クリーンディーゼルの不正疑惑は、2年前に発覚したフォルクスワーゲン(VW)の不正問題がすべての始まりだった。
その後、英仏両国が2040年までに内燃機関車の販売禁止を打ち出している。そして、ここに来て9月にはVWのヴォルフガングが逮捕された。
風雲急を告げるディーゼルエンジンは、マツダの大きな売りのひとつ。その未来はどうなるのか? マツダはSKYACTIV-Dを今後どうしていくべきなのか?
文:鈴木直也/写真:MAZDA
ベストカー2017年11月10日号
そもそもディーゼルはクリーンじゃないのか?
確かに、ディーゼルエンジンは、原理的にNOxやパティキュレート(すす)の発生は多い。しかし、それは石原都知事が記者会見でペットボトルを振り回していた20世紀末のイメージ。
エンジニアの努力と技術革新で環境性能を大幅に改善し、あの頃は不可能だと思われていた厳しい排ガス規制に適合したのが、最近のクリーンディーゼルなのだ。
それを突然「やっぱりディーゼルはクリーンじゃない」と言い出すのはどう考えてもアンフェア。これでは環境規制そのものが成り立たない。
このアンチディーゼル論が「2040年内燃機関禁止テーゼ」で注目される英仏両国が主な発信源なことに、ボクはちょっとキナ臭さを感じている。
ディーゼルは「クリーンで高効率」と改めて伝えるべき
英仏両国をはじめ、イタリア、スペインなど欧州主要国は、ディーゼル乗用車比率の極めて高い国々。
欧州のディーゼル車ブームは20世紀末から始まっているから、こういった地域では排出ガス規制の緩かった時代の古いディーゼル車がたくさん走っている。
例えば、2006年のユーロ4規制では、ディーゼルNOx排出基準は2014年発効のユーロ6の3倍以上ゆるい。
こういうダーティな使用過程車を大量に抱えてることが欧州大都市の環境悪化要因。それを十把一絡げに「ディーゼルが悪い」と罪をなすりつけるのは世論をEVに誘導するための政治的意図と勘ぐらざるを得ない。
それにしても、ここまで不当にディーゼルをバッシングされながら欧州メーカーが沈黙しているのも解せない話だ。
VWディーゼルゲートの核心は、テスト時にはクリーンだが、実走行時には燃費とドライバビリティのためにNOx排出量増加に目をつぶる“ディフィートデバイス”。
あまりに悪質な規制逃れゆえ、今VWが何をいっても取り合ってもらえないだろうが、BMWもベンツも「触らぬ神に祟りなし」なのはだらしがない。
日本市場を含め、いまだ多くのディーゼル車をカタログにラインアップしているメーカーは、自社のディーゼルがしっかり環境基準に適合したクリーンで高効率なエンジンであることを、ユーザーはもちろんメディアにも広く知らしめる義務があると思う。
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