中国市場の趨勢は、上海や北京、広州、重慶など、主要都市を飛び回らなくても、タイ市場に注目していれば自ずとわかる。2025年のバンコク国際モーターショーにおける中国メーカーの成約状況から、中国における現状を推測してみよう。
※本稿は2026年1月のものです
文:鈴木直也/写真:BYD、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年2月10日号
「中国メーカーはすべて急成長」というわけではない
2025年のバンコク国際モーターショー(BIMS)における中国メーカーの成約状況は、彼らの現在の実力を映し出している。
最大手のBYDは主力モデルに対して大幅な値下げ攻勢をかけたが、結果は明暗が分かれた。
BYD ドルフィン(コンパクトカー)は大幅値下げにより約4000台を成約し爆発的なヒット。
BYD Atto3(ミドルサイズSUV)は10万バーツ(約40万円)の値下げを断行するも、販売増は限定的にすぎない。
ここから読み取れる事実はシビアだ。「安ければ売れる」のは、低価格帯のエントリーモデルに限られ、ある程度の価格帯(ミドルレンジ以上)になると、顧客はブランドへの信頼、リセールバリュー、あるいは「所有する満足感」を求めはじめる。
これは、中国国内で激化している価格競争とまったく同じ構図だ。利益を削って値下げをしても、需要を喚起できるセグメントには天井がある。この「値下げ限界論」が、タイ市場でいち早く顕在化している。
もうひとつ特徴的なのは、ブランドの新陳代謝が急激に進行していることだ。
中国メーカーを「中国勢」と一括りにするのはもはや不適切で、タイ市場では勝者と敗者の選別が進んでいる。
急成長グループの「GAC、AION、Changan」は前年比ほぼ倍増の勢いで、Aion VやDeepal S07など、デザイン性と機能性を兼ね備えた中価格帯SUVを投入し、「安かろう」からの脱却に成功しつつある。
急落グループの「MG、NETA」はシェアを大きく落とし、Netaは資金繰りの悪化から6月に経営破綻。低価格EVの競争激化に巻き込まれ、ブランドの新鮮味が薄れたことが敗因と言われている。
この勢力図の変動は、中国本土でのトレンドそのまま。中国国内で勢いのある新興勢力が、半年から一年のタイムラグを経てタイでも覇権を握る。逆に言えば、タイで失速しているブランドは、本国でも構造的な問題を抱えている可能性が高い。
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