日本のトップメーカー3社が、それぞれの売れ筋ミニバンに「走行性能を高めたカスタマイズグレード」を用意している。ノアGR、セレナNISMO、ステップワゴンモデューロXがそれだ。
価格も300万円台序盤〜中盤で、サイズもほぼ同じ。火花を散らして販売合戦を繰り広げているこの3モデル、乗り比べるとどこがどう違うのか。自動車ジャーナリストの国沢光宏氏に伺ってみました。
文:国沢光宏
■足回りはホンダ、全体の雰囲気は日産
この3モデルの評価は、生い立ちから考えれば乗らずとも答えがわかる。まずノア兄弟のGR。このクルマ、社長直系となるGR部門とあり、手を加える範囲についてほとんど制約なし。
そもそもGRはトヨタじゃできないコトを実現しようとしているため、極端な表現するならトヨタを否定したってOK。ノア兄弟のGRも標準との変更はドレスアップやサスペンションに留っていない。
セレナNISMOも日産から独立した味つけを目的にしている。エンジン制御コンピュータに始まり、電動パワステの操舵力や排気系まで手を加えており、インテリアだってNISMOのアイデンティティとなる赤いステッチを加え賑やかさを出そうとしてます。
残念なのは足回りのチューニングのノウハウ不足か。サーキットを走るなら納得できるものの、2列目シートに座る奥さんは辛抱タマらんほど硬い。
トヨタ&日産と対照的なのがホンダ。モデューロでエンジンに手を加えようとしても「標準が一番いいのだから手を加えるな!」と研究所から怒られるそうな。
一事が万事で「改良する」とか「性能アップ」という文言は研究所を否定することになるためタブーなんだとか。
結果、エンジンについちゃ完全にノーマル。シートすら「標準が一番いいので変えるな!」という状況のようだ。
ただ足回りは土屋圭市さんが担当しているため、なぜか変更可になっているという。ということでハンドル握ると、走りはステップワゴンモデューロXがナンバーワンである。
そもそもミニバンって運転する人のためだけじゃない。必ず家族などが乗るからミニバンを選んでいるのだった。モデューロXのハンドリングは適度にスポーティでいながら、乗り心地いい。次点がGR。NISMO、硬すぎです。
クルマ全体の雰囲気はセレナNISMOに軍配を挙げておく。特にオプションのレカロを選ぶと、気合いの入った4点式シートベルト装着用の穴付き。足回りさえ改良してやれば、一段といいクルマになる。次点がGR。
もう一歩進んでブレーキを対向ピストンにしたり、エンジンやCVTに手を加えてくればセレナNISMOと逆転するだろう。モデューロについちゃホンダの束縛から抜け出さないと、これ以上の進展はない。
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