「ダンパーは単筒か複筒か?」学生の質問が濃すぎる!! 新型エルグランド開発者が日産自動車大学校で明かしたクルマづくりの苦労とは!?

「ダンパーは単筒か複筒か?」学生の質問が濃すぎる!! 新型エルグランド開発者が日産自動車大学校で明かしたクルマづくりの苦労とは!?

 16年ぶりに生まれ変わった新型エルグランドの開発現場では、何が起きていたのか。10月17日、日産京都自動車大学校の学園祭にチーフビークルエンジニアの一野健人さんが登壇。1000人以上が関わる開発の難しさと醍醐味を語った。専門家顔負けの質問まで飛び出した、秋の特別講演をレポート!

文と写真:ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】自動車大学校の学生が作った驚きの新型エルグランドを見て!(12枚)画像ギャラリー

自動車整備士を目指す若者が集う学園祭へ!

日産京都自動車大学校の学園祭会場。普段は実習棟として使われているが実に広い!
日産京都自動車大学校の学園祭会場。普段は実習棟として使われているが実に広い!

 近ごろ「AIに取って代わられない仕事」として、自動車整備士に注目が集まっている。確かに自動車整備士の仕事は、AIが簡単に代替できるようなものじゃない。1台1台、クルマの状況を的確に把握し、不具合があればそのポイントを見つけ、手間や予算を考慮したうえでベストな修理を行う。それだけでもかなり「惚れる」仕事だが、最近は給与や休暇といった点でも待遇アップが進んでいるというから素晴らしい。

 10月17日、そんな自動車整備士を育てる学校で学園祭が開かれるというので出かけてみた。校名は日産京都自動車大学校。京都市街から南に下った久世郡久御山町に近代的なキャンパスがあり、日本はもちろん海外からも若者が集まり、自動車整備士を目指して腕を磨いているという。

 早速入場してみると、秋晴れもあって、会場は大賑わい。メイン会場である実習棟(広い!)には、カスタマイズ課の学生さんたちの手がけたカスタムカーたちがずらりと並んでいる。エアブラシ体験や整備の体験ができるあたりはさすが自動車大学校。他にもミニ四駆を組み立てて実際にコースで走らせられるコーナーもあり、ご近所の子供たちとお父さんたちが大勢、マシン作りに取り組んでいる。

歴代エルグランドが勢ぞろい! 開発者が語るクルマづくり

会場の一角に並べられた歴代エルグランド。実行委員の学生が東奔西走して集めたという(涙)
会場の一角に並べられた歴代エルグランド。実行委員の学生が東奔西走して集めたという(涙)

 そんな多彩な出し物のなかでも画期的だったのが、実際に市販されている車両の開発を手がけたエンジニアによるトークショー。今回は新型エルグランドのチーフ・ビークル・エンジニアを務めた一野健人さんが登壇したのだが、デビューしたての新型車の開発者の声が聞けるあたりは、さすが日産直系の学校だといえるだろう。

 E50型から現在のE53型まで、歴代エルグランドが並んだ(実行委員の学生が、知人や先生がたを探しまくって集めたという!)会場でトークショーが始まった。自動車大学校という場所を意識したのか、一野さんは「開発とは?」というテーマから話を始めた。「自動車はなんらかのデザインから始まるが、そのデザインを実際の部品にして、実際に作れるようにすることが開発だ」と述べた。そう聞くとなにかたやすそうにも思えるが、1台のクルマの開発には1000人以上の人間が関わるというから、途方もない苦労と試練の連続に違いない。

「走り」と「乗り心地」を一緒に磨く難しさ

トークショーに登壇した新型エルグランドのチーフ・ビークル・エンジニア、一野健人さん
トークショーに登壇した新型エルグランドのチーフ・ビークル・エンジニア、一野健人さん

 一野さんの言葉がより重みを持って聞こえたのは、新型エルグランドが16年ぶりのフルモデルチェンジだったからかもしれない。長い時間を経て生まれ変わる以上、歴代モデルが築いた「威風堂々」とした存在感を受け継ぎながら、乗り心地も走りも新しい時代の水準まで引き上げなければならない。ひとつの長所を磨くだけでは済まないのである。

 しかも大型ミニバンの開発には、特有の難問が待っている。後席では揺れを感じさせない快適さが欲しい。一方で、運転席ではハンドルを切ったら素直に曲がり、加速も気持ちよく味わいたい。乗員をゆったり運ぶ「おもてなし」と、ドライバーが楽しめる「走り」。目指す方向が違う要素を、一台のクルマの中で両立させる必要があるわけだ。

 その解決策として新型エルグランドには第3世代e-POWER、前後モーターを制御するe-4ORCE、そして4輪のショックアブソーバーの減衰力を変化させるインテリジェントダイナミックサスペンションが組み合わされた。パワーを出す、駆動力を配る、車体の揺れを抑える。別々の技術を積んで終わりではなく、互いの働きを調和させてこそ、狙った乗り味に近づける。

 一野さんは時折、プレゼンテーションのスライドを映したスクリーンの前にも割って入り、そういった技術がかなえた新柄エルグランドのハイレベルな出来栄えを、熱っぽく語った。

 新型車づくりの難しさは、設計図やカタログスペックだけでは伝わらない。性能、快適性、使い勝手、造りやすさなど、多くの条件を同時に満たす必要がある。前段で一野さんが語った「デザインを実際の部品にし、造れるようにする」という説明は、まさにその難しさの核心を突いている。華やかな新車発表の裏側には、そんな地道な調整が積み重なっているのである。

次ページは : ダンパーの構造まで問う! 学生たちの鋭い質問

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