「パンクしないタイヤ」という人類の夢のようなタイヤがランフラットタイヤ。
パンクしない、というのは正確ではなく、パンクしても一定距離を走行することができるというのが正しい。そんな安全性抜群のランフラットタイヤだけに欧州車や、国産車の一部車種でも新車時から採用するメーカーが増えている。
そんなランフラットタイヤで編集担当の周りである出来事があった。友人がBMW5シリーズのランフラットタイヤを一般のタイヤに交換したら、まるでクルマが変わったかのように乗り心地がよくなったという。
友人の絶賛ぶりに半信半疑ながら乗ってみると、角がとれたような感覚もして、なんだかいい感じだったのは確かだった。
しかし、メーカーがそんなわかりやすい乗り心地の差を超えてまで採用するランフラットタイヤを外すのはなんだかデメリットも多そうだ。
そこで今回はランフラットタイヤを外し、一般のタイヤに交換する行為のメリット/デメリットをタイヤにも詳しいジャーナリストの斎藤聡さんに聞きました。
文:斎藤聡/写真:ベストカー編集部
■ランフラットタイヤを交換することでメカニズムに影響も
ランフラットタイヤから普通のタイヤに交換したい。時々そんな声を聞くことがあります。乗り心地に不満がある、ランフラットタイヤが高いから、履いてみたいタイヤがあるから等々、その理由は様々です。
そんなわけで、ランフラットタイヤから普通のタイヤへの履き替えについて考えてみました。
ランフラットタイヤはご存じのように、パンクしてもそのまま走り続けることができるように作られたタイヤで、これはISO(世界標準化機構)の技術基準に定められており、大雑把に言うと80km/hで80km走行できるように作られています。
以前は中子(なかご)式というホイール側に輪をはめて使うタイプもあったのですが、パンクした時の振動が大きかったりボディ(ブッシュ)へのダメージが大きかったりとデメリットが多かったため、現在はサイド補強型と呼ばれるタイプが主流になっています。
これはサイドウオール(タイヤ側面内部)が専用ゴムで補強されており、パンクして空気圧ゼロになってもタイヤが潰れずそのまま走り続けられるというものです。
では、ランフラットタイヤから普通のタイヤに交換することのメリットとデメリットを整理して考えてみたいと思います。
まずデメリットですが、もっとも大きなものはメーカーの保証でしょう。自動車メーカーにより対応は様々ですが、とくに輸入車は専用タイヤが指定されているケースが多く、一部保証が効かなくなることがありますので、確認が必要です。
それからパンクした時の修理キットが必要になるので、パンク修理キットとエアコンプレッサー、あるいはスペアタイヤも用意する必要があります。
ちなみにスペアタイヤは装着しているタイヤと外径を合わせないとESCが誤作動してしまう可能性がるので、注意が必要です。
性能面で気になるのは、クルマとタイヤとのマッチングです。同じサイズならランフラットより普通のタイヤのほうが軽いので、乗り味が変わってしまう可能性があります。
一般的には、足回りが軽くなると操縦性が良くなるといわれますが、これはケース・バイ・ケースです。
タイヤが軽くなるとタイヤの応答が良くなるので、場合によってはハンドルを切ったとき、タイヤが先に曲がり出し、後からボディがついていくといったギクシャクした動きになることも考えられます。
またタイヤの路面追従性が良くなるので、路面の細かい凹凸を拾いやすく、低速域で乗り心地が悪くなる可能性もあります。
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