サービス業従事者の約半数がカスタマーハラスメント(カスハラ)の被害を受けているという。自動車ディーラーも例外ではない。元営業マンとして実際にカスハラを経験してきた筆者が、その実態と、販売店が従業員を守るために何をすべきかを考える。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】「お客様は神様」ではない! 自動車ディーラーはカスハラ対策を早急に!!(3枚)画像ギャラリー商談室とサービスフロントは、カスハラの温床になりやすい
自動車ディーラーはオープンなスペースに見えて、実際には顧客とスタッフが1対1になる場面が多い。その最たるものが商談だ。個室や半個室で向き合う商談の場では、周囲の目がなくなった途端に態度を変える客が現れる。若手や女性スタッフを相手と見るや、暴言を浴びせ、高圧的な態度で言いなりにしようとする行為は、決して珍しいことではない。
サービスフロントも同様に「口撃」を受けやすいポジションだ。「値引きが少ない」「修理費用が高い」「時間がかかる」など、正当な説明をしていても聞く耳を持たず、一方的な要求を繰り返す客は後を絶たない。筆者自身、顧客宅で軟禁に近い状態に置かれたこともあれば、「死ね」と言われたこと、電話で「家族ごとヤッてやる」と脅されたこともある。こうした問題行動が人目につかない場所で発生するからこそ、被害は表面化しにくく、深刻さが見えづらい。
スタッフを一人にしない——組織で守る仕組みが不可欠だ
カスハラ被害を減らす第一歩は、顧客とスタッフが2人きりになる機会をできるだけなくすことだ。担当制は維持しつつも、顧客対応は店舗全体で行うという意識を組織として持たなければならない。
これまで問題化されてこなかったカスハラの多くは、被害を受けた本人と加害者しか知らないまま埋もれてきた。被害を自ら申告しにくい空気があるからこそ、管理職が率先して「店内で今何が起きているか」を把握する努力が必要だ。モニタリングの整備はもちろん、スタッフが「困った」と声を上げた瞬間に上席者がすぐに動ける体制を整えておくべきである。顧客に叱責されることは恥ではない。声を上げることを当然の行為として組織が認めることが重要だ。
また、個々のスタッフも「一人にならない」を行動原則にしてほしい。やむを得ず孤立した状況で脅迫や強要に遭った場合は、スマートフォンの通話を繋げたままにするか、スタッフ用インカムのスイッチを入れっぱなしにして、第三者が会話を聞ける状態をつくることが自衛策として有効だ。
社用携帯こそ、最も管理が手薄なリスクだ
見落とされがちなカスハラの温床が、営業スタッフに貸与している会社携帯だ。顧客と直接つながっている社用携帯は、時間を問わず一方的な連絡を受け続けるリスクを常に抱えている。管理職は社用携帯の使用実態にも目を向け、「営業時間外は応答しなくていい」という明確なルールを設けるべきだろう。本気で従業員を守るつもりがあるなら、社用携帯を廃止してしまうことも選択肢に入れるべきだ。
カスハラはすでに個人の裁量で対処できる水準を超えている。スタッフ一人ひとりの我慢や機転に頼るのではなく、組織として行動規範を定め、それを現場に浸透させることが急務だ。
全国の自動車ディーラーには、一刻も早く具体的な対策を講じてほしい。客は何を言っても許される存在ではない。それを組織として明確に示すことが、スタッフを守る出発点となる。
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