2026年4月16日、ホンダは新型「INSIGHT(インサイト)」を正式発表、翌4月17日から発売する。価格は550万円、販売は3000台限定、ベースは中国向けEV「e:NS2」とのこと。「えっ、それ大丈夫なの?」と思った読者は多いはずだ。かくいう筆者も最初はそう思った。ただ中身を丁寧に追っていくと、補助金を含めるとなかなか競争力は高く、単に「売るものがないから中国から日本市場へ持ってきた」というよりは、「まずは3000台導入してみて、いけるようならこの路線で突き進む」という、わりと野心的なモデルであることがわかった。順を追って解説しよう。
文:ベストカーWeb編集部、写真:池之平昌信、本田技研工業
【画像ギャラリー】ホンダ新型インサイト生まれ変わった4代目の全画像(49枚)画像ギャラリーインサイトがまさかのBEV化&SUV復活! 1999年から27年目の変身
「インサイト」という車名には感慨深い読者も多いだろう。1999年、ホンダが世界に向けて放った初代インサイトは、ホンダ初の量産ハイブリッドカーとして登場した2ドア・2シーターの革命児だった。徹底的に空力性能を磨き上げた特異なスタイルで登場し、あの細長いボディ、あの燃費への執念は、当時のクルマ好きに強烈な印象を残した。発表当時(1999年9月)、量産車として世界最高燃費を記録。競技実験車みたいな尖ったクルマだった。

その後、2代目・3代目とセダンスタイルに衣替えし、国内では2019年に3代目が終了。以来、インサイトという名前は日本から消えていた。
それが今回、4代目として”BEVのクロスオーバーSUV”で復活したわけだ。しかも5人乗り、荷室も広い実用的な一台に生まれ変わっている。「名前は一緒だけど……ホンダ、またやった?」という声が聞こえてきそうだが、ホンダはあえてこの名を選んだ。「電動化の新しい時代を切り拓く」という初代の精神を引き継いでのことだ。その心意気は、素直に受け取っておきたい。
正体は中国向けe:NS2系。でも”ただの輸入流用”では終わらない
さて、本題に入ろう。今回の新型インサイト、その素性は東風Honda(中国)が販売するEV「e:NS2」がベース。本誌編集部がホンダ開発者へ取材したところ、「中国向けBEV、e:NS2がベースのクロスオーバーSUV」と明言しており、寸法スペックも完全に一致する。全長4788mm、全幅1838mm、全高1570mm、ホイールベース2735mm、モーター出力150kW・トルク310Nm、バッテリー容量68.8kWh――すべてe:NS2の諸元と重なる。
「中国で販売されているクルマのうち、よさそうなのを日本に持ってきた」と言えばその通りだ。コスト効率の観点からすれば合理的な判断でもある。ただ、ここで見逃せないのは開発者の系譜だ。4代目インサイトの開発をまとめた小池久仁LPLは、中国でe:NS2の開発にも関わっている。つまり、「中国モノを日本にも流用した」というよりは、「ホンダ内で一貫した開発哲学をもって作り上げたBEVが、日本にやってきた」という整理もできる。
CR-Vより長くて低い! “ちょうどいいサイズ”の実力を侮るな
スペックや写真を見ると「日本の道には……デカくね……?」とに思えるかもしれないが、実際のサイズは意外とこなれている。撮影時に実物を見た本企画担当編集者も、「案外使いやすそうだな」というイメージ。全体的にボディラインがシャープな印象だから余計そう感じるかもしれない。
全長4788mmはCR-V(4700mm)より88mm長いが、全高は1570mmとCR-Vより110mmも低い。全幅も1838mmで、ZR-Vの1840mmとほぼ同等。最低地上高は190mmで、ハリアーやZR-Vと同レベルのSUVらしい数値だ。タイヤも225/50R18と本格的な構成を持つ。
「SUVらしい見晴らしのよさがありながら、ドイツ車的な低重心シルエット」という、なかなか贅沢なパッケージングなのだ。実際、撮影時に乗ってみたところ、ヒップポイントが高く乗降性がよかった。前席の座面は地上から680mmの高さで、楽な姿勢で乗り降りできる。後席もリクライニング機能つきで、長距離移動でも快適だ。
荷室も実測で奥行き1875mm・左右幅1100mmという大容量。後席は6:4分割で倒すことができ、ラゲッジボードで上下段の使い分けも可能。「週末のドライブ+大きな荷物」も余裕でこなせる実用力がある。
車両本体価格550万円の衝撃……でも補助金を入れると実質360万円台も見えてくる
そして最大の関心ごと、価格だ。車両本体価格は550万円(税込)。正直に言おう。高い。トヨタbZ4Xの上級グレード(Z・FWD)と同価格なのは「揃えてきたんだな」と分かる。
そして新型インサイトはBEVのみのワングレード。つまり補助金が出る。この補助金を絡めると、数字の見え方が変わる。
国のCEV(クリーンエネルギー車)補助金は、2026年1月1日以降の新車新規登録車からEV向け上限額が130万円に見直されている。申請受付は3月31日から始まっており、新型インサイトも対象となる(最終的な個別交付額は補助対象車両一覧で確認が必要)。さらにもし東京都在住なら、令和8年度制度でBEVに対して自動車メーカー別最大60万円の補助を設定。申請受付は4月30日開始だ。
単純計算になるが、国130万円+東京都60万円=190万円の補助が受けられれば、実質負担は360万円台になる。条件次第で東京都はさらに上乗せ(再エネ導入やV2H機器との組み合わせで最大40万円追加)の余地もある。「550万円は強気すぎ」という第一印象が、ここでかなり変わってくるはずだ。
装備面を見ると、この価格帯の説明もつきやすい。BOSE製12スピーカーのプレミアムサウンドシステム、アロマディフューザー(6種のカートリッジ選択式)、インテリジェントヒーティングシステム(シート・ステアリング・ドアトリム・ダッシュパネルまでヒーター内蔵)、LEDアンビエントライト、12.8インチのディスプレイオーディオ、センターカメラミラー……。ざっと並べるだけで、「高いなりの理由」は確かにある。
性能表を見るかぎり、走りも手を抜いていない。NORMAL/SPORT/ECON/SNOWの4モードを用意し、SPORTモードではアクティブサウンドコントロールが加速感を演出。つまり「めっちゃそれっぽい走行音」が車内スピーカーからドライバーに響く仕組み。「電気モーターの無音EVだから走る楽しさゼロ」ではなく、ホンダらしい”操る喜び”を残している。急速充電は約40分(10→80%目安)、AC外部給電は最大1500Wに対応するなど、日常ユースからアウトドアまでカバーする実用性も忘れていない。
こういう一台を出してくるのが「ホンダらしさ」とも言える
「中国ベース」「3000台限定」「550万円」。この3つを並べれば、確かに「あの……ホンダさん、本気でBEVを売る気がありますか……?」という疑問は出る。限定3000台というのは、裏返せば「失敗しても傷が浅い」数字でもある。
だが一方で、「日本のEV市場を慎重に見極めながら、まず質にこだわった一台を出してきた」と読めなくもない。「インサイト」という名を復活させたことも、「電動化時代を切り拓く」という、初代の意志を現代に引き継ぐホンダなりの宣言ではないか。




















































コメント
コメントの使い方