。
搭載されるエンジンはごく一部の例外を除きアメリカ車の大定番といえるOHV・V8。サスペンションは2代目以降、駆動輪である後軸側にリーフスプリングを横置きしてバネ下重量を低減するユニークなメカニズムを用い続けている。
対してC8が採ったのは2シーターのリアミドシップレイアウトだ。シャシーはフルフレームではなくフェラーリF8トリブートやホンダNSXなどが採用するアルミスペースフレーム構造に、サスは4輪ともにコイルスプリングを用いるダブルウィッシュボーンに改められている。
この期におよんでのミドシップ化の決断、その背景にはスポーツカーの極端な高性能化、さらにレーシングパフォーマンスも関係している。
もはや700psオーバーでも驚かなくなった市販スーパースポーツ領域では想定どおりのトラクションを得るのがトランスアクスルでも難しく、コルベットのスポーティネスを証明するうえで重要なGTEやGT3カテゴリーでも戦闘力の低下が顕在化……とあらば、もう残された手はミドシップしかなかった、という訳だ。
ともあれFRは徹底的にやり尽くした、と話を聞いたエンジニアの顔は晴れやかでさえあった。
いっぽうで、そのリアゲートに収まるエンジンはLT2と呼ばれるスモールブロックのOHV・V8。アメリカの最も伝統的な形式のエンジンだ。
中身はC8に合わせて最新のアップデートが加えられており、最高出力は495ps、最大トルクは637Nmを発揮する。
これに組み合わせられるトランスミッションは新開発のGMトレメック製8速DCTだ。動力性能は0〜60マイル(96km/h)が2.9秒、最高速は約320km/hと、これは先代C7になぞらえれば650hpのZ06と同等以上ということになる。
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