ホンダの二輪事業は、2026年3月期に世界シェア約4割となる2210万台を販売した。同社が10月9日に公開した統合報告書「Honda Report 2026」では、ホンダ二輪事業の責任者である加藤稔・二輪・パワープロダクツ事業本部長により、世界の二輪市場の見通しや中国メーカーの台頭による競争環境の変化、そして今後ホンダが取り組む具体策が示されている。レポートに示された、世界ナンバーワン二輪メーカーの現状と今後の展開を整理してみよう。
ホンダの世界シェアは約4割。圧倒的なNo.1だ
最初に把握しておきたいのは世界の二輪市場とホンダの現状について。「Honda Report 2026」に記された数字を抜き出しつつ、編集部調べのデータも織り込みながら示してみる。
- 世界の二輪市場規模:約5000万台/年
- ホンダの二輪販売台数:2210万台(世界シェア約4割)※2026年3月期データ
- 2030年前後の二輪市場見通し:約6000万台規模へ成長
世界では年間で約5000万台規模のオートバイが販売されており、そのうちの約4割がホンダ製だ。もちろん圧倒的な世界ナンバーワンで、2位のインドメーカー・ヒーロー(約650万台/年)に3倍以上の差を付けている。ちなみに国産メーカーではヤマハが約500万台(同4位)、スズキが約226万台(7位)で、スクーターなどのコミューターを持たないカワサキは約50万台(20位前後)となっている(ホンダ以外の数字は編集部調べ)。
このランキングもアジア勢、特に中国とインドの勢いを感じさせるが、ホンダのレポートも需要拡大の中心は世界最大の二輪市場・インド(約2100台/年。編集部調べのインド自動車工業会データ)を含むグローバルサウスで、人口増加や所得向上を背景として、中長期的に二輪車の需要はさらに拡大し、2030年頃には約6000万台規模にまで成長すると見込んでいる。
現にホンダが2025年、過去最大の二輪販売台数を記録した国と地域は33にも上るという。グローバルに見た場合、二輪はまだまだ成長著しいマーケットなのだ。
少々余談ながら、日本国内における二輪車の販売台数は約40万台/年。最盛期の1980年代と比較すると1/10程度に縮小している。その減少分の多くを占めるのは原付一種で、原付二種以上は微増または横ばい…というのがざっくりした現状だが、以前のように日本人の嗜好に合致した商品がなかなか登場しないのは、こうした市場構造の変化にも原因があるのだ。
中国&インドが存在感を増す中で、ホンダの進む道とは?
二輪市場が成長する一方で、ホンダは足元の競争環境が大きく変化していると分析している。レポートが挙げている変化は次の4点だ。
- 中国メーカー:高いコスト競争力を背景に、高スペックな商品や先進技術を相次いで投入し、欧州をはじめとする海外市場で急速に存在感を高めている
- インドメーカー:欧州の著名ブランドや技術力を活用し、商品力とブランド認知を高めながらグローバル展開を加速している
- 電動化:進展の度合いが地域ごとに異なる
- 政策面:関税や現地生産要件など、不確実性が高まっている
編集部からの補足となるが、中国メーカーでモーターサイクルを主力商品とするメーカーでは、CFMOTOやQJMOTOR、ZXMOTOなどが急速に力を付けており、リーズナブルな価格(同クラスの日本勢よりもかなり安い)と充実した装備、MotoGPや世界スーパーバイク選手権などでのレース活動、さらには若年層向けSNSプロモーションなども積極的に活用し、欧米での存在感を急速に高めている。
さらに、インドのロイヤルエンフィールドはスクーターなどを持たない、モーターサイクル専業メーカーにして100万台以上の年間販売台数を持ち「250〜750ccクラスでは我々がセグメントリーダー」と以前から公言している。また、トライアンフは400ccの単気筒モデルをバジャジと協業してインドで生産するなど関係性を深めている。電動化の進捗スピードはここ数年で地域差が明確化したし、米トランプ政権により、関税の不確実性が高まったのは広く知られるとおりだ。
このように、ホンダを筆頭とする日本メーカーを取り巻く環境は厳しさを増しており、現に国内メーカーの開発者と会話すると、こうした新勢力を真剣に脅威と受け止めている様子が強く伝わってくる。ホンダが1969年にCB750フォアを発売し、栄華を極めていた欧米勢を一気に衰退させてしまったように、立場を変えて同じことが起こる可能性はゼロとは言えないのだ。
話を戻すと、こうした変化に対し、ホンダは二輪事業を「成長市場」「成熟市場」「電動化」の3つを軸に分けて展開するという。
- 成長市場:生産能力の増強と現地調達・生産効率の向上により、ニーズに沿った商品を適正な価格で届ける。
- 成熟市場:高付加価値モデルや先進技術を投入する。
- 電動化:地域ごとの需要や規制を見極め、必要とされる地域から商品を投入する。
さらに、中国メーカーが攻勢を強めている欧州については「独自技術の価値が重要」としており、DCTやEクラッチ、さらには現在開発中のV型3気筒(+電動過給機)エンジンに代表される先進的なモデルの開発を進めて、これまで培った走行性能や信頼性を磨き続けるとしている。
ホンダが今後、二輪製品で取り組むこととは?
ここからは、ホンダが今後の二輪製品と事業で具体的に何を行なうのかをレポートに沿って見ていく。
インドの生産能力を625→800万台へ。ブラジル・トルコも供給体制を拡大
成長市場での商品供給体制強化の柱はインドだ。現在の年間生産能力625万台を、2028年に約800万台へ拡大する計画だという。インドは重要な市場であると同時に、他地域への供給拠点としての役割も高まっており、現地調達の拡大や自社工場での自動化によって品質と価格のバランスを高める。
中南米・アフリカなどの成長市場では、インドで培ったコスト競争力や開発効率を生かして適正な価格の商品を投入する。ブラジルでは生産能力の拡大を進め、トルコでは生産を開始して供給体制を広げる。需要に近い場所で生産することで、輸送や為替の変動にも対応しやすくなるとしている。
1つのプラットフォームからさらに多様なモデルを展開
商品開発では、1つのプラットフォームから多様なモデルを展開できる体制を整える。地域ごとの使われ方や嗜好に応じた商品を効率よく投入し、需要拡大に応えるとともに商品群を広げていく。
Eクラッチ/DCTとV型3気筒エンジンで「独自技術」を武器に
成熟市場では、高付加価値モデルを投入し、走る楽しさ、快適性、扱いやすさを高めることで代替需要に応える。その中核が独自技術だ。DCTやEクラッチはクラッチ操作の負担を軽減するとともに、スポーティーで滑らかな走りを実現する技術と位置づけている。さらに開発中のV型3気筒エンジンに代表される先進的なモデル開発も進める。
コネクテッド機能「Honda RoadSync」の搭載機種を拡大
新たな価値として、Honda RoadSync/Honda RoadSync Duoの搭載機種を拡大する。Honda RoadSyncは移動中の情報取得や利便性を高めるスマートフォンとの連携機能で、機能の拡大も進めるという。
安全装備の装着率向上とCO2排出量削減
二輪市場の健全な発展に向け、安全装備の装着率向上、各工場でのCO2排出量削減、サステナブルマテリアルの採用などにも取り組む。
サンリオ、オニツカタイガーとのコラボで新たなファン層へ
サンリオやオニツカタイガーとのコラボレーションなどを通じて、これまで二輪車に接点が少なかった人にもバイクの魅力を届け、市場の裾野を広げる。

2026年9月に公開されたオニツカタイガーとのコラボモデル「Onitsuka Tiger Honda Mid Sports Concept」。正式発表はないがベースはCB750ホーネットのようで、かなり市販に近いデザインを持つ。「CBR750R」としてまもなく正式発表か?
電動バイクは「WN7」から新ブランド化、インドに電動二輪車専用工場
ホンダは2040年代に全ての二輪製品でカーボンニュートラルを実現することを目指しており、その重要な手段の一つとして電動二輪車の展開を進める。ただし電動化の進み方は地域ごとに異なるため、需要と規制の変化を見極めながら柔軟に商品を投入する。
ホンダが目指す電動化は、ICE(内燃機関)を単に電動に置き換えることではなく、ICEで培った「走る・曲がる・止まる」の基本性能を大切にしながら、電動二輪車特有の静粛性や加速感、設計自由度を掛け合わせる方針だ。
2025年には「Expected Life. Unexpected discoveries.」というブランドプロミスを定め、それを具現化するモデルとしてWN7を発表。WN7から二輪電動事業のVI(ビジュアル・アイデンティティ)を新たにし、プロダクトマークとして「Honda」を採用した。新しい電動ブランドのもと、タイ、ベトナム、フィリピンではUC3を、インドではQC3を発表している。
最大市場のインドでは、電動二輪車専用工場の設置を予定している。市場拡大の度合いを見極めながら、需要に見合った生産体制を整えるとしている。
ホンダの目標は「内燃機関も電動も、すべての国でNo.1」
レポートは今後の成長に向けた取り組みを、期間ごとに次のようにまとめている。
- 今後3年間(成長市場):インドを中心に供給体制を整備し、中南米をはじめ各地域の需要に対応。現地調達の拡大と生産効率の向上を進める
- 成熟市場:高付加価値モデルや先進技術を投入し、走る楽しさや快適性をさらに高める
- 電動化:電動車へのニーズが顕在化している市場に適切な商品を投入。市場変化に応じて投資と商品投入を柔軟に判断する
- 中長期:販売・サービスネットワークを進化させ、コネクテッド機能やデジタルサービスで購入後も価値を実感できる体験を提供。異業種コラボレーションも行う
これらの取り組みを通じて、ホンダは「全ての国でICEも電動もNo.1を目指す」としている。
ホンダ二輪事業戦略のQ&A
ホンダの二輪の世界シェアと販売台数は?
2026年3月期の二輪販売台数は2,210万台で、世界シェアは約4割。2025年には33の国と地域で過去最高を達成した。
世界の二輪市場は今後どうなる?
現在の約5,000万台規模から、2030年前後には約6,000万台規模へ成長する見通し。インドを含むグローバルサウスが拡大の中心となる。
中国メーカーの台頭にホンダはどう対応する?
欧州など競争が激しい市場では独自技術の価値が重要として、DCTやEクラッチ、V型3気筒エンジンに代表される先進的なモデル開発を進める。成長市場ではインドで培ったコスト競争力を生かし、適正な価格で商品を届ける。
出典:Honda Report 2026 「二輪事業戦略」より
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/599761/
「二輪市場はまだまだ伸びる!」「でも中国やインドメーカーが存在感を爆上げ中…」世界首位のホンダはそんな状況でどう動く? 二輪事業の責任者が示す方針とは【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/599761/600353/










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