2020年4月8日、日本自動車工業会(JAMA)が『2019年度軽自動車の使用実態調査』という報告書を発表した。
この調査は、1981年より隔年で実施してされており、軽自動車の使用状況や軽自動車ユーザーの生活意識・消費行動の実態から、社会の要望に対して軽自動車が置かれている位置づけを明らかにすることを目的としている。
その調査から、現在の軽自動車の使い方や存在意義、ユーザーの意識などが判明した。今回は日本自動車工業会のデータも併せてみることでわかった、日本人の生活に溶け込んだ軽自動車の実態と、その課題について自動車評論家の御堀直嗣氏に考察・提言してもらった。
文/御堀直嗣
写真/DAIHATSU、SUZUKI、MITSUBISHI、HONDA
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■毎日のクルマ利用が7割! 軽トラックは65歳以上が5割強を占める
日本自動車工業会(JAMA)は、1981年から隔年で行っている軽自動車の使用実態調査について、2019年度の結果を発表した。
軽自動車のなかでも乗用車系の購買は、65歳以上の高齢者が約3割へ増えている。また、年収が400万円未満の人も3割以上を占めている。使用頻度は、ほぼ毎日というのが7割以上に達する。複数所有について、軽自動車のみの世帯が増えているという。
商用車系では、バンでは65歳以上が約4割で、その用途は主に仕事で使うというのが5割におよぶ。トラックも、65歳以上が5割強に増加し、その約6割が農業で使われている。
これらから見えてくるのは、高齢化社会だ。ただし、その社会的課題ばかりではなく、活躍する高齢者が増え、隠居して年金生活に入るのではなく、現役で仕事に励む姿が目に浮かんでくる。
同時に、安全装備への意識が当然のように高まり、衝突被害軽減ブレーキや、ペダル踏み間違いでの加速抑制装置を装着したい意向が強まっている。それでも、果たして正しく作動するのか、車両価格が高くなってしまわないかといった不安ものぞかせている。
こうした近年の動向とともに、従来通り普遍的な軽自動車への期待も明らかになる。
■生活必需品としても立場を確立した軽自動車
全国軽自動車協会連合会の2019年の調査結果では、地方での軽自動車の普及率が高く、1世帯当たりの保有台数が多いのは、鳥取県、長野県、佐賀県(以上3県は同数)、島根県、山形県(以上2県は同数)、福井県といった順で、日本各地において公共交通機関の整備が限られている地域といえる。
これらに対し、たとえば東京は最下位であり、次いで神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県の順で、首都圏を中心としながらも関西地域は公共交通網の整備によって、必ずしもすべての世帯で軽自動車を所有しなくても生活が成り立つ実態が見えてくる。
軽自動車と一言でいっても、単なる消費財(余暇などのため必ずしもあってもなくても済む物)ではなく、生活必需品である地域があるということだ。
そうした実態は、軽自動車を利用する人たちの声からも伝わる。ことに女性の約9割は軽自動車がなくなったら困るとし、60歳代以上も約8割が軽自動車の必要性を答え、そのうち約6割は運転を続けたい希望を持つ。
登録車を含めたクルマ販売の約3割を軽自動車が占めるようになっているが、都市部で想像する以上に、軽自動車の存在意義は高い水準にあるといえる。
軽自動車が、なぜここまで高い期待をもたれるようになったのか。単に、車両価格や維持費といった経済性が登録車に比べ優位だというだけではないはずだ。
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