三菱自動車が2026年5月29日に発表した新中長期ビジョンには、「三菱自動車らしさを体現するパジェロを今年度中に投入する」というファン待望の一文が刻まれた。長く「新型クロスカントリーSUV」と呼ばれていた三菱の新型車が、ついに公式に「パジェロ」と名指されたわけだ。そしてこの「中長期ビジョン」を細かく読み解くと、見えてくるのはパジェロ単体の話ではない。三菱は「あれもこれも」を捨て、「これこそ三菱」と言えるクルマに経営資源を集中する——そんな大きな覚悟だ。今後6年間で13車種を投入し、オフロード商品群とアセアン商品群に資源を集中。重点国にはフィリピン、ベトナム、そして日本が名を連ねた。新型パジェロは、かつての栄光を懐かしむための一台ではない。三菱がもう一度、三菱らしく戦うための「旗」である。本稿では三菱自動車の中期経営計画「新中長期ビジョン」全体から、「なぜ今パジェロなのか」を読み解く。
文:ベストカー編集局長T、写真:三菱自動車工業
【画像ギャラリー】歴代パジェロと新「中長期ビジョン」資料全公開!! これは…復活が期待できる!!!!(51枚)画像ギャラリー今年ついに新型パジェロ!! だが、本当に見るべきは三菱の“覚悟”だ
2026年5月29日、三菱自動車工業が「2026年度から2030年代に向けた新中長期ビジョン」を発表した。掲げたスローガンは「尖った商品・ブランドの強化でお客様満足と企業価値を向上」。そして主要施策のトップに据えられたのが、〈三菱自動車らしさを体現するパジェロを今年度中に投入する〉という一文だ。
1980年代~2000年代前半に大ヒットしたパジェロ。「クロカン」の代名詞となり、パリダカで社会現象を起こし、テレビ番組の賞品として「タワシか、パジェロか」とお茶の間で話題となったこのクルマの日本仕様が生産を終えたのは2019年(4代目)だった。あれから何度「パジェロは戻ってくるのか」と問われ続けてきたことか。その答えが、ついに公式資料の冒頭に書かれた。さらに注目は「パジェロシリーズで投入」の一文。
しかもパジェロはパジェロ単体で帰ってくるわけではない。かつて市場を席巻した「パジェロジュニア/パジェロイオ」、「パジェロミニ」もともに復活し、市場に投入する。それも2031年度までに。三菱は公式にそう宣言したわけだ。
そしてそのうえで、今回のビジョンでパジェロが象徴しているのは、単なる名車の復活ではない。三菱が「どんな会社なのか」を、もう一度自分たちで定義し直したという宣言だ。編集部が今回の資料を最も重く受け止めたのは、その“覚悟”の部分である。
三菱は「尖った商品・技術」に集中する会社へ戻る
新中長期ビジョンの背骨は、ブランドを軸とした「成長戦略」と、収益体質を鍛え直す「構造転換」を同時に走らせる二本立てだ。地政学リスクや環境規制の見直しなど、先の読めない事業環境のなか、従来の中期計画の延長線では戦えない——三菱はそう判断した。
ここで効いてくるのが、「尖った」という言葉である。三菱は「あれもこれも」から「これこそ三菱」へ舵を切った。 これは編集部の意訳ではなく、資料全体を貫くトーンそのものだ。
思い返せば、三菱の栄光は、いつだって尖った技術と尖ったクルマから生まれてきた。 パリ・ダカールを連戦連勝したパジェロ、世界を熱狂させたランエボ、そして世界初の量産BEVや、世界に認められたPHEV——。アウトランダーPHEV、トライトン、デリカミニ。いずれも「万人向けの最大公約数」ではなく、「これが欲しい」と名指しで選ばれるクルマだ。今回のビジョンは、その原点に経営資源を集中し直す宣言だと読める。

技術面でも方向性は明確だ。三菱が「磨く」と明言したのは、四輪制御、電動化、そして知能化。ラリーで鍛えた四輪制御技術と、過酷な路面でも壊れず走りきる耐久信頼性は、三菱の“遺伝子”そのもの。BEV一辺倒の横並び競争ではなく、PHEV/HEVと四輪制御、悪路走破性を組み合わせた「電動オフロード」という独自路線で勝負する構えだ。
2026〜2031年度に新型車13車種!! 軸はオフロード商品群とアセアン商品群
商品戦略の数字も具体的だ。三菱は今後6年間(2026〜2031年度)で、新型車13車種を投入する。経営資源を集中させるのは、自社の強みを最も発揮できる「オフロード商品群」と「アセアン商品群」の2領域だ。
電動化の中身も整理された。13車種のうち、HEVが5車種、PHEVが5車種。EV(BEV)はアライアンスや協業を活用して補完し、自社開発のリソースはHEV/PHEVに集中させる。全方位に手を広げるのではなく、勝てる電動化に絞る——ここにも「これこそ三菱」の発想が表れている。
新型パジェロそのものについては、それなりに情報が出てきている。評価の高い現行トライトンのラダーフレームを使い、クロスカントリーSUVとして専用開発され、タイで生産される。価格、発売日、ボディサイズ、エンジン排気量、グレード構成、国内導入台数などは、いずれも現時点では未公表だ。ここは速報の続報を待ちたい。
またオフロード商品群の計画ラインナップには「Minivan」も記されている。オフロードでミニバン、これはもう新型デリカの登場に他ならない。パジェロに続き次期デリカも三菱独自開発が決まった。これはもう快進撃が約束されたといってもいいのではないか。おれたちの三菱が帰ってきたか。この勢いでランエボやコルトラリーアートも復活してくれまいか。頼むよ。
重点国に“日本”が返り咲き!! パジェロ旗艦店も新設構想
国内読者にとって、今回のビジョンで見逃せないのが地域戦略だ。三菱は成長が著しい重点国として、フィリピン、ベトナム、そして日本を名指しした。アセアンに軸足を置いてきた三菱が、ホームマーケットである日本を改めて“重点国”として明示した意味は大きい。
その日本市場で象徴的な役割を担うのが、やはりパジェロだ。会見では、新型パジェロの投入を機に「ハイブランドの旗艦店舗」を新設する構想も語られた。高価格・高付加価値の旗艦モデルにふさわしい接客や店構え、さらにはカスタマイズパーツの展開まで——都市部の空白地帯への出店も含め、売り方そのものを尖らせていく狙いがうかがえる。クルマだけでなく、買う体験ごとブランドを引き上げる発想だ。
加えて三菱は、新車販売に中古車販売、販売金融、アフターサービス、用品などを加えた「バリューチェーン事業」を強化し、クルマ1台当たりの価値を最大化する「収益アップ戦略2.0」も掲げた。1台売って終わり、ではなく、保有期間まるごとで稼ぐ。地味だが、ブランド再建を下支えする重要な一手だ。
熱効率48%エンジンを自社開発、それでも残る“復活への課題”
技術的なハイライトのひとつが、HEV/PHEV用ガソリンエンジンの自社開発だ。三菱は、世界トップクラスとなる熱効率48%を目指すと表明した。ここで誤解したくないのは、ゼロからの完全新設計ではない、という点。会見では、既存エンジンを徹底的に改良することで48%の実現を狙う、という趣旨が説明されている。手堅く、しかし野心的な目標だ。
財務目標も整理しておこう。三菱は2029年度に営業利益1,600億円、営業利益率4.5%、ROE10%を目標とし、2030年度以降は営業利益2,000〜2,500億円、営業利益率5.5%以上、ROE12%以上を目指す。さらに2029年度までの4年間で約1兆円の成長投資を行い、総額1,000億円規模の株主還元も実施する構えだ。
前中計「Challenge 2025」では販売台数や営業利益の目標未達もあった一方、台当たり売上高の改善や日本事業の復調、中国市場からの撤退によるリスク低減といった成果も残した。その反省と手応えの両方が、今回の数字に織り込まれている。
もちろん三菱が背負う課題は小さくない。中国勢の凄まじい開発スピードと価格競争、新商品を途切れさせずに投入し続けられるか、販売現場で「尖った三菱」を本当に訴求しきれるか、そしてコスト競争力をどう確保するか。どれも一筋縄ではいかない。























































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