ホンダが誇るピュアスポーツカー「シビックタイプR」。現行であるFK8型シビックタイプRは、2017年7月にデビューした、5代目。「操る喜び」をキーワードに、サーキットから市街地まで、様々なシーンに応じた高いパフォーマンスで大好評となっているモデルだ。
このFK8型の改良新型が、今夏発売される予定であったが、このコロナ禍の影響で、急遽発売が延期となってしまった。
「究極のパフォーマンス」を目指した、という、今回の改良新型シビックタイプR。発売延期はとても残念だが、こればかりはしょうがない。「楽しみに待つ時間が増えた」と考えつつ、ここで改めて、この改良新型シビックタイプRの凄さを振り返ってみようと思う。
文:吉川賢一/写真:HONDA、ベストカー編集部
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シビックタイプRのドライビングはエンジニアとの「究極の対話」
過去のタイプRは、足をガチガチにして仕上げる設計であったが、FK8型は、一般道での乗り心地も確保したモデルとして評判が高い。
この改良新型のシビックタイプRは、今年2月に公開された情報によると、「走り」に一層の磨きをかけられている、とのこと。また、タイプRの起源に立ち返り、軽量化と専用装備で武装した、国内限定200台レアモデル「シビックタイプRリミテッドエディション」も用意されるそうだ。
「タイプR」は、ホンダのエンジニア達にとって、特別な思い入れのあるスポーツカーだ。その思いは、ホンダHPに掲載されている、改良新型のシビックタイプRの紹介文に表れている。
「感性の領域まで一体となり、操る喜びに、もっとのめり込めるスポーツカーへ。」
「クルマを知る人に比類のない走りを届ける。悦びを描くエンジニアの想いが加速する。スポーツカーの新しい次元。その進化に、あなたは出会う。」
「過去も、批評も、関係ない。今考えられるすべて、究極のパフォーマンスを、エンジニアの魂を込めて。」
「エンジニアの魂」という言葉を使ってアピールするスポーツカーが、他にあるだろうか。買ってきたもの、与えられたもので組み立てた商社的な開発方法ではなく、エンジニアが、ひとつひとつのパーツを吟味し、それぞれのバランスを見ながら、それこそ魂込めて選定し、チューニングをしてきた、ということであろう。
ここまで言い切るというのは、相当な自信がないとできないことだ。筆者も同じエンジニア出身として、ホンダエンジニアの方々のこの姿勢には敬意を表したいし、同時に、エンジニア冥利に尽きることだと、若干うらやましくも思う。
限界まで追い込んだ技術の先で見えたブレークスルー
今回の改良新型に携わったエンジニアの方と話をした際、興味深い話を聞いた。
「今回のリミテッドエディションでは、車体各部の軽量化を行った。防音材撤去や構造合理化により、マイナス13キロ、鍛造ホイールでマイナス10キロ、トータルで23kgの軽量化を実現した。
その中でも、BBSと共同開発した新型の20インチ鍛造ホイールでは、コーナリング中にギャップを乗り越えてもグリップが抜けないようにするため、BBSの鍛造ならではの「しなる特性」を利用した。その結果、サーキットでの検証実験では、ドライバーから大好評だった。」
つまり、単に、「軽くて強いホイール=正解」ではないことを確信したというのだ。高価なカーボンホイールやマグネシウムホイールのような、軽くて硬い素材を使えば、「偉い」と思うかもしれないが、実は、硬めすぎや、軽量化しすぎが、必ずしも良くならないことがある。
それは車体やサスペンションにおいても共通していえることだ。こうしたトータルバランスを見ながら、クルマを仕上げていったホンダエンジニアたちの「究極のこだわり」を体感することも、このクルマの楽しみ方のひとつではないだろうか。
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